メルセデスベンツEクラスステーションワゴン(5AT)【海外試乗記】
Eセダンからそのまま 2003.02.28 試乗記 メルセデスベンツEクラスステーションワゴン(5AT) 2003年1月のデトロイトショーでワールドデビューしたメルセデスベンツの「Eクラスワゴン」。7年間のモデルライフ中26.6万台を売り上げた先代の成功を引き継ぐべく、内外ともコンサバティブにまとめられた。一方で、充実装備は驚くばかり……。自動車ジャーナリスト、河村康彦が報告する。イメージが近い
パワー開閉式のテールゲートにはもう驚かないし、助手席シートバックが水平位置まで前倒れして長尺物の積載に対応するというのももはや珍しくない。けれども、ゲートの開閉に連動してトノーカバーが自動的に上下したり(!)、ラゲッジルームのフロアボードがスイッチひとつで手前にせり出てきて荷物の搭載の手助けをしたりする(!!)のにはちょっとばかりビックリした。
“プレミアムワゴン界”の第一人者であることを自認(?)するEクラスワゴンは、フルモデルチェンジによってそんな「至れり尽くせりカー」に変身を遂げた。今年2003年はメルセデスベンツが初めてエステートを世に送り出してから、記念すべき25年目という。そんな記念モデルとしての名を後世に残すことまでを目論んだのかどうか、新しいEクラスエステートはかつてないゴージャスな装備を最大の売り物として、新世代のプレミアムワゴンを訴求する作戦に打って出たようにぼくには思える。
新しいEクラスエステートのアピアランスはご覧のように、多くの人が「新型Eクラスセダンの姿から想像したであろうもの」に準じている。メルセデスの顔としてもうお馴染みになった4灯式ライトが与えられた個性的なフロントマスクに比べると、リアビューの方は素っ気ないほどにプレーンな印象を受ける。
が、いずれにしても新型のルックスには、生みの親であるダイムラークライスラーが「従来型のデザインに自信を抱いていたこと」を感じさせるものだ。
電動とフックス
前述のように装備の充実度の高さを大きなウリとする新型Eクラスエステートだが、そのなかでもハイライトといえるのが「ロードコンパートメント・フロア」と呼ばれるパワー可動式のローディングシステム、つまり荷室の床が電動で動く仕組み。このシステムを装備したクルマは、跳ね上げたテールゲートの後端部に設けられたスイッチを押すと、ラゲッジフロアの一部分が電動油圧の力によって「ウイ〜ン」というちょっとばかり大仰なノイズとともに400mほど後方にせり出す。もう一度スイッチを押すとフロアは戻っていく。つまり、フロア上に乗せた荷物を労せずして(結果的に)ラゲッジルームの中央部に搭載することができるわけだ。同類のスライド式フロアボードは、すでに「サーブ9-5エステート」が設定済みだが、そちらは“手動式”。ここまでパワー化した例は、ぼくの知る限り、新型Eクラスステーションワゴンが初めてだ。
同様に、オプション扱いではあるが、ラゲッジスペース内に敷いたアルミ製レール上に様々なアタッチメントを設置し、伸縮性を持つベルトで小物類を固定したり好みの位置にタイダウンフックを取り付けたりすという「フィックスキット」も、新型Eワゴンのジマンだ。ただ、実際にそれらを脱着するとなると、慣れないこともあってか意外に面倒くさく、不精もののぼくなどは、荷物は結局ラゲッジフロア上に転がしておくだけ、ということにもなってしまいそうだったが……。
日本へは2.6と3.2リッター
Eエステートの走りのテイストは、あらゆる面で極めて質感の高い「Eセダン」の特徴を、そのまま受け継いでいる印象だった。
静粛性/乗り心地は「ほんのわずかだけセダンより低下しているかもしれないけれど、直接比べてみないとそれも断言はできないナ」というレベル。比較的大柄なワゴンで感じがちな、不快なドラミング(低周波)ノイズもほとんど気にならない。
リアサスは、セダンに対するボディ構造上のハンディキャップ(ボディ後部が重い)と、さらに積載物への対応を考えて多少ハード化しているはずだが、それでも気になる突き上げ感は皆無。
「エアマチックDC」と呼ばれるエアサスはオプション扱いだが、リアサスのレベライザーは全車標準。“働きモノ”であるEワゴンの伝統を受け継ぎ、今回も「カタチばかりのステーションワゴン」ではないことを主張する。
ちなみに、やはり全車標準のバイワイヤ式ブレーキシステム「センソトロニック」は、踏力に対する効きのコントロール性がセダンのそれよりも向上している印象を受けた。このあたりは、セダンに対するデビュータイミングの遅さが功を奏したということになるのであろう。
ヨーロッパ市場に向けては、3種類のディーゼルユニットを含む6つのエンジンバリエーションが用意される新型Eクラスエステート。日本導入へは、どうやら2.6リッターV6ガソリンエンジン搭載の「E240エステート」と、3.2リッターV6「E320エステート」の二本立てでスタートということになりそう。V8搭載モデルは、いまのところ設定されていない。
(文=河村康彦/写真=ダイムラークライスラー日本/2003年2月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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