メルセデス・ベンツE220d(FR/9AT)
最先端へようこそ 2016.03.31 試乗記 フルモデルチェンジを受けた「メルセデス・ベンツEクラス」。その中核モデルである「E220d」に試乗した。オートノマスドライブ(自動運転)の実現に向けて、さまざまな新機軸が投入された新型は、われわれにいかなる運転体験をもたらしてくれるのだろうか。“オートノマス”を大幅強化
W213型となる新しいEクラス。その技術的なトピックは枚挙にいとまがない。が、最も象徴的なのは先進の運転支援システム、ADASの充実ぶりにあるだろう。それをもってメルセデスは自ら、このモデルに「マスターピース・オブ・インテリジェンス」というキャッチフレーズを用いている。ベスト・オア・ナッシングが作る知の傑作。自ら掲げたハードルはむちゃくちゃに高い。
が、ドライブパイロットと名付けられた装備の数々は、さすがにその自信をうかがわせるにふさわしいものだ。ステレオマルチパーパスカメラによる映像認識機能はその視野を拡大。電動パワーステアリングとESPの片側ブレーキ介入を併用するレーンキープアシストは、前車の走行軌跡を認識しながら、白線の敷設環境が悪い場面でも追従を確実なものにするステアリングパイロットへと進化している。また、クルーズコントロール使用時は、後側方のレーダー測定によるブラインドスポットアシストの情報を元に、ウインカーと連動して車線変更を安全に完了させるアクティブレーンチェンジアシストも採用。前方レーダー情報を元に自主規制速度である210km/hまでの完全追従を可能としたディストロニックプラス、カメラで認識した速度標識に連動して巡航速度を自動調整するスピードリミットパイロットと合わせて、オートノマス的な機能が大幅に強化されている。
並行して、緊急停止・回避系の機能も以前から大きく進化を遂げた。交差点などで前方を横切る歩行者や車両等の認識・判定も可能となったアクティブブレーキアシストは、渋滞時の対前方車両であれば100km/h以内での緊急完全停止にも対応。歩行者に対しては単に止まるだけではなく、周囲の状況に応じてステアリングによる衝突回避動作を補助する回避ステアリングアシストも新たに加わるなど、その内容は現在メルセデスが実装するものとして最先端にある。
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まずは2リッターが上陸
外観上では「Sクラス」や、特に「Cクラス」との連続性を強く打ち出した新型Eクラスにおいて、その内部のグラフィックが識別点のひとつとなるであろうヘッドライト、それにはオプションで、片側84個のLEDを電子制御しながら、対向車や歩行者、標識などに対しての個別配光を実現するマルチビームLEDヘッドライトが採用された。また、近年クローズアップされる機会の少ないパッシブセーフティーに関しても、側面衝突の回避ができないと判断した際に、シートのサイドサポート部に内包されたエアチャンバーを瞬時に膨らませることで乗員を衝突部位から遠ざけるプレセーフ・インパルスサイドや、衝突直前には身体的反応を促す干渉信号をオーディオシステムから放ち、衝撃音による耳のダメージを抑えるプレセーフ・サウンドなど、メルセデス独自の知見からなる新たなデバイスが投入されている。その他、手持ちのスマートフォンを介してコントロールするリモートパーキングやデジタルカーキーなど、デジタライズされた最新の体験も新型Eクラスには盛り込まれているが、これらは電波法の違いもあり、日本仕様に盛り込まれるかは微妙なところだという。
新型Eクラスに搭載されるパワートレインは当初、ガソリンが2リッター4気筒直噴ターボの「E200」と、ディーゼルは新開発の2リッター4気筒直噴ターボの「E220d」という2種類となる。追って3リッターV6直噴ターボの「E400」や、同じくディーゼルの「E350d」、さらに2リッター4気筒直噴ターボにモーターを組み合わせた「E350e」などの追加が予定されるが、日本仕様は当面、E200とE220dでラインナップが構成される予定だ。トランスミッションはいずれのエンジンにも9Gトロニックが組み合わせられる。
