スズキSX4 1.5XG(FF/4AT)/2.0S(4WD/4AT)【試乗記】
キャラクターが曖昧? 2006.07.15 試乗記 スズキSX4 1.5XG(FF/4AT)/2.0S(4WD/4AT) ……164万8500円/203万7000円 2006年7月4日に発売された「スズキSX4」。欧州で先行リリースされたスズキの世界戦略車第3弾が日本上陸となった。“次世代クロスオーバー車”を謳う新型のデキはいかに?ヨーロッパ度の高い世界戦略車
コンパクトカー「スイフト」とSUV「エスクード」の中間マーケットを担当する、最新の世界戦略モデル――スズキの新型「SX4」のポジショニングを有り体に表現すればこうなる。
軽自動車の販売絶好調が伝えられるこのタイミングで、“軽から小型車へのシフト”を狙っているのか?とも思えなくもないが、それゆえに「さすがはしたたかなスズキだナ」と唸らせる戦略がとられたクルマがSX4でもあるのだ。
日本に加え、欧米でも販売。なかでも日本に先駆けてヨーロッパで発表、発売し、さらにフィアットにはOEM供給を実施。つまりこのクルマは、国内というよりも欧州市場に重点を置いたモデルとも考えられる。
実際、ヨーロッパでのSX4の販売は立ち上がり好調で、フィアットからも「もっと多く供給してもらえないか」と打診が来ている状態とか。販売戦略の巧みさではどうしてもトヨタという名前が筆頭に浮かぶが、スズキだって“機を見るに敏”という点では決して引けをとらないのである。
「スポーツ・クロスオーバー・ハッチバックという新しいジャンル」を謳うSX4。その全長×全幅サイズは、主力車種で4165×1730mmだ。当初は全長4m、全幅1.7m程度を想定したものの、デザイン要件や世界市場への適合性などを考慮した結果、現在のサイズに落ち着いたという。
興味深いのは、デザインをイタリアのイタルデザインと共同で行ったこと。かのジウジアーロ氏率いるこのデザイン工房との開発作業中には、スズキ側からも多くの注文を出すなど「さまざまな戦いもあった」というが、あえて共同でやったのは、「仕事量的な問題に加え、ヨーロッパでの量販のため現地のテイストも盛り込んでおきたかった」という理由からとか。
こうして同じ世界戦略車であっても、スイフトが日本、エスクードがアメリカに軸足を置くのに対し、SX4はやはり“ヨーロッパ度”がひと際高いモデルといえる。
死角が気になるが、小回りはきく
スイフトに比べると全長が40cm以上も大きいSX4だが、それでも見た目の第一印象はコンパクトだった。
フロントドア前部に“三角窓”を備え、その下端であるベルトライン前端がキックアップしているのがデザイン上のひとつのこだわりだ。一番後ろのDピラーをブラックアウト化するいっぽう、その手前のCピラーをボディ同色としてアイキャッチャーにするというのも、このクルマのこだわりをアピールする手法であるようだ。
サブAピラーがあることでちょっと不思議な開口形状となるドアを開き、ドライバーズシートへと腰を下ろす。すると、残念ながら危惧のひとつが当たってしまった。前進した太いAピラーが生み出す死角が運転視界のなかに入り込み、特に右方向へのコーナリングでは時にそれがかなり鬱陶しいのだ。
スズキは、このモデルをベースに、2007年からの世界ラリー選手権(WRC)に参戦すると表明しているが、そうしたコンペティションの場でもこの死角の問題はウィークポイントになってしまうのではないだろうか?
いっぽう、地上から620mmというヒップポイントに対して、カウルポイントやベルトラインが低いので、前方・側方の視界は優れている。最小回転半径のデータは5.3mと特に小さいわけではないが、ボディの見切りがよく実際にはそれ以上に小回りがきいている感じがする。
インテリアのデザイン全般は“クロスオーバー”を謳うにはちょっと普遍的に過ぎてヒネリが足りないかな、という雰囲気。全面ハードパッド処理となるダッシュボードの質感なども「1.5リッタークラスとしては文句ないが、2リッターカーとしては物足りない」といった印象だ。
インテリアのカラーは現状ではダークグレーの設定のみ。これであと何種類かのバリエーションが用意されれば、評価は大きく好転しそうなのだが。
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スイフトとの棲み分け
試乗会に用意されていたのは、アウトドア風の装いの「1.5XG」(FF)と、エアロルックを与えられた「2.0S」(4WD)。まずは前者の1.5リッターモデルからスタートする。
走り出しの瞬間の動きは、予想以上に軽快。決して“飛び出し感”というわけではなく、200〜300ccの排気量増ぶんぐらい、ジワッとトルクフルな動き出しが好印象だ。
ただし、いったん動き始めてからのアクセル操作に対するレスポンスは、「やっぱり1.5リッターだな」と思わせるもの。スタートの瞬間の力強さに“その先”がついてこないのは、可変バルブタイミング機構の採用車にありがちな傾向でもある。
電動パワステが生み出すステアフィールは悪くない。微低速ゾーンで大きく切り込んだ際にも電動パワステ特有の粘性感が低いのは、スイフトのそれを凌ぐ美点だ。
ただし、車庫入れモードでの大きく、素早い操作に対し、時にアシスト量の不足を露呈するのは残念だ。これは、後にチェックする2.0Sでも同様だった。
路面凹凸へのサスペンションの動きの追従性はまずまずだ。しかし、当たりはソフトでもそのしなやかさはスイフトに及ばず、正直なところスイフトに初めて乗った時ほどの感動は得られなかった。
ラインナップ中の売れ筋となるであろうはこの1.5リッター+FF仕様と推測できる。となると、そこではスイフトとの棲み分けがやや分かりにくくなりそうにも思う。
さて、2リッターの2.0Sの走りは、500ccの排気量差が100kg以上の重量差を打ち負かした、明確に力強いものだった。しかし、そうなると今度はシフト時の大きなエンジン回転数変化によって、トルクが大きく変動するのが気になってくる。2リッターエンジンに4段ATという組み合わせは、記号性の面からも今やちょっと苦しいだろう。
17インチのシューズにローダウンサスの組み合わせでスポーティな走りを演じようというこのモデルだが、その乗り味は、路面不整を拾っての突き上げ感が少々きつく、これもまた「スイフト・スポーツには及んでいない」という印象を受けた。軽快な動きのスイフトに対し、安定感の高さを狙ったというSX4。だが、そうした目論見からしてもこの乗り味は、必ずしも的を射ているとは言えないと思う。
新ジャンルを狙っただけに、ちょっとばかりキャラクターが曖昧になったとも感じられるSX4。日本の市場はこのモデルをどのように評価するのだろうか?
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/2006年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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