ローバー75シリーズ【海外試乗記】
思いがけない1台 2004.11.05 試乗記 ローバー75シリーズ 2003年7月から日本での販売が復活した「ローバー75」シリーズは、英国車の風情が色濃いミドルクラス。フォード製4.6リッターV8で後輪を駆動(!)する「V8」など、ユニークで多彩なラインナップを誇る最新モデルに、自動車ジャーナリストの笹目二朗がイギリスで乗った。
拡大
|
拡大
|
求められる英国車
「ローバー75」の日本への輸入は、2年間途絶えていた。ローバー社とBMWが別れるに際して取り交わした、「最低2年間日本で売ってはいけない」という契約により、輸入が絶たれてしまっていたわけだ。空白期間を経て、新たな正規代理店であるMGローバー日本が設立され、2003年7月から販売を行っている。
英国車といえば、ジャガーやロールスロイスなどの高級車が思い浮かぶが、この中型高級車たるローバー75のようなクルマこそ、日本市場に求められているクルマだ。
ローバー75の日本でのラインナップは、次のようになる。ベーシックな1.8リッターターボモデルと、2.5リッターV6モデル、そしてホイールベースを200mm延ばしたリムジンも用意される。さらに、4.6リッターV8搭載モデルも登場。これはなんと、FRへ駆動方式まで変えてあるという、凝った仕様だ。標準ホイールベースのサルーンそれぞれに、ワゴン版「ツアラー」が加わる。
現在、日本での輸入車はドイツ車が多数を占める。たしかに、良質な造りと高性能による魅力は大きい。しかし、嗜好品的な部分もある自動車がそれだけでは味気ない。イタリア車もフランス車も、それなりの個性がありファンも多いのだから。
なかでも、英国車には独特の味がある。まずスタイリング。優美なテールの丸味に象徴される、落ちついたたたずまい。細いクロームをあしらった繊細なドアの膨らみもいい。ガキガキとしたエッジの多用や、やたらと空力を誇張したボディフォルムに、新味を感じる人ばかりではないはずだ。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
好印象は「1.8T」
内装はウッドと革が特徴ではあるが、近年あちこちで上辺だけ模倣され、本物との区別がつかない贋作が氾濫したせいか、流行が去った感もある。とはいえ、マテリアルの使い方や処理技術は、やはり一味以上違う。英国車を求めるユーザーの品性が関係してくるからだろうか。
今回バーミンガム工場の組み立てラインも見学したが、ラインスピードはけっして速いとはいえないものの、じっくりと造り上げることに楽しみを感じているような、そんな熟練工の仕事振りが目についた。
クルマづくりと対照的なのが、英国の交通環境である。けっして道幅が広いとはいえないカントリーロードでも、結構なスピードで流れている。日本ならば60km/h制限の道を、彼らは60mph(約96km/h)でこともなげに走っているのだ。
そんなクルマがクルマらしく、活き活きと走る環境下では、1.8Tが一番バランスよく軽快な感じがした。試乗車は5段MTだったこともあり、気持ちよく走れることこの上ない。英国車を正しく味わうには、やはりMTを選ぶべきだろう。2.5リッターV6は5ATと組み合わされるが、日本市場で販売するには、これが一般的な組合せかもしれない。
ホイールベースが200mm長いリムジンは、当然ながらリアシートの居住性を考慮したもので、ゆったり足を組んで乗れるスペースはこのクラスでは得難いものだ。FFゆえにセンタートンネルは低く、プロペラシャフトやドライブシャフト、デフなどの回転物がない静けさは、やはりそれなりのメリットがある。
拡大
|
拡大
|
英国車らしい大改造
はからずもこの点を再確認できたのは、同じボディのままフロアを大改造して、FRにしてしまったV8と比較できたからである。
英国人にとってもV8エンジンはステイタスであるらしく、強引ともいえる手法でフォード製4.6リッターV8SOHC16バルブをノーズに納めた。ただ、このやり方が英国人らしいともいえる。すなわち、V8エンジンを積むにあたり、横に置いて前輪を駆動するのではなく、退化とも思える昔ながらの方法で後輪駆動にしてしまったトコロだ。こうした例は自動車史上でも稀な出来事である。しかし冷静に考えてみれば、フロアをつくりなおす方が、専用のトランスファーやギアボックスを探す手間より簡単なのだ。
そうしたユニークな成り立ちをもつV8モデルも、高級感という意味では気筒数に追いついていない。音や振動面をFFのレベルに高めるには、さらにチューンも必要と思えた。動力性能はたしかに、排気量なりの迫力を備えるのだが。
2004年はローバーの創立100周年。節目にあたる年でもあり、それにふさわしい陣容をそなえるに至ったローバー75は、ドイツ車に飽きた人にとって思いがけない狙い目の一台かもしれない。
(文=笹目二朗/写真=MGローバー日本/2004年11月)

笹目 二朗
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。

