ジャガーXタイプ 2.0 V6(5AT)【ブリーフテスト】
ジャガーXタイプ 2.0 V6(5AT) 2004.04.14 試乗記 ……445万2000円 総合評価……★★★★ ジャガーラインナップ中、もっともベーシックなのが「Xタイプ 2.0 V6」。4WD「トラクション4」をウリとするXタイプだが、その前輪駆動モデルはどうなのか? 自動車ジャーナリストの金子浩久が乗った。
|
ハイクオリティ・サルーン
ジャガー初の小型サルーン「Xタイプ」は、プラットフォームをはじめとする主要部品を、グループ内の「フォード・モンデオ」と共有する。しかも、そのことを早くから、ジャガー自ら公にしていた。ただし、モンデオと“差”をつけるべく、ジャガー初となる4輪駆動「トラクション4」を採用。安定性、手頃な価格(?)とボディサイズが吉と出て、ジャガーはXタイプの投入により、生産台数を目論見通り3倍以上に増やした。
さらなる戦線拡大のため、2002年5月に投入されたのが、前輪駆動版Xタイプである。モンデオと差別化を図るために採用した4輪駆動のはずなのに、それをやめてしまっては本末転倒ではないか……。
だが、プラットフォームと駆動方式をモンデオと同じにしただけで、走りっぷりもモンデオになるほど、クルマはアマくはないから面白い。ちゃんと、ジャガーになっており、エクストラプライス分のバリューは内包されていた。そのバリューとは、洗練されたハンドリングと一定条件下での乗り心地、充実した装備と上質な仕上げなどである。クオリティの高い4ドアサルーンを探している人は、候補リストに入れていい。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年2月のジュネーブショーでデビューしたコンパクトジャガー。「フォード・モンデオ」と一部コンポーネンツを共有してつくられた。駆動方式に「トラクション4」と呼ばれる、ジャガー初の4輪駆動を採用したことでも知られる。エンジンはすべて、可変バルブ機構「VVT」付きV型6気筒で、2.5と3リッターをラインナップ。2002年5月、エントリーグレードとして、2.1リッターV6の前輪駆動モデル「2.0 V6」を追加した。いずれも、トランスミッションはJゲートの5段ATのみ。2003年11月にマイナーチェンジを受け、内外装を変更。グレード体系の整理と、グレード間の差別化が図られた。
(グレード概要)
「Xタイプ 2.0 V6」は、414万7500円のプライスタグを付けたエントリーモデル。主に内装に差別化が図られ、クロスシートを装備するのはこのグレードのみ。調節機構も電動だが、「2.0 SE V6」の8Way、2.5&3リッターの10Wayに対し、2Wayとなる。快適装備は豊富で、オートエアコンや8バンドイコライザー付きオーディオ、VICS対応DVDナビゲーションシステムは標準装備。フロント/サイド/カーテンエアバッグなどの安全装備も、全グレード共通の内容だ。ただし、車両安定性を高める「DSC」を標準で備えるのは、トップグレード「3.0 V6 Sport」のみ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
木目模様も鮮やかなウッドパネルと革、クロームメッキを惜し気もなく使ったインパネとコクピットまわりは、お約束の“ジャガーの世界”そのものだ。上級の「Sタイプ」や「XJ」を横に置いて較べれば、質感の違いは明らかかもしれないが、Xタイプにジャガーの世界を期待する人には大きな満足を与えるはずである。こうしたビクトリア調のインテリアは、時の流れが速い現代では、天然記念物化しつつあるのでは? と個人的には思う。とはいえ、好みは人それぞれ。逆に、風化しにくいデザインといえるかもしれない。
テイストはクラシック調でも、各種の装備は現代的、かつ最新のものが揃っている。装備の充実度と、仕上げの水準はとても高く、414万7500円の価値が強く感じられるだろう。
(前席)……★★★★
前席シートは小さ過ぎることなく、必要十分な大きさ。座り心地も過不足はない。ステアリングホイールをやや上から抱え込むようなドライビングポジションを取らされるので、いきおい、シートの背もたれは立ち気味になる。すると、必然的にドライバーの視点も高くなるので、ボディ四隅をよく認識でき、サルーンの実用性を高める結果をもたらしている。XJや、かつての「Mk.II」といったジャガーサルーンの特長である、スポーツカー的に低く、手足を水平に近く投げ出す姿勢とは対照的だ。これで、ドライビングポジションが低かったら、運転しづらいクルマになっていただろう。モンデオとのプラットフォームの共有化による影響だ。
(後席)……★★★
なだらかにスロープするルーフや絞り込まれた外見に反して、頭と天井の間のスペースは十分に確保される。また、前席の背もたれと膝の間の空間も十分にあって、窮屈な思いはせずに済んだ。だが、肝腎のシートが小さいので、ゆったり落ち着いて身体を預けるというわけにはいかない。座面が狭く、左右の角を大きく“面取り”してあるので、後席左側に座った場合、左足の膝裏までシートが届かない。同様に、右側に座れば右膝裏が宙に浮く。シート自体のかけ心地は悪くないが、絶対的なサイズの小ささはどうすることもできない。
(荷室)……★★
VDA方式によるトランク容量は452リッター。数値自体は、同クラスの標準と較べて著しく劣るわけではないが、開口部と内部の形状が複雑なので、大きな荷物が積みにくい。こういう荷室は、中小の荷物を多数積み込むときにも、融通が利かないため使いにくいものだ。このことは、ジャガー社もよく認識しているのか、Xタイプのカタログのどこにも荷室の写真が載っていない。積載能力を求める場合は、2003年のフランクフルトショーに出た「エステート」の導入を待たなければならないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
排気量が2.1リッターと小さいため、パワーはそれなり。サルーンとして「トルクが細く、加速が心許ない」と指弾されない、ギリギリのところだ。V6であるぶん、4気筒より“まわりっぷり”はスムーズで、音のキメも細かい。だが、このV6エンジンそのものが“積極的な魅力を持っている”というほどのものではなかった。
5段オートマチックトランスミッションは優秀だ。変速タイミング、スムーズネスなどなど、何も言うことはない。むしろ、エンジンパワーが限られているのに、ギア比が2.5、3リッターと同じトランスミッションでは、持て余し気味ともいえる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ベースとなったモンデオに対する、Xタイプのアドバンテージが4輪駆動にあるわけだが、それをともなわない前輪駆動版をどう見るか。乗ってすぐに気付き、その後もずっと前輪駆動版の印象を決定付けたのが、発進と加速時のテールスクオットだ。リアがグイッ、グイッと沈み込む挙動は、4駆には見られなかった。これを、“落ち着かない”と取るか、“ソフトで快適”と感じるかによって、評価が別れるところだろう。
一方、悪影響が排除されたと思えるのがハンドリングだ。スロットルのオン・オフによるトルク変動をステアリングホイールまで伝えず、きれいに遮断できている。まるで、後輪駆動車のように、前輪が舵取りだけを担っているかのようだ。舵取りの動き自体も非常にスムーズで、しっとりとしている。上質で高級な感触を受けるステアリング系統は、ジャガーの面目躍如たるところだろう。
整備・調整による個体差かと思われるが、ブレーキがスポンジーだったのは残念。踏み代が大きく、効き具合と限界を感じにくかった。
(写真=峰昌宏/2004年4月)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2003年12月9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2745km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ (いずれもピレリ P6000)
オプション装備:電動スライディング・チルトガラスサンルーフ(16万8000円)/プレミアムサウンドパッケージ(16万8000円)/HIDパッケージ(13万6500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:224.6km
使用燃料:33.0リッター
参考燃費:6.8km/リッター

-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。




















