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メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)

万能グランドツアラー 2024.05.22 試乗記 今尾 直樹 新型「メルセデス・ベンツEクラス」に早くも「オールテレイン」が登場。ワゴンをベースに車高を高く設定した、先代でも人気を博したクロスオーバーモデルだ。果たして進化のレベルはいかほどか!?
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まるでバランスボール

2024年春に上陸した新型Eクラスのオールテレインは、ステーションワゴンの車高をちょっぴり、より正確には40mmほど上げたクロスオーバーである。Eのオールテレインとしては2代目で、日本仕様は最高出力197PSの2リッター直4ディーゼルターボ(IGS搭載)のE220dのみ。本邦ではEクラス唯一のディーゼル+4WDモデルでもある。

そのドライビングインプレッションをば、早速始めましょう。まずもって着座位置がふつうのEクラスよりちょっぴり高い。最低地上高を上げているのだから当然です。これによって外観だけでなく、微妙にSUVっぽく感じる。それゆえか、新型Eクラスの特徴である「MBUXスーパースクリーン」が新鮮で、筆者は一驚した。助手席にまで液晶スクリーンが広がっている。デジタルワールドはアウトドアへと拡張しつつある!

走り始めてすぐに気づくのは、ふわふわの乗り心地と、どた靴みたいなタイヤのフィールである。ふわふわなのは、可変ダンパーとエアサスペンションを組み合わせた「AIRMATIC」を標準装備しているからだ。ストローク量がたっぷりあって、直径1mぐらいの風船の、健康器具のバランスボールに乗っかったみたいな快適な乗り心地を提供してくれる。

新型「メルセデス・ベンツEクラス」の第3のボディータイプとして日本にやってきた「E220d 4MATICオールテレイン」。「クーペ/カブリオレ」が「CLE」としてスピンアウトしたため、これでラインナップが完成ということになる。
新型「メルセデス・ベンツEクラス」の第3のボディータイプとして日本にやってきた「E220d 4MATICオールテレイン」。「クーペ/カブリオレ」が「CLE」としてスピンアウトしたため、これでラインナップが完成ということになる。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4960×1890×1495mm。高さを「ステーションワゴン」よりも25mm上げてクロスオーバー感を付与している。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4960×1890×1495mm。高さを「ステーションワゴン」よりも25mm上げてクロスオーバー感を付与している。拡大
グリルはメルセデスのSUVラインナップと同じ2本の横ルーバー付き。バンパー下部にはアンダーガードのようなメッキパーツが付いている。
グリルはメルセデスのSUVラインナップと同じ2本の横ルーバー付き。バンパー下部にはアンダーガードのようなメッキパーツが付いている。拡大
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どた靴も味わいの一部

どた靴感は大径19インチの前後255/45のタイヤに起因している。銘柄はハンコックで、これをもうちょっと乗り心地に定評のあるタイヤに履き替えたら……。と想像する。だけど、ハンコックが悪いわけではない。メルセデスが認証したタイヤを履いているのだから、責任はメルセデスにある。と考え直す。メルセデスはおそらく、このどた靴のようなタイヤのフィールをクロスオーバーSUVの特徴、表現の一部と捉えているのだ。

都内から自宅近くまで来たときには夜になっていた。所用あって近所の旧ダイエー、現イオンの大型店に立ち寄った。駐車場は1、2階に止めないと5階までグルグル、らせん状のスロープを上っていくタイプで、そこを走るときにはボディーの大きさが気になった。全長×全幅×全高は4960×1890×1495mmもある。ホイールベースは2960mmと、あと40mmで3mに達する。こんなにでっかいクルマでグルグル回るスロープを走るのは初体験。なので、少々緊張した。もちろん、新型Eクラスより大きなクルマは世のなかに山ほどある。だけど、小さなクルマは浜の真砂(まさご)ほどある。

