トヨタ・クラウン3.0アスリート(6AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・クラウン3.0アスリート(6AT) 2004.05.05 試乗記 ……489万4050円 総合評価……★★★ 走りに力を注いで開発された“ゼロクラウン”。シリーズ中、もっともスポーティを強調する「クラウンアスリート」の3リッターモデルに、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。
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大胆な若返り作戦
モノは試し(?)と「トヨタ・クラウン」ユーザーの年齢調査をしたところ、なんと、実に70%以上が50歳以上だった。……そんな“高齢化”に将来の危機感を抱き、大胆な若返り作戦を実行したのが新型クラウンである。
もちろん、初代の誕生から数えて、2004年に半世紀を迎えたクラウンの成功を支えてきたのは、歴代モデルとともに歩んできた人々だ。そうした“お得意様”の存在を気にするあまり、大きな歩幅のモデルチェンジを躊躇してきたのが、これまでのクラウンの歴史でもあった。
今回のモデルチェンジは、これまで培った伝統は尊重しつつ、“しがらみ”を徹底して排除しようという、断固たる決意で臨んだモデルチェンジといえそうだ。
決意のほどは、まずスタイリングに表れている。ロングホイールベース化によって前後オーバーハングを短縮し、ショートフード&ビッグキャビンを実現した新型のプロポーションは、歴代クラウンのなかでもっともファンクショナブル、かつスポーティなイメージ。トヨタのFR(後輪駆動)モデルとしては初めて、新開発の直噴V型6気筒エンジンを搭載し、やはり新たに開発されたプラットフォームを採用したことが、クラウンとしては斬新な装いを実現したのである。
2代にわたって存在した高級モデル「マジェスタ」を、新型クラウンの初期ラインナップから落としたのも、新時代のクラウンのあり方を鮮明にアピールしたいがためだろう。もっともこちらに関しては、満を持しての後継モデルを用意している、というのがもっぱらのウワサだが。なにはともあれ、ルックスからも販売戦略からも、「変わらなきゃ」の想いがプンプン漂うニュークラウンではある。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
トヨタの象徴モデルであり、同社を代表する高級サルーン「クラウン」。2003年12月にフルモデルチェンジした12代目は「ZERO CROWN」をキャッチフレーズに、プラットフォームやエンジン、トランスミッションなど、主要コンポーネントを一新。「静から躍動への変革」を掲げて、走行性能の向上や、スポーティなスタイリングが与えられた。
ラインナップは、4ドアサルーン「ロイヤル」シリーズと、スポーティな「アスリート」の2種類。エンジンは、3リッターと2.5リッターの2種類で、長らく使われた直列6気筒からV型6気筒の直噴ユニットに変更された。トランスミッションは、2.5リッターに5段、3リッターにはシーケンシャルモード付き6段ATが組み合わされる。FR(後輪駆動)をベースに、3リッターのロイヤルサルーンにのみ、4WDモデルがラインナップされる。
(グレード概要)
クラウンアスリートのグレードは、2.5リッターと3リッターの2グレード。3リッターには、本革シート、シートヒーター、リアオートエアコンなどを装備する豪華版「Gパッケージ」が用意される。走りにふったアスリートとはいえ、クラウンらしく装備品は充実、かつ豪華。3リッターモデルは、電動チルト&テレスコピックステアリングや、G-BOOK対応DVDナビゲーションシステムが標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
“走り仕様のクラウン”とはいっても、基本的なインテリアデザインは“普通のクラウン”と同様。左右対象で大きなT字型のダッシュボードは、歴代モデルのユーザーでも違和感なく受け入れられるはずだ。
各部の質感は、さすがにクラウンらしく極上……と言いたいところだが、ダッシュボードの光沢感が、グローブボックスのリッドやドアトリムと隣接する部分でわずかに異なって見えた。テスト車が初期生産ロットだったゆえか。
400万円を超える高額車だけあって、装備の充実度は相当なもの。電動式のチルト&テレスコピック機能付きステアリングやクルーズコントロール、左右独立温度コントロール式フルオートエアコンなどが、標準アイテムとしてカタログに名を連ねる。
同じく、標準で備わるDVDナビゲーションシステムは、トヨタが推進するテレマティクスシステム「G-BOOK」に対応する。もっとも、このところのブロードバンド通信に慣れた身には、通信速度に不満を感じた。G-BOOKのバージョンアップも、今後の課題となろう。
(前席)……★★★★
前2席はいずれもパワー調整機能付き。ドライバーズシートは8ウェイ、パッセンジャーは4ウェイで調整が可能だ。シートヒーターは、オプションのレザーシート(19万5000円)にのみ設定される。
アスリートのシートは、ロイヤルサルーンのそれと比較してショルダーの張り出しが強い「スポーツシート」。サイドサポートを考慮した形状ではあるものの、そこはクラウンの一員である。乗降性に影響をおよぼすほど、過激なデザインではない。サイズはタップリとして面圧分布も適切、長時間の連続着座でも疲労感は最小限だった。日本車のシートとしては、最上級の一品という印象だ。
