スズキSX4 1.5XG(FF/4AT)【ブリーフテスト(後編)】
スズキSX4 1.5XG(FF/4AT)(後編) 2006.08.09 試乗記 ……164万8500円 総合評価……★★★★ 「スイフト」「エスクード」に続くスズキ世界戦略車の第3弾として登場した「SX4」。1.5リッターの「XG」モデルに試乗して、次世代クロスオーバー車としての使い勝手と走りを検証する。【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
実用車としてあらまほしきインパネまわり。樹脂類の質感はほどほどだが、全体にシンプルで機能的。飽きがこなくていいだろう。最廉価Eグレード以外に奢られる本革巻ステアリングホイールがちょっぴり贅沢。
メーターナセル中央には大きな速度計が見やすく配され、センターコンソールにはオーディオ類(CD+MDプレイヤー)が一体化されてキレイに収まる。空調関係3つのダイヤルは、操作に迷う余地がない。天井前端の室内灯、サイドミラーのコントローラーもさりげなくデザインと使いやすさが両立される。
ステアリングホイールコラム脇に小物入れがないのはスズキ車として意外だが(?)、ドアポケット、フロアコンソールとも深さがあって使いやすい。なろうことなら、イグニッションホールにリモコンキー(携帯しているだけで施解錠、エンジンスタートができる)を差せる工夫が欲しかった。まったく個人的な好みなのだが、嵩の大きなデバイスを洋服のポケットに入れておきたくないし、小物入れに置いてせっかくのスペースを殺してしまうのは本末転倒だと思うから。
(前席)……★★★
あたりがソフトで、過不足ないサイズをもつフロントシート。運転席側にはレバーを上下することで高さを調整するハイトコントロールが備わる。控えめな形状だが、バックレストは見た目以上に湾曲しており、上体のホールド性はしっかり確保される。ざっくりした触感のファブリックシートは、アウトドア派の「XG」にはふさわしい。いまのところ黒基調だけなのが残念。これから、ポップなボディカラーと特別内装色の限定車がリリースされると面白い。
(後席)……★★★
フロントより意図的に高い着座位置(+55mm)が採られたリアシート。良好な視界。キチンとした姿勢で座れるのはいいのだが、SX4はデザイン面からボディサイド上部が内側に傾斜しているので、ヘッドクリアランスに問題はないのだが、頭部側上方にやや圧迫感あり。
3点式シートベルトおよびヘッドレストが2人分しか備わらないので、家族用として購入を検討する際には4人乗りと考えたほうがいい。バックレストセンターから小さなアームレストが出てくるのはご愛敬。
(荷室)……★★★
幅103cm、奥行き65cmと、ほぼボディサイズ相応のラゲッジルーム。底面が四角いので使い勝手はよさそうだ。リアシートは6:4の分割可倒式。背もたれ脇のレバーを引くことで容易に倒すことができる。この場合、バックレスト背面と荷室床面とに段差が生じるが、座面後ろに出ているストラップを引くと、さらに畳んだ座席ごと前に跳ね上げることが可能。フラットなフロアの大スペースが出現する。荷室容量は、リアシートを立てた状態の270リッターから1045リッター(VDA法)まで拡大する。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
スイフトと同じ1.5リッターに、やはり同じ4段ATを組み合わせる。最高出力110ps/6000rpm、最大トルク14.6kgm/4000rpmのアウトプットも変わらず、ひるがえって車重は100kg以上重い。多少レシオを下げたファイナルを用いるが、“俊敏”とはいえない。
80km/h巡航時のエンジン回転数は約1900rpm。スロットルペダルを踏み込んでキックダウンを利かせるとタコメーターの針は4400rpm付近に跳ね上がってツインカム16バルブはにわかに声を高めるが、SX4全力の追い越し加速は、しかしドライバーにさしたる感銘を与えない。
では、非力が歯がゆいかというと全然そんなことはなくて−−2リッターモデルに試乗していないので断言はできないが−−可変バルブタイミング付き1.5リッターがもたらす動力性能はバランスよく、「クルマの性格に合っている」と思った。総じて穏やかな走り。あとは運転手のせっかち度の問題である。
4段ATは、セカンドのフルスケール100km/h超とずいぶん守備範囲が広いが、穏やかに走ればレブのはるか手前で「3速−トップ」とスムーズに変速する。カタログアピールにはかけるが、これで十分。
加えて、スタッガード式のギザギザゲートが合理的だ。たとえば高速道路のカーブ手前でギアを落としたいときにはシフターを右にずらすだけでいいし、峠で活発に走りたければ3−2速間を前後に動かせば済むのだから。マニュアルモード、いわんやパドルシフトの必要性を感じない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
FFのSX4は、限界は高くないが楽しいハンドリングカーだ。「フロント:マクファーソンストラット/リア:トーションビーム」というコンベンショナルな足まわりをもち、きついカーブの続く山道では、軽くリアを流しながら気持ちよく走ることができる。
一方、乗り心地に関してはまだ改善の余地がある。テスト車の装着タイヤは、ブリヂストンの「TURANZA RE300(205/60R16 92H)」。スポーティ寄りの“ロクマル”コンフォートタイヤだが、それでも街なかでは舗装によって「ゴツゴツしている」と感じることがある。16インチをもてあますことはないが、まだ履きこなすには至っていない、と申しましょうか。全般に“生な”硬さ。
とはいえ、特にリアサス取り付け部の強度は十二分に取られたというし、路面からの入力を受け止めるボディのしっかり感はずいぶん高いから、これからリファインされていくのだろう。今後に期待。
(写真=高橋信宏)
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【テストデータ】
報告者:NAVI青木禎之
テスト日:2006年7月25日から27日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:2645km
タイヤ:(前)205/60R16 92H(後)同じ(いずれもブリヂストンTURANZA RE300)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(1):山岳路(7)
テスト距離:477.6km
使用燃料:50.4リッター
参考燃費:9.47km/リッター
・スズキSX4 1.5XG(FF/4AT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018448.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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