ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4(4WD/6AT)【試乗記】
スーパースターよ永遠に 2010.07.08 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4(4WD/6AT)……3052万2975円
560psを誇るスーパーカーに試乗したら「ランボルギーニ・カウンタック」に憧れたあのころを思い出した。スーパーカーってやっぱり……。
1Q77(?)
白く塗られた「ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4」を目の前にした瞬間、1977年の記憶がよみがえった。1975年に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始した『サーキットの狼』が作った小さな波紋はやがて巨大な渦となり、当時の小学生のほとんどを飲み込んだ。
5年3組のクラスメートで、お豆腐屋さんの長男だった増岡君(愛称マッサン)は一夜にして全校のヒーローになった。月曜の夜に東京12チャンネル(現在のテレビ東京)で放映していた『対決! スーパーカークイズ』に“出走”したからだ。一人勝ち抜きに成功した丸顔のマッサンは、惜しくも「シルエットクイズ」(その名の通り、シルエットだけで車名をあてるクイズ)で「ランボルギーニ・ウラッコ」が答えられず、敗退してしまった−−。
ガヤルドの外観デザインには、ひと目見ただけで遠い昔のちっぽけな記憶を呼び覚ますパワーがあるのか。あるいは“スーパーカー銀座”の青山や六本木でもめったに見かけない希少性が、見る者の心に強い衝撃を与えるのか。ま、どちらもハズれではないけれど、やはりスーパーカー世代は「カウンタック最高!!」と刷り込まれているのだろう。
ガヤルドにはカウンタック直系の雰囲気がある。2008年のマイナーチェンジでフロントのエアインテークがシャープな形になり、リアのコンビネーションランプが横長になって、さらに“カウンタック感”が増した。マイチェンでカッコよくなるというのは、結構珍しい例だと思う。
カッコと最高速の数字だけでゴハン3杯はいけた小学5年生も、40歳を超えるとあれこれ生意気なことを言うようになる。スーツ姿のオフィスワーカーが行き交う東京の景色から明らかに浮いている外観と違って、インテリアはビジネス街にもしっくりくる。空調類のスイッチやドアミラーの調整ノブなど、どこかで見たことがある部品もちらほら……。兄弟というかいとこというか、インテリアは「アウディR8」との血縁関係を感じさせる。ただし、低い着座位置から見る眺めはあまり見たことのないもの。ドライバーの頭が通りを行く人の腿(もも)のあたりに位置しているのは、なかなか慣れない。
快適でスムーズだけれど……
「LP560の“LP”が後方縦置(Longitudinale Posteriore)の意味だと教えてやったら、小5の自分から尊敬されるだろうな」てなことを考えながら、ルームミラーとドアミラーを調整。「カウンタックLP500Sの“500”は排気量5リッターのことだったけど、ガヤルドの“560”は最高出力だよ」なんて言おうものなら、小5の自分の瞳にはキラキラ星が輝くだろう。そうこうするうちにエンジンスタート。フォン! 乾いた、いかにも抜けのよさそうな音が響く。
「ガヤルドLP560-4」には6MTも用意されるが、試乗したのはeギアと呼ばれる6段の2ペダルMT。まずは肩慣らしに、オートマチックモードで出発。2年前のマイチェン時に、スムーズかつ迅速に変速するための小変更を施したeギアは、確かに滑らかに変速する。シフトアップ時に間が開いたり、あるいはつんのめったりする動きがない。
それから、やはりマイチェン時にビルシュタイン製のダンパーをはじめ、スプリングのレートやブッシュの素材を変更した足まわりは、実にスムーズに上下動する。路面の凸凹を「NO!」と拒絶するのではなく、一度受け止めてから丁重にお返しする感覚だ。スーパーカー小僧にとってはシフトショックも路面からのショックも関係ないだろうが、元スーパーカー小僧にはこのあたりの洗練がうれしい。
シフトモードを、一時的にマニュアルシフトも受け入れる「スポーツ」に切り替え、5.2リッターのV10エンジンとサシで対決する。マイチェン時にエンジンを直噴化するとともに排気量を243cc拡大、結果として最高出力も60psアップしているというけれど、正直、それほど面白みがあるエンジンではないと思った。
トルクはフラットで扱いやすく、エンジンの音質も明るく濁りがない。けれどもとがったところがなく、ヒリヒリするような危険なにおいがない。学生服姿の森田健作みたいだと思った。けれども、タコメーターの針が5000rpmを超えたところでグッときた。
松田優作登場!!
5000rpmから上ではタコメーターの針の動きがフッと軽くなり、張りのあるバリトンでコクピットが満たされる。アクセルペダルの微少な操作に対して、間髪入れずにレスポンスが返ってくる。学生服姿の森田健作が、剣道着に着替えた。そしてマイチェンを機に新たに設定された「コルサ」モードに切り替えてマニュアルシフトすると、学生服姿の森田健作に替わって、今度は松田優作が姿を現した。ちなみに、映画「蘇る金狼」で赤いカウンタックを駆っていたのが松田優作だ。
シフトショックが大きくなると同時に、シフトスピードが大幅にクイックになる。ダイレクトな快感を味わうと、シフトショックなど気にならない。「コルサ」モードでのシフトスピードは、マイチェン前の「スポーツ」モードより約40%速いという。シフトダウン時のブリッピングも盛大だ。ファン! ファン!! と、ドライバーの背後でドンパチが始まる。
「コルサ」モードにするとESPの制御も変化し、姿勢変化を許すようになるというが、いかにフルタイム4駆とはいえ一般道でその領域を試す勇気はない。けれども、その手前の領域でもシャープなターンインやコーナー脱出時の猛烈な加速など、猛牛と格闘する醍醐味(だいごみ)は十分に味わえる。また、冷静に観察すればしっとりとしたステアリングフィール、かっちりとしたブレーキフィールなど、スポーツカーとしての質感の高さも備えている。小5の自分に、「将来うまいことやったらランボを買っても後悔しないぞ」と教えてやりたい。残念ながら、うまいこといかなかったけれど。
ランボを堪能して家に帰ったら、ガヤルドっぽい人がテレビに映っていた。わかりやすく派手で、どこか愛嬌(あいきょう)のあるアクションのその人は、アルゼンチン代表のマラドーナ監督。戦術だとか選手起用だとか、いろいろ意見はありましょう。それでも、個人的にはマラドーナのおかげでW杯南アフリカ大会が楽しくなった。お祭りが盛り上がる。
先日、ガヤルドの累計販売台数が1万台を超えたというニュースが飛び込んできた。素晴らしい! スーパースターとスーパーカーは、見ているだけで明るい気持ちになる。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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