ランボルギーニ・ガヤルド・スーパーレジェーラ(4WD/2ペダル6MT)【海外試乗記(後編)】
バランスの問題(後編) 2007.05.10 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルド・スーパーレジェーラ(4WD/2ペダル6MT)……2554万1250円
ランボルギーニのスーパースポーツ「ガヤルド」が、100kgの減量と10psのパワーアップを得て「ガヤルド・スーパーレジェーラ」として登場した。北米のデザートシティで新たなる猛牛を試す。
レコードイヤー
快適装備ともうひとつ、「ランボルギーニ・ガヤルド・スーパーレジェーラ」で省かれることのなかった基本機能が、ビスカスカプリングを用いた4WDシステムである。昨2006年、「ムルシエラゴLP640」のテストイベントが、マレーシアはセパンサーキットで開催されたとき、ランボルギーニの首脳は「2駆の軽量モデルを企画している」とメディアに伝えた。
ガヤルド・スーパーレジェーラのリリースが出たとき、「これがその……」と色めき立った人もいたが(リポーターもそのひとり)、違った。「クアトロ」を看板にする親会社アウディが、イメージブースターのランボに4WDを捨てさせなかったという観測が、まことしやかに囁かれた……。
さて、一時はインゴルシュタットに給餌されている、と揶揄されたサンターガタの猛牛であるが、2003年にガヤルドを市場に放って以来、順調に業績を伸ばし、2006年は特に実りの年となった。
2001年に6460万ユーロだった売上は、昨年には3億4600万ユーロ、税引き前利益も2004、05年の各440万ユーロから1810万ユーロに跳ね上がった。2002、03年をピークに、開発費が落ち着いたことも大きい。ちなみにランボルギーニ車の販売台数は、2005の1600台から3割り増しの2087台に増加した。2006年は、新生ランボルギーニのレコードイヤーである。
それでもコンファレンスの後に話をうかがったスタッフのひとりは、「うちは小さな会社だから、失敗は許されないのです」と控えめにコメントした。4WDにして快適仕様そのままのスーパーレジェーラも、手堅いといえば手堅いモデルといえる……。
セルモーターが長めに回り、10気筒に火が入った。ランボルギーニ・ガヤルド・スーパーレジェーラのステアリングホイールを握っている。
パドルを引いてギアを入れ、動き出した瞬間に、100kg軽量化と10psアップの恩恵が……、よくわからなかったのである。それでも、素晴らしく力強いダッシュ、鋭いステアリングフィール、そして日常の街乗りには少々遠慮したい硬い乗り心地が、スペシャルガヤルドの第一印象となった。
サイドウィンドウから、空力的に形成されたカーボンファイバー・ミラーがよく見える。道の脇にはサボテンが生え、ひどく乾いた、しかしときに土砂降りの雨が通り過ぎるデザートシティ。全米中でも指折りに成長しているリゾートエリアということで、わがもの顔で路上をいく巨大なピックアップトラックにまじって、ヨーロッパの高級車が奇妙なほど目につく。カッティングエッヂなデザインをまとうイタリアン・エキゾチックも、違和感なく風景に溶け込む。イエロー、オレンジといった派手なボディカラーがよく似合う。
ハンドリングでは
アメリカの、やや荒れた舗装のうえでは、“スポーティに締まってる”という表現の上限ギリギリな足まわり。赤信号前後の加減速のたび、背中から「カタコン、カタコン」とロボタイズド・ギアの働く音が聞こえる。Aモードは、相変わらず「シフトする手間が省ける」というレベル。“スムーズ”まであと一歩。
トップギア100km/hでのエンジン回転数は2400rpm付近で、これはノーマルガヤルドと同じ。ファイナルを含め、スーパーレジェーラのギアに変更はない。タイヤサイズも同じだ。同じでないのはコーナリング時の鋭さで、ステアリングを切ると、スパッとターマックに切れ目を入れるがごとく、シャープに回ってゆく。フェニックス・インターナショナル・レースウェイで、たちまち新しいガヤルドの角にひっかけられて、放り投げられた。
「A」を捨て、「SPORT」ボタンを押す。エンジンとギアボックスのマネジメントがアグレッシブに変更される。ギアボックスの機織りの音は太い排気管から発せられるエグゾーストノートにかき消された。インテークマニフォールドは薄いマグネシウム製である。ガヤルドSLは、吸排気系でなんと12kg弱も軽量化されている。
先導するムルシエラゴLP640に乗るのは、サンターガタに通勤するようになって30年のベテランドライバー「マリオ・ファザネット」。分厚い胸板で、後方からのスーパーレジェーラの挑戦をドンと受けとめる。際限なくスピードを上げていく。
ヘアピンの手前では、新たにオプション設定されたカーボンセラミックブレーキ(184万8000円)がガッシリ速度を殺し、ピレリのPゼロ・コルサに悲鳴をあげさせる。ESPオンのままでも4輪のスライドを許容して、ドライバーを喜ばせる。4WDらしい怒濤の加速を経て、次のカーブへ。
結局、細かい小休止を何度か挟んで、ランボルギーニとともに2時間をサーキットで過ごした。なんという贅沢! 猛牛は、息を切らせるそぶりも見せなかった。
試乗後、テストドライバーのマリオにお礼を言いに行くと、ブッ太い腕をステアリングホイールに載せながらイタリアなまりの英語が返ってきた。
「ムルシエラゴはマッチョでストロング。でも、ちょっと重いだろ」
ニヤリとする。
「ハンドリングなら、ガヤルドだよ。今日みたいな、レースコースでなら」
でも、一般道ではサスペンション、硬すぎません?と水を向けると、アッサリ応えた。
「当然さ。バランスを考えたらね」
そう、当然だ。バランスを考えたら、ね。頻繁に通うサーキットでの走行会用に、ガヤルド・スーパーレジェーラを購入できるオーナーが、私はうらやましい。
(文=NAVI青木禎之/写真=アウトモービリ・ランボルギーニ/『NAVI』6月号)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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