ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダー/ガヤルドLP560-4/ガヤルドLP550-2【試乗記】
ガヤルドここに極まる 2013.04.20 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4スパイダー(4WD/6AT)/ガヤルドLP560-4(4WD/6AT)/ガヤルドLP550-2(MR/6AT) ……2912万5740円/2701万2720円/2436万円早いものでデビューから11年目に入った「ガヤルド」シリーズ。“最終型”ともささやかれる現行型の仕上がり具合を、沖縄は宮古島で試した。
これが“最終型”?
ソフトトップが開いて、頭上に青空が広がるまでに20秒。暖かい宮古島の気配が、「ガヤルドLP560-4スパイダー」のキャビンに流れこんできた。ちょっと湿気を含んだ南国の空気に体を慣れさせるのに、20秒はちょうどいい時間だ。
われわれを待っていたガヤルドは3台。LP560-4スパイダーと、そのクーペモデルの「LP560-4」、そして後輪駆動モデルの「LP550-2」である。前二者は、2012年秋のパリモーターショーで外観に手直しを受け、ランボルギーニデザインの象徴ともいえる三角形と台形がノーズとテールにあしらわれた。少なくともカタログ上では、エンジンやトランスミッションなど、主要なメカニズムには変更はない。そして、このモデルがどうやらシリーズの最終型であるらしいことは、ファンの間ではもはや公然の秘密となっている。気付けばガヤルドもデビューから11年目に入った。早いものだ。
初めから結論じみたことを言ってしまうと、今回あらためてガヤルドに乗ってみて、今がおそらく「旬」では? と感じた次第だ。各所に余裕をもたせて設計されたスーパーカーといえども、10年もたてば何かしらの古さを感じさせてしかるべきだ。2003年春のデビュー時には500psだった5リッターV10エンジンも、今では5.2リッターに拡大され、パワーも560psに達している。それに応じて、標榜(ひょうぼう)する最高速も309km/hから325km/hに上昇した。どこかに無理が生じても仕方ないはずだ。
しかし“最終型”には、その気配がほとんど見られない。構造的にまだ余力を残し、しかも脂がのっている気配すらあるのだ。
乗り心地の良さに脱帽
三角に似た形をした宮古島は、最北の池間島(いけまじま)から南部の海岸まで走れば約30km、島一周なら約100kmという規模である。道の流れにしたがって走れば、3時間から4時間で一周することができる。制限速度内で流れる、とてものんびりとした交通環境なのだ。
島内には国道が1本、アルファベットの「L」のように通っており、高速道路はない。最高速が300km/hを超える実力を備えるスーパーカーを試乗する場として、道の平均速度が30km/hぐらいの島を選ぶなんて、ランボルギーニもなんとも粋なことをするものだ。
つまり乱暴な言い方をしてしまえば、今回の試乗はクルマの絶対性能を試すことが第一の目的ではない。試されているのはクルマではなく、むしろわれわれの方である。11年目に入って完成形に近づきつつあるスーパーカーは、宮古の豊かな環境の下で、どれだけ記憶に残る走行体験を与えてくれるのか。筆者としては、サーキット試乗などとは違うセンサーの感度を、最大限に引き上げなくてはならない。
LP560-4スパイダーで宮古の道に出て、まず感じるのは、思いのほか乗り心地が良いということだ。路面のコンディションは、一般道としてごく普通に見える。表面がきれいに整ったところがあれば、ロードノイズを発する荒れた箇所もある。きつめのハーシュネスをさそう不整だってある。
そんな極めて日常的な路面を、スパイダーは適度なしなやかさを伴いながら、スーパーカーらしい逞(たくま)しい足腰で滑っていく。不意にダンッと強い突き上げに見舞われても、その基本スタンスは変わらない。オープンボディーも、いまなおかなり強固に感じられる。無粋な震えなど残さず、ピシッとしている。
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名車の貫禄
クーペボディーの「LP560-4」だと、さらにボディーの硬さが際立つ。スプリングレートがスパイダーより高く設定されているのか、あるいはボディーに振動の“逃げ”がないために硬さが際立っているのか(おそらくその両方だと思うが)、クルマ全体によりスポーツカーらしいソリッドが感触がみなぎっている。回頭性もスパイダーに比べて一段とシャープだ。
さらに、4WDではないRWD(後輪駆動)の「LP550-2」になると、ここ一番のシャープさが光る。のんびりとした宮古島の道では、LP550-2の軽いフットワークを存分に味わえる場は事実上ない。しかし町から離れて、島の南岸・ムイガー断崖の近くを行く気持ちのいい一本道でLP550-2と向き合ってみれば、他のモデルにはない澄んだターンインを味わうことができた。
思うに、そもそもスーパーカーはレーシングカーではない。性能を出し切らなければ、その持ち味が味わえないようでは興ざめと言わざるをえない。例えば速度ひとつ取ったって、325km/hなどという最高速を試せる道など、われわれの周りには事実上ないのだ。そのすごさの片りんが、気配として日常的に味わえるかどうかが、“スーパーカー的性能”としてはむしろ大事なように思う。
最終的には560psに達するエンジンにしても、その絶対性能を賛美するのではなく、低回転域のトルクの豊かさや、そこから“非日常的な領域”へとつながっていく柔軟性の高さにあらためて感心させられた。
セミオートマの「e-gear」(前進6段)をATモードにして制限速度の50km/hで走っていると、4速で1750rpm、5速だと1500rpmを示すにすぎない。速度計にしろ、回転計にしろ、メーターの1/5も使っていない、ガヤルドにしてみればまるでウオーミングアップのような状況だろうが、エンジンは静かに、トランスミッションも無用にギクシャクすることなくスムーズに“市井の凡人”を演じてみせる。スパイダーならスーパーカーに乗っていることを忘れて、宮古島の豊かな自然を楽しむ気になれるほどイージーな気分にさせてくれる。
聞けばガヤルドは、現在までに実に約1万3000台が生産されたそうだ。かくもフレキシビリティーに富んだランボルギーニは、同社としては異例のヒット作となったわけだ。ガヤルドのことを、もう名車と呼んで差し支えないだろう。こうなると、ランボルギーニは次期ガヤルドでファンを「クンタッチ!」させるのは並大抵のことではない。
(文=webCG 竹下元太郎/写真=ランボルギーニ・ジャパン)
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竹下 元太郎
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