縦置きで積まれるエンジンはマイルドハイブリッドの2リッター4気筒ディーゼルターボ「OM654M」。最高出力197PS、最大トルク440N・mを発生する。
縦置きで積まれるエンジンはマイルドハイブリッドの2リッター4気筒ディーゼルターボ「OM654M」。最高出力197PS、最大トルク440N・mを発生する。拡大
タイヤサイズは前後とも255/45の19インチ。ハンコックの「ヴェンタスS1 evo3」は少々ラフな乗り味だが、認証タイヤの証しである「MO」マークがきちんと付いている。
タイヤサイズは前後とも255/45の19インチ。ハンコックの「ヴェンタスS1 evo3」は少々ラフな乗り味だが、認証タイヤの証しである「MO」マークがきちんと付いている。拡大
ドアの下部にもメッキのクラッディング処理が施されている。
ドアの下部にもメッキのクラッディング処理が施されている。拡大

僕らは未来を生きている

翌朝未明、撮影場所の木更津へ向かうべく、自宅近くの青空駐車場に止めたE220dオールテレインに乗り込もうとする。キーを持って近づくと、ドアの表面とツライチに埋め込まれたノブが音もなく飛び出し、ノブの周囲に埋め込まれたLEDがブルーに発光する。なんて気が利くんだぁ。なんの命令もしていないのに、愛(う)いやつである。運転席のドアを開くと、メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターのマークが地面に投影されている。

スターターを押すと、若干の振動とともに2リッターの直4ディーゼルターボが目を覚ます。発進時、2t以上もあるとは思えぬ身のこなしを披露する。直4ディーゼルは最高出力こそ197PS/3600rpと控えめながら、440N・mもの最大トルクを1800-2800rpmという広範囲で生み出すからだ。おまけにマイルドハイブリッドシステムのモーター、別名「ISG」が23PSと205N・mを発進・加速時に発生してエンジンをアシストする。フツウに走っていると、9段ATがエンジンの回転数を1500rpm前後に保つべく変速を人知れず繰り返す。

やがて太陽が顔を出し、初夏の日差しを受けて室内が暑くなる。「ちょっと暑い」とつぶやくと、「MBUX」の対話型AIが「エアコンの温度を下げます」と、2度下げてくれる。その際、ダッシュボードの細長いLEDがブルーに光る。試みに「ちょっと寒い」とつぶやいてみると、即座に温度を2度上げてくれる。LEDは赤く輝く。アクアライン経由で木更津に渡ったころ、「眠い」と訴えると、ダッシュボード中央のスクリーンに赤くて丸い画像が表示され、シートの座面と背もたれに仕込まれた指圧機が音楽に合わせて作動する。なんて気が利くんだぁ。「眠い」とつぶやいただけなのに……。僕らはいま、未来を生きている。

足まわりにはエアサスと可変ダンパーによる「AIRMATIC」サスペンションを標準装備。セルフレベリング機構を持つだけでなく、わずかながら最低地上高を高めることもできる。
足まわりにはエアサスと可変ダンパーによる「AIRMATIC」サスペンションを標準装備。セルフレベリング機構を持つだけでなく、わずかながら最低地上高を高めることもできる。拡大
車高が上がっているため前方視界は素晴らしい。助手席前方にもスクリーンが搭載される「MBUXスーパースクリーン」はオプションの「デジタルインテリアパッケージ」(40万4000円)に含まれている。
車高が上がっているため前方視界は素晴らしい。助手席前方にもスクリーンが搭載される「MBUXスーパースクリーン」はオプションの「デジタルインテリアパッケージ」(40万4000円)に含まれている。拡大
張りの強いナッパレザーシートはオプションの「レザーエクスクルーシブパッケージ」(75万9000円)で選べる。これを装着しないと「デジタルインテリアパッケージ」が選べない(同時装着が必須)。
張りの強いナッパレザーシートはオプションの「レザーエクスクルーシブパッケージ」(75万9000円)で選べる。これを装着しないと「デジタルインテリアパッケージ」が選べない(同時装着が必須)。拡大
「レザーエクスクルーシブパッケージ」は高価なオプションだが、後席のヒーターも含まれている。広さについては文句なし。
「レザーエクスクルーシブパッケージ」は高価なオプションだが、後席のヒーターも含まれている。広さについては文句なし。拡大

