スズキ・ワゴンRスティングレー ハイブリッドT(FF/CVT)/ワゴンRハイブリッドFX(FF/CVT)/ワゴンRハイブリッドFZ(FF/CVT)
広さと燃費だけじゃない 2017.02.24 試乗記 「スズキ・ワゴンR」がフルモデルチェンジ! 3つの“顔”が用意されたエクステリアデザインや、マイルドハイブリッドシステムの採用、軽自動車で初となるヘッドアップディスプレイの搭載など、トピックス満載で登場した“6代目”の使い勝手を報告する。デビューから四半世紀で6代目に
1993年のデビューからもうすぐ四半世紀。ワゴンRの累計販売台数は約440万台に達し、現存するのは約280万台だという。安いけど狭くてショボいのは当たり前と思われていた軽自動車に革命を起こしたモデルである。規格の中で唯一拡張できる縦方向に着目して広い室内スペースを実現したハイトワゴンは、すっかり軽自動車のスタンダードとなった。
最近ではさらに背の高いスーパーハイトワゴンに人気が集まっている。昨年の販売台数を見ると、ワゴンRの属するハイトワゴンが32.6%なのに対し、スーパーハイトワゴンは39.4%なのだ。「ダイハツ・タント」や「ホンダN-BOX」は確かに街でよく目にする。スズキにも「スペーシア」があって主力商品に育ちつつあるが、それもワゴンRをもとにした車種。今回6代目となったワゴンRは、次期スペーシアのベースともなるわけで、ラインナップのど真ん中に位置するモデルなのだ。
このジャンルで商品力を左右するのは、室内空間の広さと利便性、そして燃費である。もちろんデザインも重要な要素だ。最近では軽自動車でも先進安全技術に対する要望が高まっている。新型ワゴンRは、すべての面での進化が追求されているという。
従来どおり、ワゴンRと「ワゴンRスティングレー」の2車種が用意される。穏やかで親しみやすいデザインのワゴンR、いかつい顔つきのワゴンRスティングレーというように、はっきりした色分けがある。ワゴンRのフロントマスクは2タイプあり、ベーシックな「FA」と「ハイブリッドFX」が四角いヘッドランプ。上級グレードの「ハイブリッドFZ」は水平基調の2段に分けられていて、スポーティーなイメージを強調している。
マイルドハイブリッドでEV走行が可能に
ワゴンRスティングレーはまったくテイストが異なる。テーマは「ストロング」ということで、力強さを前面に押し出す。タテ型のLEDヘッドランプはキャデラック似。バッファローの角のような形状だと思ったら、イメージビジュアルに牛が使われていた。スティングレーは魚のエイを意味する言葉のはずだが、ハイトワゴンだから平べったくはない。
大きな存在感のグリルはブラック塗装とメッキによって威圧感を高める。スティングレーのボディーカラーはすべて濃色で、ワゴンRに追加された新色サニーイエローメタリックや、リフレクティブオレンジメタリックのような淡くて優しげな色は選べない。新色のブレイブカーキパールは、このモデルの性格を明確に表している。光が当たるとカーキというよりゴールドのようなギラツキを見せ、黒っぽく陰になった部分との対比が、迫力とすごみを生む。このクルマのユーザーとなる層の好みを正確にとらえたセレクトで、人気を呼びそうだ。
エンジンは自然吸気とターボの2本立てで、スティングレーの最高グレードだけにターボが与えられる。エントリーグレードを除くほとんどのモデルにマイルドハイブリッドシステムが採用されている。先代では「S-エネチャージ」と呼ばれていたテクノロジーの発展形だ。モーター機能付き発電機(ISG)を備え、駆動力を供給する。S-エネチャージが加速時のモーターアシスト機能を持っていたのに加え、発進時のEV走行が可能になった。
モーターのみで駆動するのは、クリープ走行時に限られる。ブレーキから足を離すと10秒間だけEV状態になる設定だ。バッテリーに十分な電力が蓄えられていることが条件になる。メーターに示される目盛りが2つの時に試すと、EV走行にはならなかった。モーター走行の時も、アクセルペダルにわずかでも触れるとエンジン走行に戻ってしまう。
加速時にもモーターアシストが働いてエンジンをサポートする。作動時間は最大で30秒。最高速を高めるためではなく、早く巡航速度に到達するのを助けるシステムである。こちらも電池の残量によって作動が左右され、モーターアシストが効く場面はそれほど多くはなかった。
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三角形を基本構造とするハーテクト
新プラットフォームの採用も重要なトピックである。ハーテクトと名付けられた技術で、従来とはアンダーボディーの形状が大きく異なる。いわゆるハシゴ型だったのが、骨格を最短距離でなめらかにつなぐ構造に変わっている。発想を転換し、四角形ではなく三角形を基本とした構造を取り入れたのだ。補強パーツを減らすことができ、剛性を向上させるとともに軽量化を実現したという。
新プラットフォームというが、実はハーテクトは2014年に発売された「アルト」にも使われている。軽自動車だけでなく、「スイフト」でもハーテクトの採用がアピールされていた。スズキの次世代プラットフォームに、ようやく名前が付けられたということなのだ。昨年「イグニス」に試乗した時、せっかくの新プラットフォームなのだから名前をつけてアピールしたほうがいいのではないかと書いた。いきなり名前が付いてエンジニアは驚いたそうだが、ユーザーにわかりやすく伝えるのは大切なことだ。
ハーテクトの恩恵で、約20kgの軽量化を実現したという。アルトは60kg、スイフトは100kg軽量化したということだったので、インパクトには欠ける。ただ、アルトやスイフトは前世代モデルとの比較で、数字が大きくなっていた。もともと40~50kg軽量化してからの20kgはかなり頑張った結果なのだ。
軽量化には超高張力鋼板の使用範囲を広げたことも貢献している。先代の8%から17%に増えたという。軽量化は運動性能を向上させるとともに燃費にも高影響を与える。ワゴンRの最良燃費モデルで33.4km/リッター(JC08モード)を実現し、クラス1位の数字となった。コンマいくつの数字にあまり意味があるとは思えないが、販売店ではやはりわかりやすい指標があったほうが売りやすいということらしい。
あの高級車より優秀な傘収納
燃費と並んで技術陣にプレッシャーが与えられるのが室内空間の広さだ。軽自動車の規格が変わらない限りもう拡大の余地はなさそうに思えるが、今回もしっかり結果を出してきた。室内長は285mm広がって2450mmとなり、前後の乗員間の距離は35mm拡大した。リアシートは160mmスライドできるようになっていて、荷物を多く載せたい時は前に移動させる。
最大限に前に出した状態で座ってみると、前席を後ろに動かしていたにもかかわらず、膝の前には15cmもの余裕があった。後ろにずらせば、うっかりすると30cmもの空間ができる。これ以上広大な空間があっても活用できるとは到底思えない。そろそろ数字の競争は終わりにしてもいい時期にきているが、エンジニアは要求されると応えてしまうのだ。細かい数字で販売が左右される限り、この状況は続いてしまう。
