スズキVストローム250(MR/6MT)
フレンドリーな怪鳥 2017.11.04 試乗記 元祖アドベンチャーバイクこと「スズキDR800」。その直系の子孫にあたる「スズキVストローム」シリーズに、250ccクラスの末弟「Vストローム250」が登場した。“怪鳥”の血を引く軽快な最新モデルのキャラクターを、ひとことで表すと……?Vストロームはアドベンチャー系なのか?
何かを説明するとき、わかりやすさというある種の親切心から○○系というくくり方をよくする。その線でいけば、スズキVストローム250は「アドベンチャー系に属する」と説くのがふさわしい。そのおかげで「なるほどねぇ」と、説明したほうもされたほうもそれとなく納得できる点で、○○系によるくくり方は誠に便利だ。
しかし、9分9厘はクルマ好きがご覧になっている『webCG』で、たまさかこの記事に漂着した方にすれば、「アドベンチャー系って何?」という話だろう。
それくらい〇〇系だのジャンルだのは、誤解を恐れずに言えばいい加減なものだ。聞けば音楽界におけるジャンル分けは、レコードショップが顧客サービスの一環として編み出した棚づくりが原点らしい。だからミュージシャン側にすれば、そんな意図はないのに勝手に『プログレッシブニュージャズファンクメローJ-POP』みたいな棚に自分の作品が放り込まれて困惑することも多いとか。
いや、『プログレッシブニュー……』はそれこそ今勝手に絞り出した名称だけど、訳知り顔が重宝がる○○系という説明は実に懐疑的で、ゆえに系だのジャンルだのを疑ってかかるところからVストロームの話をしようと思うのです。って、前置きが長過ぎるヤツの説明も怪しいものだけど……。
スズキが送り出した“怪鳥”の末裔
……ですが、なぜVストロームがアドベンチャー系と目されるか、まずはその理由を語らせてください。
2017年7月に発売されたVストローム250のプレスインフォメーションによると、そのデザインは1988年に発売された“DR-BIG”のDNAを継承した、シリーズ共通イメージのスタイリングらしい。シリーズとはまさしくVストローム系のことで、スズキの現行ラインナップには1000と650があり、そこに250が加わったことで3兄弟化が成立した。
DNAを継承したという“DR-BIG”とは、単気筒800㏄エンジンを搭載した大型モデル。まるでおとぎばなしを語るかのような「ファラオの怪鳥」というニックネームがついていた。その“DR-BIG”……正確には「DR800」が登場した80年代後半から90年代初頭は、「パリダカ」をはじめとするラリーレイドが注目され、各社が競うようにして長距離走行が可能な大型オフロードバイクを発売していた。スズキの場合はそれがDR800だった。
で、ここが大事なポイントなのだけど、訳知り顔の連中がこぞってアドベンチャー系の特徴とする、ヘッドライト前方に長く伸びるクチバシは、どうやらDR800が先鞭(せんべん)をつけたものだそうな。となると、「ファラオの怪鳥」は今日アドベンチャー系としてくくられるジャンルの始祖鳥的存在で、Vストロームはオリジナルの正常進化形になる。もちろん、系だのジャンルだのの区別の由来は常に「諸説あり」だが、いずれにせよVストロームが「怪鳥」の末裔(まつえい)なのは間違いない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
なんで○○系にくくろうとすんの?
ここからようやく、個体としてのVストローム250についてお話しします。
そんなわけでおっかなそうな怪鳥の血筋を引くVストロームだが、250に至ってはめちゃくちゃフレンドリー。セキセイインコのような親しみやすさがある。大排気量の兄貴たちとそっくりなフロントまわりやフューエルタンクはグラマラスなデザインだが、何より安堵(あんど)のため息が出るほどシート高が低い。さらにSOHC 2バルブの2気筒エンジンは、破綻とは無縁のおだやかさが特徴。それらを暴力的に論じれば、これのどこがアドベンチャー系なんだ? と弾劾することもできる。
しかし、だからなんで○○系にくくろうとすんの? という話なのである。あくまで個人的な見解だが、通勤通学等の実務的な用途において、二輪は125ccクラスまででおよそことが足りるはず。それ以上のサイズはすべて趣味的領域に属するわけで、何に乗ろうとも非日常的な冒険を楽しめる。そこで挑発的な、強いて言えば身の丈に合わないモンスターを選んでもいいし、あるいはパワーやスピードが低めでも毎日冒険に出掛けられる気軽さを備えた手乗りインコと暮らしてもいい。
それらに鑑みた上でVストローム250を推す理由とは、たたずまいだ。撮影場所近くの客船乗り場の駐車場で止め、トイレから戻ったとき、そこで待っていてくれた「怪鳥」ゆずりの存在感が実に頼もしかった。これまた強いて言えば、オオカミの血を引く犬が人間の相棒となってくれたような安心感。そういうフィーリングは、系やジャンルにとらわれるものではないのだと、これがいわゆるVストローム250の総論ですが、いかがでしょうか。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2150×880×1295mm
ホイールベース:1425mm
シート高:800mm
重量:188kg
エンジン:248cc水冷4ストローク2気筒SOHC 2バルブ
最高出力:24ps(18kW)/8000rpm
最大トルク:22Nm(2.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:39.0km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/31.6km/リッター(WMTCモード)
価格:57万0240円

田村 十七男
-
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.2 シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。
-
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】 2026.5.1 英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。
-
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.29 「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】 2026.4.28 往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
NEW
アルファ・ロメオ・ジュニア エレットリカ プレミアム(FWD)【試乗記】
2026.5.5試乗記アルファ・ロメオのコンパクトSUV「ジュニア」にラインナップする電気自動車「ジュニア エレットリカ プレミアム」に試乗。1973年型の「GT1600ジュニア」を所有していたかつてのアルフィスタは、最新のフル電動アルファに触れ、何を感じたのか。 -
NEW
“ウインカーのカチカチ音”は、どんな理由で決められているのか?
2026.5.5あの多田哲哉のクルマQ&Aウインカー(方向指示器)を使う際の作動音は、どんなクルマでも耳にする一方、よく聞くとブランドや車種によって差異がある。一体どんな根拠で選定されているのか、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタGRヤリス/GRカローラ/GRヤリスMORIZO RR プロトタイプ【試乗記】
2026.5.4試乗記進化を続ける「トヨタGRヤリス」と「GRカローラ」の、最新バージョンに試乗。硬派な4WDスポーツならではの、サスペンションチューニングの難しさを知るとともに、100台の限定モデル「GRヤリスMORIZO RR」に、そのひとつの回答を見いだすことができた。 -
業績不振は想定内!? 名門ポルシェはこの先どうなってしまうのか?
2026.5.4デイリーコラム2025年から思わしくない業績が続くポルシェ。BEVの不振やMRモデルの販売終了などがその一因といわれるが……。果たして、名門に未来はあるのか? 事情をよく知る西川 淳が、現状と今後の見通しについて解説する。 -
ランボルギーニ・テメラリオ(前編)
2026.5.3思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。「ウラカン」の後継にあたる“小さいほう”ではあるものの、プラグインハイブリッド車化によって最高出力920PSを手にしたミドシップスーパースポーツだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.5.2試乗記シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。









