いつもすまないねえ

撮影の合間を縫って、内房のカントリーロードを目指し、木更津から館山自動車道経由で鴨川の途中まで往復した。E220d 4MATICオールテレインは高速が得意科目で、その快適さに感銘を受けた。100km/h巡航は8速ギアで1500rpm弱で、9速トップには入らない。アウトバーンの制限速度の130km/hに至って9速の出番がある。ちょっと前の内燃機関車の半分の回転数で巡航できるのだから、エンジン音は皆無。燃費もよいはずである。路面がよいこともあって、どた靴感は完璧に消えうせ、E220d 4MATICオールテレインは矢のごとく直進し、静かで快適な移動空間を乗員に味わわせてくれる。

ワインディングロードでは全長5m弱のサイズがまったく気にならなかった。正確なステアリングと腰高感のない自然な姿勢変化、強力なブレーキのおかげだ。4WDなのに後輪駆動のようによく曲がる。

ガバチョとアクセルを踏み込めば、3000rpmを超えるあたりから直4ディーゼルがディーゼルとも思えぬ快音を発し、ターボパワーでもってワゴンボディーをふわり、圧縮した空気を押し出したみたいに加速させる。まるで風船を飛ばしたときみたいな加速感。着座位置はちょっぴり高いけれど、本格的なSUVほど高くはない。ほとんど乗用車感覚で操ることができる。それがオールテレインの強みだ。

新型E220d 4MATICオールテレインは、第一級の高速巡航能力を持つ、最新の万能グランドツアラーである。対話型AIはエンジンを停止するたびに、「車内に電話をお忘れではありませんか」と呼びかけてくれたりもする。「ゴホンゴホン。いつもすまないねぇ」とつぶやくと、「なにいってんの、おとっつぁん」というようなコントを演じてくれる日もそのうちやってくるに違いない。楽しみである。

(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

「E220d 4MATICオールテレイン」はEクラスでは唯一のディーゼルと4WDの組み合わせ。万能グランドツアラーであり、多少の悪路にも踏み入れられるところが心強い。
「E220d 4MATICオールテレイン」はEクラスでは唯一のディーゼルと4WDの組み合わせ。万能グランドツアラーであり、多少の悪路にも踏み入れられるところが心強い。拡大
ドライブモードにはSUVラインナップと同じ「オフロード」モードが設定される。最高速が110km/hに制限されるため、選択時にはアクティブにするかどうかを問うアラートが表示される。
ドライブモードにはSUVラインナップと同じ「オフロード」モードが設定される。最高速が110km/hに制限されるため、選択時にはアクティブにするかどうかを問うアラートが表示される。拡大
ピッチ&ロール計などをはじめとした情報を集約した「オフロードスクリーン」も表示できる。
ピッチ&ロール計などをはじめとした情報を集約した「オフロードスクリーン」も表示できる。拡大
615~1830リッターの荷室容量は「ステーションワゴン」と変わらない。
615~1830リッターの荷室容量は「ステーションワゴン」と変わらない。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4960×1890×1495mm
ホイールベース:2960mm
車重:2060kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/3600rpm
エンジン最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/1800-2800rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-2500rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)255/45R19 104Y XL/(後)255/45R19 104Y XL(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3)
燃費:--km/リッター
価格:1098万円/テスト車=1274万9000円
オプション装備:アドバンスドパッケージ(60万6000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(75万9000円)/デジタルインテリアパッケージ(40万4000円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1339km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:373.0km
使用燃料:32.1リッター(軽油)
参考燃費:11.6km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン
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メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)【試乗記】の画像拡大
今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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