ユーティリティー関連で一番感心したのは、後席ドアに仕込まれたアンブレラホルダーである。雨の日の傘はクルマの中に居場所がない。後席の床に置かれることが多いが、水がしたたってぬれてしまうのが困る。ドアに縦に収納するアイデアはシンプルだが有用だ。しずくは下に落ちて車外に排出されるので、床を汚さないで済む。確かロールス・ロイスにも傘収納があったが、横方向に入れるタイプだった。ワゴンRの方法のほうが優れている。
短い試乗でも、ボディーのしっかり感は確認することができた。後席でも乗り心地は悪くない。おそらくハーテクトの恩恵なのだろう。スペーシアでも使えるようにマージンを取った設計なので、ワゴンRには十分過ぎるシャシー性能なのだ。
このジャンルのクルマが使われる事情を考えると、自然吸気エンジンで十分である。ちょい乗りや買い物目的なら、不満はないだろう。ただ、ドライバー目線ではターボのアドバンテージは大きかった。以前は音がうるさいだけで動力性能はたいしたことがないというのがお決まりだったが、最近の軽ターボは実用的で運転しやすい。高速道路でも流れの中で気持ちよく走ることができた。
軽自動車初採用というヘッドアップディスプレイはドライバーの視線移動を減らし、確実に安全性を高める。デュアルセンサーブレーキサポートなど、先進安全技術も充実した。広さや燃費も大切だが、新型ワゴンRにはほかにも評価すべき進化がある。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
スズキ・ワゴンRスティングレー ハイブリッドT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1650mm
ホイールベース:2460mm
車重:800kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64ps(47kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:10.0kgm(98Nm)/3000rpm
モーター最大出力:3.1ps(2.3kW)/1000rpm
モーター最大トルク:5.1kgm(50Nm)/100rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:28.4km/リッター(JC08モード)
価格:165万8880円/テスト車=186万2838円
オプション装備:ボディーカラー<ブレイブカーキパール>(2万1600円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション<メモリーナビゲーション、TV用ガラスアンテナ、ハンズフリーマイク、外部端子、全方位モニター、フロント2ツイーター&リア2スピーカー>(14万0400円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万0142円)/ETC車載器(2万1816円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:366km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スズキ・ワゴンRハイブリッドFX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1650mm
ホイールベース:2460mm
車重:770kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:52ps(38kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:6.1kgm(60Nm)/4000rpm
モーター最大出力:3.1ps(2.3kW)/1000rpm
モーター最大トルク:5.1kgm(50Nm)/100rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:33.4km/リッター(JC08モード)
価格:117万7200円/テスト車=145万7838円
オプション装備:セーフティーパッケージ<デュアルセンサーブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシスト機能、ヘッドアップディスプレイ、オートライトシステム、キーレスプッシュスタートシステム>(9万6120円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション<メモリーナビゲーション、TV用ガラスアンテナ、ハンズフリーマイク、外部端子、全方位モニター、フロント2ツイーター&リア2スピーカー、ステアリングオーディオスイッチ、ステアリングガーニッシュ>(14万2560円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万0142円)/ETC車載器(2万1816円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:404km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スズキ・ワゴンRハイブリッドFZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1650mm
ホイールベース:2460mm
車重:790kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:52ps(38kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:6.1kgm(60Nm)/4000rpm
モーター最大出力:3.1ps(2.3kW)/1000rpm
モーター最大トルク:5.1kgm(50Nm)/100rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:33.4km/リッター(JC08モード)
価格:135万円/テスト車=159万1758円
オプション装備:セーフティーパッケージ<デュアルセンサーブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシスト機能、ヘッドアップディスプレイ>(5万9400円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション<メモリーナビゲーション、TV用ガラスアンテナ、ハンズフリーマイク、外部端子、全方位モニター、フロント2ツイーター&リア2スピーカー>(14万0400円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万0142円)/ETC車載器(2万1816円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:383km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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