「第8回クラシックカーフェスティバル in 桐生」の会場から
2013.11.06 画像・写真2013年11月3日、群馬県桐生市にある「群馬大学理工学部 桐生キャンパス」において「第8回クラシックカーフェスティバル in 桐生」が開かれた。先日紹介した、自動車教習所を会場とする「クラシックカーフェスティバル in ところざわ」に続いて、これまた珍しい、大学のキャンパスで開催される旧車イベントである。1975年以前に生産されたナンバー付き車両という参加規定をクリアした車両は、展示車両が170台、桐生市内を巡るラリーの参加車両が60台、さらに実行委員の参加車両を合わせ、計260台以上が緑豊かなキャンパスに並んだ。加えて数年前から始まった特別展示車両として、なんと「ホンダコレクションホール」から第1期「ホンダF1」、それも2台が会場にやってきた。コレクションホールの車両が、こうしたローカルイベントに姿を現すのはおそらく初めてだろうが、おかげで以前から定評のある展示がいっそう充実したことは言うまでもない。そうした内容もさることながら、このイベントの最大の魅力は、会場を提供している群馬大学理工学部をはじめ、地域の自治体やメディア、そして住民が協力を惜しまず、旧車愛好家と一般市民が共に楽しんでいることにある。しかも年々人気は高まっており、前回で1万5000人を数えたという来場者数は、今回は2万人を超えたのではないかというほどの盛況ぶりだった。そんな会場から、リポーターの印象に残ったモデルとシーンを紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)

市街地あり、ワインディングロードありの、桐生市内約50kmのコースをルートマップにしたがって走るラリーには60台が参加。大勢のギャラリーに見送られて正門を出ていく、コンペティションマシン風に仕立てられた「メルセデス・ベンツ300SLロードスター」。
-
市街地あり、ワインディングロードありの、桐生市内約50kmのコースをルートマップにしたがって走るラリーには60台が参加。大勢のギャラリーに見送られて正門を出ていく、コンペティションマシン風に仕立てられた「メルセデス・ベンツ300SLロードスター」。
-
初代「フォード・マスタング」のなかで、いちばんカッコイイと思う1965年型のコンバーチブルに同乗させていただき、リポーターもラリーに参加した。突然のお願いにもかかわらず、快く受け入れてくださったオーナーの荻原さん、どうもありがとうございました!
-
ラリーコースの沿道では、いたるところで地元の人々が笑顔で手や小旗を振って応援してくれる。ドライバーやナビゲーターも、できる限り応える。
-
桐生は歴史のある街で、盛大に応援してくれる人々の後ろに見えるのは、県内でもっとも古い天明7年(1787年)創業という醤油醸造元「岡直三郎商店」。
-
スタートからゴールまで時間にして1時間半を超えたラリーコースには、こうした山坂道もあった。もう少し開催時期が遅かったら、紅葉がきれいだったことだろう(ただし紅葉見物のクルマが多くてラリーは無理かも)。前を行くのは、先頭から「スバル360」、「アルファ・ロメオ・スパイダー(デュエット)」、「アルファ・ロメオ・ジュニアZ」。
-
今回の目玉企画として特別展示された、ホンダコレクションホールの所有する2台のホンダF1。左は1.5リッター時代の最終戦である1965年メキシコGPで、リッチー・ギンサーのドライブによりホンダに初優勝をもたらした「RA273」。右が3リッター規格初年度の66年シーズンを走った「RA274」。そのほか珍しい「アルピーヌ」のシングルシーターや「ポルシェ904カレラGTS」などのレーシングカーも展示されていた。
-
1976年「ジャガーXJ6C」。有名なサルーンである初代「XJ」のクーペ版だが、これは当時のインポーターだった新東洋企業により正規輸入され、新車から親子2代で乗り継がれた、しかもフルオリジナルを保っている極上かつ希少な個体である。
-
ブリティッシュ・ライトウェイトスポーツがそろった一角に並んでいた2台の初代「ロータス・エリート」。1957年にデビューしたロータス初のクローズドボディーのロードカーで、FRPモノコックボディーにコベントリー・クライマックス製の直4 SOHC 1.2リッターを積む。
-
「練3」というシングルナンバーの付いた「オースチン・ヒーレー3000Mk II」。1953年に「オースチン・ヒーレー100」としてデビューした通称「ビッグ・ヒーレー」の発展型で、61年から63年まで作られた。直6 OHV 2.9リッターエンジンを搭載する。
-
共催に名を連ね、メンバーの多くが実行委員を務めている「ジャックヒストリックカークラブ(JHCC)」が英国車中心のクラブのためか、アトラクションとしてバグパイプ演奏が披露された。
-
1974年「シトロエンSM」。マセラティ製のV6 DOHC 2.7リッターエンジンを搭載、FF車で世界初となる最高速度200km/hオーバーを目標に開発された豪華高性能GT。ステアリングと連動するヘッドライトを持つ欧州仕様に対して、これはライトが固定式の北米仕様だが、この個体は輸入代理店だった西武自動車が販売した希少な正規輸入車(写真右下はテールに貼られたステッカー)。当時の日本の法規では、可動式ヘッドライトは不許可だったのだ。
-
珍しい1972年「シトロエン・アミ8」。「2CV」と「DS」の間に横たわる広いギャップを埋めるために、61年に登場したモデルが2CVをベースとする上級版の「アミ6」。アミ8はアミ6の特徴だったクリフカットのルーフをファストバックに改めた発展型で、69年にデビュー。2CVのそれを強化した空冷フラットツインの602ccエンジンを積む。
-