新しいOM654型ディーゼルユニットはナノスライドと呼ばれる新開発のスリーブコーティングが施されたシリンダーを持ち、ボアピッチを従来比4mm縮めたほか、ヘッドとクランクケースにはアルミを用いるなど、うわさされる直6ユニットの復活も十分考えられるコンパクト化を実現した。さらに触媒、DPF、尿素SCRと排ガス浄化デバイスをエンジン側面にまとめてのレイアウトを実現しており、生産性やパッケージにもメリットをもたらしている。その出力は195psとガソリンエンジンの184psを上回り、9Gトロニックとの組み合わせによる0-100km/h加速は7.3秒と、動力性能は十分以上といえるもの。一方で燃費は欧州複合モードで3.9リッター/100km(約25.6km/リッター)、CO2排出量は102g/kmとクラス最良のパフォーマンスだ。
速さも快適性も十二分
試乗車は生産立ち上がりの関係からE220dが中心となったが、そのぶん新しいディーゼルエンジンの進化はしっかり感じ取ることができた。何より変わったと思わせるのは、低圧縮化による回転フィーリングの軽さや、音・振動要素が軽減されていることだろう。とはいえ、5000rpmオーバーのレッドゾーンまでブン回るほどのスポーティネスは持たされていないが、そのぶんを補えるのは、3000rpm以下の日常的な使用域で発せられる十分な力強さを優しく伝えるメルセデスらしいスロットル開度や変速マネジメントの設定のうまさだ。同様に、ブレーキやステアリングのゲインの立ち上がり方もCクラスよりは一段なめされた感があり、マルチチャンバー式を採用したエアサスとの組み合わせでは時にSクラスにも迫るゆったりとした乗り味を供してくれる。総合的な動力性能にまったく不満はなく、さらに改善された燃費も考慮すれば、日本においても主力のグレードとなる可能性は高そうだ。
ハイスピードのハンドリングに関してはクローズドコースを利用して、E400の4MATICというやや変則的なモデルで試すこととなったが、その基本特性もまた、古くからのファンもメルセデスらしいと納得できそうな仕上がりだった。ロール量はやや多めながら舵(だ)の増し切りにもクルマは穏やかに応答し、最終的にはじわじわとアンダーに寄っていく。操舵(そうだ)の初期応答にかったるさはなくも、アジリティーを意識した昨今のハンドリングキャラクターよりはわずかながらルーズな側に戻しているように感じられたのは偶然ではないだろう。そして試乗車は可変ダンピングシステムを持つコイルサスが装着されていたが、取り付け路などで感触をみるに、常用域での乗り心地もエアサスに対する見劣りは少なそうではある。
自動運転はすぐそこに
それでも何より、強烈な進化が感じ取れたのはやはりADAS系の装備の数々だ。進化したディストロニックに加えてレーンチェンジアシストはより積極的に操舵介入するようになり、走行は個人の責任とはいえ、高速道路では事実上の自動運転とも受け取れる巡航が実現している。アクティブレーンチェンジアシストはウインカーを出してから2、3秒後より操舵開始と、それを苦としないドライバーにとってはまどろっこしさも感じるだろうが、運転が不得手なドライバーにとっては有効なデバイスとなるだろう。
感心するのはこれら装備の作動感が非常にナチュラルにまとめられていることだ。例えば車線のキープや変更では操舵の始めと終わりをスローにしてGをゆっくりと立ち上げるようなチューニングがなされるほか、100km/hからの緊急制動でさえブレーキを3段階に強めていき、ドライバーの気づきを促しながら身体的負担を軽減するなど、デジタル的なドライさが極力和らげられた制御アルゴリズムを実現している。こればかりは実地での膨大な走りこみがなければ得られないノウハウゆえ、メルセデスがこの分野において相当の実績を積みつつあることが新型Eクラスからは透けて見えた。
最先端のドライブ体験を約束するこのクルマ、日本への上陸は2016年の年央が予定されているという。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE220d
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4923×1852×1468mm
ホイールベース:2939mm
車重:1680kg(EU)
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:194ps(143kW)/3800rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)205/65R16/(後)205/65R16
燃費:3.9~4.3リッター/100km(約23.3~25.6km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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