【F1 2017 続報】第13戦イタリアGP「ハミルトン、首位に立つ」
2017.09.04 自動車ニュース![]() |
2017年9月3日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第13戦イタリアGP。前戦ベルギーGPでは、スタートからゴールまでルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルが接近戦を繰り広げたが、イタリアでもその激戦が再現されるのか注目が集まった。
![]() |
![]() |
![]() |
フェラーリに勝算はあるか
ベルギーとイタリア――高速コースを得意とするメルセデスは、シーズン後半の主導権を握るために、このハイスピード2連戦を何としても取らなければならなかった。
その初戦のベルギーGPでは、メルセデスのルイス・ハミルトンが狙い通りの速さを発揮しポール・トゥ・ウィンを達成。スパの表彰台で何度も拳を振り上げ喜びを表し、ベッテルに7点差と迫った。しかし2位に終わったセバスチャン・ベッテルが終始2秒と離れず先頭のメルセデスを追い回したことからすれば、フェラーリも決して負けてはいなかった。
コースの約80%をフルスロットルで駆け抜けるというモンツァでのイタリアGPは、レース前から強心臓メルセデスのテリトリーとされていたが、ベルギーでの速さを見るにつけ、ひょっとすると地元で2010年以来の勝利を目指すフェラーリにも勝算があるかもと、跳ね馬の熱狂的なファン「ティフォシ」たちの心に淡い期待も芽生えたかもしれない。
しかしベルギーでフェラーリが速かったのは、ターンが続く山間セクション。ショートホイールベースゆえの優れた回頭性としっかりとしたダウンフォースを武器とする「SF70H」の真骨頂ともいえたが、モンツァではそんな区間は皆無だ。イタリアGPはフェラーリの真価が問われる一戦となった。
一方のメルセデス&ハミルトン陣営からすれば、今季誰もなし得ていなかった連勝をモンツァで飾った暁には、ポイントリーダーの座に手が届くことになる。勢いをわが身に引き寄せ、残り7戦でさらにライバルを突き放したいところだった。
![]() |
![]() |
ハミルトン、シューマッハーを抜き歴代ポール記録樹立
金曜日のフリー走行1回目、2回目ではいずれもメルセデス1-2、フェラーリ3-4と大方の予想通りの展開。それが翌土曜日の3回目になると雨が降り、セッションの時間が大幅に削られ、各車ほとんど走り込めずに終わった。
予選が始まっても水煙舞う走行困難なコンディションは引き継がれ、Q1途中にハースのロメ・グロジャンがクラッシュしたのをきっかけに、セッションはおよそ2時間半にわたって中断を余儀なくされた。
再開されると、時折強まる雨脚に、各ドライバーはウエットか、浅溝のインターミディエイトかという難しいタイヤ選択を迫られた。そんな状況でQ3トップタイムをマークしたのはハミルトン。2戦連続となる今季8回目のポールポジションは、ミハエル・シューマッハーが保持していた最多ポールポジションレコードを抜く通算69回目、大記録の樹立を意味していた。
悪天候を味方につけたレッドブル勢が続き、マックス・フェルスタッペン2位、ダニエル・リカルドは3位につけたが、両車ともエンジンやギアボックス交換によりグリッド降格ペナルティーを受けることが決まっていた。ウィリアムズ駆る18歳の新人ランス・ストロールが2番グリッドに繰り上がり、フロントローに並んだ歴代最年少ドライバー記録を更新した。
フォースインディアのエステバン・オコンが3番グリッド、メルセデスのバルテリ・ボッタス4番グリッドときて、キミ・ライコネン5番グリッド、ベッテルは6番グリッドに並んだ。フェラーリ勢はハミルトンとの間に「メルセデス・パワー軍団」を挟む苦しいポジションに追いやられた。
7番グリッドにつけたウィリアムズのフェリッペ・マッサに続いたのは、トロロッソのダニール・クビアト、ハースのケビン・マグヌッセン、そしてトップ10最後はフォースインディアのセルジオ・ペレスだった。
![]() |
![]() |
早々にメルセデス1-2、ベッテルは3位に
決勝日は打って変わって快晴。53周レースのスタートでは、ポールシッターのハミルトンを先頭に、ひとつ順位を上げたオコンが2位で続き、3位ストロール、4位にボッタスを抜いたライコネン、5位ボッタス、そして6位ベッテルと若干の順位変動が起きた。
早々にメルセデスの一角を食ったフェラーリのライコネンだったが、すぐさまボッタスにオーバーテイクされてしまう。さらにボッタスは4周目までに2番手にポジションアップを果たし、あっさりとメルセデス1-2フォーメーションが完成してしまった。
3位オコンの真後ろには、4位まで挽回していたベッテル。フェラーリのエースは、負けてばかりはいられないと8周目にフォースインディアをパスし、今度は6秒先行していたメルセデス勢に照準を合わせたいところだった。しかしシルバーのマシンは、時には1秒も速く、差はジワジワと広がり、15周を過ぎると2位ボッタスと3位ベッテルの間には10秒ものギャップが築かれていた。
僅差の戦いを繰り広げていたのは4位オコン、5位ストロール、6位ライコネンの3台。16周目にライコネンが口火を切ってピットインし、スーパーソフトタイヤからソフトに替えると、続いてオコン、ストロールがそれにならい、結果ライコネンがストロールの前に出た。そして26周目、メインストレートでライコネンはオコンを抜き去った。
![]() |
![]() |
![]() |
16番手スタートのリカルド、表彰台を目指す
その間、トップのハミルトンはといえば、僚友ボッタスを5秒後方に従えて、スタートタイヤのまま快調に周回を重ねていた。3位ベッテルは、ハミルトンからはるか20秒も後ろ。32周目にフェラーリはベッテルをピットに呼び、それを見届けたかのように翌周ハミルトン、続いてボッタスもニュータイヤに履き替えていった。このレースの優勝争いは、スタート直後に決していたようなものだった。
タイヤ交換が一巡すると、1位ハミルトン、4秒半後方に2位ボッタス、トップから27秒離されて3位ベッテル、そして4位ライコネンというオーダー。やがて2台目のフェラーリの背後に、最初のスティントをソフトタイヤで走り、速いスーパーソフトに履き替えたばかりの元気なリカルドが迫り、41周目、レッドブルはシケイン飛び込みでフェラーリをかわした。
やる気満々のリカルドの次の獲物は、12秒前方の3位ベッテルだ。ファステストラップを更新し、残り10周で8.5秒、残り5周で5.5秒とタイムを削り取っていったが、表彰台までにはあと少し時間が足りなかったようだ。
ハミルトンは今季初の2連勝を達成。2位ボッタスとともに、メルセデスはゴールまで電光石火のごとく駆け抜けていった。3位に終わったベッテルは、トップから36秒も遅れてチェッカードフラッグを受け惨敗。開幕以来守り続けたポイントリーダーの座もハミルトンに譲ることになった。
とはいえ、モンツァは極めて特殊なコースであり、ハミルトンのリードはわずか3点しかなく、そして今シーズンは残り7戦もある。次のシンガポールの市街地コースで、フェラーリのカウンターパンチさく裂となるかもしれないことを考えれば、勝負の行方はまだ分からないといっていい。
このレースを最後にヨーロッパに別れを告げたF1は、アジア、アメリカ大陸、そして最終戦アブダビへと続くフライアウェイへと旅立つ。第14戦シンガポールGPの決勝は、9月17日に行われる。
(文=bg)