(後席)……★★★
「ドライバーズシートこそ特等席」がアスリートのコンセプトだが、後席のつくりにも抜かりはない。標準のリアシートは左右一体型の固定式だが、「Gパッケージ」を選べば、ヒーター付き、4:2:4の分割パワーシートに格上げされる。ただし、電動式リアサンシェードなど、その他モロモロの装備もプラスされるので、その価格差は70万円にも達するが……。
前後左右のスペースは、大人2人に十分なものだが、頭上にさほど余裕がない。大きなフロアトンネルはFR車の証か(!?)。よって、3人がけ時の中央席に座る人は、足元がかなり辛いだろう。
(荷室)……★★★
「ゴルフバッグが4人分積める」ことが、国産アッパーセダンのトランクスペース可否を決定する基準とか。当然ながら、クラウンは余裕で達成する。ちなみに、ゴルフバッグではなく、「スーツケース」や「ビールケース」が積載物のスケールとなる欧米車の場合、相当な大型車でもニッポン基準をパスできないクルマがすくなくない……。
とはいえ、522リッターという新型クラウンの荷室容量は、従来型比でマイナス10リッター。リッドを開いて見た印象も、ボディサイズからすれば「あまり広くないなぁ」というのが正直なところだ。まぁ、宅配便システムの完備された日本で、クラウンに大物家具を積む人もいないだろうから、不満を感じることはなさそうだが。
マルチリンク式のリッドやそのリッド裏に貼り付けられた三角表示板は、いずれも「いつかどこかで見た」記憶があるもの。フロアボード下には、フルサイズのスペアタイヤを搭載する。テンパータイヤや修理剤で済まさないのも、クラウン流の心遣いか。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ついに伝統の直列6気筒エンジンを廃し、V6専用車としてリリースされた新型クラウン。これだけでも、“ゼロクラウン”なるキャッチフレーズ通りの改革といえる(!?)トヨタのFR車(=縦置きエンジン車)でV6エンジンを積むのは、新型クラウンが初めてだ。
新開発のV6ユニットは、60度のバンク角を与えられた、鋳鉄ライナー鋳込みのアルミブロック製。ヘッドメカニズムは、4バルブDOHCヘッドを備える。「大幅な軽量化」を謳い文句にするが、比較対象である従来の直6エンジンは、スチール製ブロック。比較になるのだろうか……。
1.6トンの重量に対し256psのパワーは、もちろん十二分と言えば十二分。新開発の6段ATは、変速プログラムも適切でスムーズで、シームレスな加減速感を実現する。惜しいのは、エンジン回転にリンクして、やや耳ざわりな高周波ノイズが耳に届くこと。開発陣によれば「おそらく、バルブ駆動系のチェーンノイズでは」という。エンジニアから原因が聞かれたということは、トヨタは今後の改善課題として認識している、と考えられる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
今度のクラウンは、「事実上の日本専用車ではあるものの、欧州ライバル車に負けない走りの性能を目指したモデル」である。つまり、メルセデスベンツやBMWと互角に戦える、走りのポテンシャルを追求したということだ。クラウン・ブランドとしては禁じ手(?)だったはずの、乗り心地に不利な18インチシューズをアスリートに標準採用したことからも、決意のほどがうかがえる。
トヨタの主張どおり、新型アスリートはたしかに「クラウンとは思えない」身のこなしでコーナーを次々と駆け抜ける。特に、ノーズの動きの軽やかさに、V6専用パッケージの効果を実感した。
一方、振動/騒音レベルは、走りがよくなったぶん(?)確実に低下した印象だ。なかでも、平滑路面上でのタイヤパターンノイズ、ザラ目路面上のロードノイズは、クラウンに相応しいレベルとは思えない。
高級車カテゴリーでも、ちらほら見られるようになった「EPS」(電動式パワーステアリング)を、新型クラウンは採用した。一般走行では、よくできた油圧式のそれとほぼ変わらず、滑らかで上質な操舵感が味わえる。ただし、寒い朝の始動直後に発生する、大きなフリクション感には驚かされるが。
ちなみに、クラウンがEPS化されたということは、今後、すべてのトヨタ車がEPS化されるということだろう。燃費の面で不利な油圧式パワーステアリングは、近い将来、世のなかから姿を消すのかもしれない。
(写真=清水健太/2004年5月)
テストデータ
報告者:河村康彦
テスト日:2004年2月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)225/45/R18 91W (後)同じ(いずれもDUNLOP VEURO SP SPORT 2050)
オプション装備:音声ガイダンス付きカラーバックガイドモニター&クリアランスソナー(9万1350円)/クラウン“マークレビンソン”プレミアムサウンドシステム(G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きEMV<MDプレイヤー一体AM/FMマルチ電子チューナーラジオ&インダッシュ6連奏DVDオートチェンジャー+14スピーカー+TVアンテナ>37万3800円)/有料道路自動料金支払いシステム“ETC“ユニット(1万8900円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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