これも日本では希少だが、近年のイベントでよく見かける1967年「シムカ1200Sクーペ」。シムカは戦前にフィアット車のライセンス生産から始まったフランスのメーカーで、戦後もフィアットの影響が濃いモデルをラインナップしていた。1200Sクーペは直4 OHVクロスフローの1.2リッターエンジンをリアに積んだスポーツクーペである。
-
「ランチア・フルビア・クーペ」。ちょうど半世紀前の1963年にデビューした、ボクシーなベルリーナだった「フルビア」から派生したクーペ。ラリーで大活躍した「クーペHF」が有名だが、これは65年に登場した初期型で、オリジナルの状態がよく保たれている。1.2リッターのV4エンジンで前輪を駆動する。
-
1966年「ポルシェ911」。今年生誕50周年を迎えた911の原形となる、2リッター時代の「ナロー」。「バハマイエロー」という色名の、マスタードイエローのボディーカラーがキマっている。
-
左から「ディーノ246GTB」、「マツダ・コスモスポーツ」、「日産フェアレディ240Z-G」という、(オリジナルは)1960年代生まれのスポーツカーが3台並んでいた。クルマに詳しくない来場者の目には「同じ顔をした仲間」と映ったのではないか? とふと思った。
-
1974年「マセラティ・カムシン」。初代「ギブリ」とそれをベースにした「インディ」の後継モデルとして72年にデビューした2+2のグランツーリスモ。マルチェロ・ガンディーニが手がけたボディーのフロントにV8 DOHC 4.9リッターエンジンを積む。
-
1/1のティントイのような「ナッシュ・メトロポリタン」。英国オースチンの工場で生産され、大西洋を渡ってアメリカン・モータースのナッシュのディーラーで1954年から62年まで販売された2座オープン。1.2/1.5リッター直4エンジンをはじめメカニカルコンポーネンツは「オースチンA40/50」から流用していた。
-
1971年「キャデラック・クーペ・ドヴィル」。全長5.7m、全幅2mを超える巨大な2ドアハードトップ・ボディーに7.7リッターのV8エンジンを積んだ最高級パーソナルカー。見たところ内外装ともフルオリジナルで、コンディションもすばらしい。
-
子供に人気を博していたアトラクション。コースも走らせるモデルカーもすべて木製で、動力は重力のみという「MOKU1-GP」。
-
御料車の「日産プリンス・ロイヤル」に倣って「ロイヤル・ルック」と呼んだ、縦配置のデュアルヘッドライトが特徴の通称「タテグロ」こと「日産グロリア」が2台並んでいた。右は1967年に登場した前期型で、左は69年に2度目のマイナーチェンジを受けた後期型。エンジンは直6 SOHC 2リッターだが、前者はプリンス製のG7型で、後者は日産製のL20型となる。どちらもオリジナルの状態が保たれており、美しい。
-
新車以来とおぼしき「群5」のシングルナンバーを付けた「トヨタ1600GT5」。「コロナ・ハードトップ」のボディーに直4 DOHC 1.6リッターエンジンを積んだモデルで、1967年に登場、レースでも活躍した。1600GT5の「5」とは「トヨタ2000GT」と共通の5段ギアボックスを備えているという意味で、4段MT仕様は「1600GT4」。
-
1973年「三菱ランサー1600GSR」。軽量ボディーによく回る直4 SOHCクロスフロー1.6リッターのサターンユニットを搭載、ラリーで大活躍した型式名A73こと初代ランサーのホットモデル。ラリー仕様に仕立てられたこの個体は、11月8日~10日に軽井沢をスタート/ゴール地点として開かれる「レジェンド・オブ・ザ・ラリー2013」に、篠塚建次郎氏のドライブで出場するという。
-
これまた新車以来の「群5」のシングルナンバーの付いた1969年「ホンダ1300 99S」。DDAC(二重空冷)という前代未聞の特殊な空冷エンジンを積んだ、ホンダ初の量産小型セダン。ほぼフルオリジナルを保ったこの個体は4連キャブレターを備え、世界的に見ても1.3リッター級最強の115psを誇った高性能版で、速いことは速いが、曲がらない直線番長だった。
-
二輪も何台か出展されていたが、これはまるで新車のような輝きを放っていた1969年「ホンダ・ドリームCB750Four」。「K0」と呼ばれる初期型のなかでも、マニアの間で珍重される「砂型」こと砂型鋳造のクランクケースを持つ最初期型である。先の「ホンダ1300」と同じ年にリリースされ、2車とも大いに話題を呼んだが、あちらは大失敗作、こちらは大ヒット作と明暗を分けた。
-
イベントは午後3時で終了、参加車両はラリーのスタート時と同様に大勢のギャラリーに見送られながら、パレード形式で正門から退場していく。これは会場周辺に設けられた見学者用駐車場と会場をシャトルしていた「ニッサンU690型ボンネットバス」。1959年に登場、日産ディーゼル製3.7リッターの2ストローク3気筒ディーゼルエンジンを積む。
-
1951年「ベントレー・マークⅣ」。高級車に似合わないモディファイが施されているが、それもそのはずで、今年の「北京~パリ大陸横断ラリー」で完走(33日間で1万2247km)した車両。4.3リッターの直6エンジンを積んでいる。
-
年季の入った「いすゞ・ベレット1600GT」。1964年秋に最初のマイナーチェンジが施された、マニアが呼ぶところの2型で、希少な存在である。フロントのウインカーレンズは後のモデル用に替えられている。
-
1974年「フィアットX1/9」。当時のインポーターだったロイヤルモータースが正規輸入した、おそらく最初のロットのうちの一台で、塗装までオリジナルというワンオーナー車。
-
正門を出たところでしばし渋滞していた車列のなかに、クルマ全体から楽しさを発散しているような「スバル360」を発見。たくさんの笑顔に出会った一日の最後を、とびきりのスマイルで締めくくってくれた。