ジャガーXタイプ2.5 V6 SE(5AT)【試乗記】
本物のジャガー 2002.08.17 試乗記 ジャガーXタイプ2.5 V6 SE(5AT)ジャガーSタイプを日常の足にして1年半。「リンカーンLSベースなのが見え見え」と感じている小林彰太郎。フォード傘下のジャガーがリリースしたニューモデル第2弾「Xタイプ」はどうなのか? 雨の富士五湖から報告する。
会員コンテンツ「Contributions」より再録。
|
乗った瞬間から自信をもって
ジャガーXタイプを富士五湖周辺でテストした日は、幸か不幸か台風接近による豪雨と霧という悪条件下だった。Xタイプの最も重要な特徴は、「トラクション4」と呼ばれるフルタイム4輪駆動を標準装備することである。四駆のジャガーなんてと、誰でも一瞬眉をひそめるだろう。ところが嬉しい誤算は、それが全く杞憂だっだだけではない。それどころか、四駆は大きなメリットであり、またメルセデスベンツCクラス、BMW3シリーズなどのライバルに対して、最大の武器でもあることが、今回最悪の気象と路面状況でテストして、改めて確認されたのである。
ここでXタイプの概要を簡単におさらいしておこう。それは前輪駆動のフォード・モンデオと基本的なプラットフォームを共有するが、「トーションコントロールリンク」と名づけられたリア・サスペンションは独自の設計だし、ホイールベースもモンデオの2755mmに対しジャガーのそれは2710mmと、僅かに異なる。
エンジンはSタイプと共通のV6 3.0リッター、およびそのボアを縮小した2.5リッターV6の2種。トランスミッションは5ATまたは5MTだが、日本市場はAT仕様のみとなる。なおこの5ATはJATCO製である。4.69×1.79×1.42mのボディ寸法は、日本で使うにはまさに最適サイズであり、飛び乗った瞬間から自信をもって、混んだ市内を運転できる。スタイリッシュなジャガーらしいスタイリングにもかかわらず、室内空間に過不足はない。前席を筆者の体格に合わせ、その後ろに着座したら、ひざとバックレスト間に拳ひとつ以上の余裕があった。
|
軽快でスポーティ
さっそく豪雨中の路上に出よう。筆者はこの1年半/4万3000kmほど、ジャガーSタイプ3.0V6SEに乗っているので、当然それと比べたくなる。Sタイプに乗ると、それがリンカーンLSをベースにしているのは見え見えだが、このXタイプは小さいとはいえ、本物のジャガーだというのが第一印象であった。
Sタイプの場合、もうほとんど完成しているリンカーンを与えられて、これでジャガーをつくれといわれたかのように見える。これに対してモンデオ/Xタイプの場合は、ごく初期段階から、ジャガーのエンジニアが開発に参画したのではないだろうか。むろんこれは純粋に筆者の想像だが。
個人的に最も気に入ったのは、軽快でスポーティーなハンドリングである。「ビスカスカプリング+センターデフ」により、駆動トルクは基本的に前:後=40:60に配分されるが、どんな状況でも前輪が駆動されているという実感はほとんどない。速度感応サーボと、適切なバリアブルレシオを持つラック&ピニオン・ステアリングは適度にクイック(2.75回転)で軽く、十分に操舵感覚はあるが、キックバックや、トルクステアなどの悪癖とは無縁である。
4輪駆動の好ましい点だけ
筆者は、5月にフランスの原野で行われたXタイプのテストにも参加したが、そのときは好天に恵まれたので、悪条件下で乗るのはこの日が初めてである。ここで四駆はその実力を遺憾なく発揮した。路面を数mmの水幕で覆われたワインディング・ロードを、まるでドライ路面を走るように自信をもってガンガン飛ばすことができた。こうした状況での路面を選ばぬ高速スタビリティは、4輪駆動でなければ絶対に得られぬ種類のものである。
ちょうどうまい具合の広場を見つけ、5ATの「2」を選択して、ウェット路面の高速スラロームテストを敢行した。ここでもXタイプは期待にそむかず4輪のグリップを示し、素早い転舵に正確に追従してまったく破掟を見せなかった。操縦性はほとんどニュートラルだったから、てっきりDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール=アンチスピンデバイス)が備わっていると思ったが、帰ってから調べてみると、このクルマには付いてなかった。DSCは33万6500円という高価なオプション価格で、「2.5V6 Sport」モデルに限り装着できる。これは個人的見解だが、この日の経験によれば、「DSC」の必要性は実用上認められないと思った。これに対して、Sタイプの方は、バンピーなコーナーや砂利道などで、後輪のグリップを簡単に失うという悪癖がある。『Car Graphic』誌の長期リポート用Sタイプを発注するとき、オプションのDSCを指定しなかったことが、いまとなって悔やまれるくらいである。
純粋な乗り心地を比べても、Xタイプはより大柄で重量のあるSタイプに遜色なく、非常に快適である。さらにXタイプの方が優れているのは、路面ノイズの遮断である。Sタイプはラフな舗装路面でかなり大きなノイズを伝えるが、Xタイプは一般的にもっと静かで、路面による差もずっと少ない。
ブレーキも模範的である。ウェット路面でフル制動を何度も試みたが、平均的な2駆車にくらべ、はるかに短距離で、しかもまったく安定した姿勢で停止した。故意に片方のホイールを砂利道に落として急制動を試してみてが、やはり真っ直ぐに停止した。不思議なことに、こうした条件でもABSは作動しなかった。EBD(エレトリック・ブレーキ・ディストリビューション)による制動力配分がよほど優れている証拠であろう。以上のように、Xタイプは4輪駆動に固有の好ましい特徴だけを充分に備えている一方で、四駆につきまとう欠点、たとえば過大なギアノイズや過度のアンダーステアなどは一切見られない。
V6には2.5(198ps)と3.0リッター(234ps)があるが、優れたJATCO製5ATのギア比配分とあいまって、特にSモードを選択すれば、いずれも胸のすくような加速感が得られる。排気量と仕様の差で4種類あるなか、筆者ならジャガーらしい本革シートが標準の、「2.5V6SE」(475.0万円)を躊躇なく選ぶだろう。
(文=小林彰太郎/写真=郡大二郎/2001年7月)

小林 彰太郎
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。






















