トヨタ・クラウン2.5 G(FR/CVT)/クラウン3.5 Gエグゼクティブ(FR/CVT)/クラウン2.0 RSアドバンス(FR/8AT)
やっぱり“いつかはクラウン” 2018.07.11 試乗記 先代まではオーナーの平均年齢が60歳を軽く超えていたという「トヨタ・クラウン」。このほど発売された新型には、ユーザーの若返りという使命が託された。40代半ばを超えたばかりのモータージャーナリスト塩見 智は、新型をどう評価する?オペレーターにいつでも“つながる”
最も印象的だったので見た目や動力性能についてよりも先に書くが、今度のクラウンはつながる。自分のクラウンをLINEの「友達」に設定し、自宅で目的地を書き込んでおくと、乗り込んだ時にはもう目的地がカーナビに設定されている。目的地まで現在のガソリン量で足りるかどうかなどをクラウン(にふんしたAI)とトークすることで知ることができるのだ。ちゃんとドアロックしたかどうか、ヘッドランプを消し忘れていないかどうかを、クルマを離れて確認することができる。さらにスイッチひとつでトヨタが独自に展開する「T-Connect」サービスのオペレーター(こっちは本物の人間)につながるので、目的地をセットしてもらったり、行きたいレストランの予約を代行してもらったりすることができる。これらはすべて車載通信機のDCMが全車に標準装備されているから可能なことだ。
楽をするためだけにつながるのではない。事故や急病によって自分の位置や状態を110番、あるいは119番通報するのが難しい場合、なんとか手を伸ばしてスイッチを押しさえすれば非常事態であることが位置情報とともにT-Connectサービスに伝わる。また、エアバッグが展開すると自動的にオペレーターへつながるとともに、車両が受けた衝撃の強さが一定以上のレベルに達していた場合には、ドクターヘリが現場へ向かう手続きも始まる。
ちなみに同じタイミングで登場した、クラウンよりもずっと価格が安い「カローラ スポーツ」にもほぼ同じ機能が全車標準装備される。いったい何人のオペレーターが365日24時間待機しているのだろうか。トヨタが時々見せる本気というやつだ。通信料は3年間無料。4年目以降は1万6000円+税/年。タッチパネルによる目的地入力から完全に解放されるためだけでも価値がある料金だと思う。
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コンセプトモデルがそのまま市販化
それにしても新型クラウンのスタイリングは悪くない。2017年秋の東京モーターショーに出展された6ライトのサイドウィンドウグラフィックが特徴的だったコンセプトモデルが、ほぼそのまま市販モデルとして登場した。稲妻のようだった旧型のフロントグリルは、新型ではその面影をほのかに残しながらもずっと理解しやすい形状となった。そのグリルが表現するように、ボディー全体が下へいくほどボリュームを増す台形プロポーションで、全体に踏ん張り感がある。ただし、クラウンの伝統であるナローな車幅は維持された。全幅1800mm。後述するが、新型は標準と「RS」の2系統に分かれている。標準が文字通り標準なのに対し、RSは大径タイヤをはじめ、あちこちスポーティーな加飾が施されている。“RS”は「レンシュポルト」でも「ロイヤルサルーン」でも「ロードセーリング」でも「ロッド・スチュワート」でもなく「ランナバウトスポーツ」を意味するという。かつて存在した「MR2」は確か「ミッドシップランナバウト」だった。ランナバウト好きだなトヨタ。
トヨタの最新のクルマづくりの哲学である「TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)」に基づいて開発された。これで開発されたクルマは「プリウス」「C-HR」「カムリ」など、総じて走りの面で高評価を得ているが、このクルマが用いたFR用のプラットフォームもその例に漏れずグッドハンドリングとコンフォートライドが高い次元でバランスされていた。歴代クラウン(といっても“観音開き”や“クジラ”の時代は知らないが)は、明確にコンフォートライドを重視、もっと言えば80km/h未満でのそれを重視した乗り味に仕立てられていた。だからこそ多くの人に愛されてきたいっぽうで、欧州プレミアムを好む層には敬遠されてきた。
ハンドリング性能は歴代最高
トヨタは欧州プレミアムとわたり合うためにレクサスというブランドを持つのだからクラウンは今まで通りでいいじゃないかという気もするが、彼らはそうは考えていない。「新しいのが出たんなら持ってきて」という感じの愛好者は、クラウンにとって、トヨタにとってこの上なくありがたいが、どんどん年をとり、彼らの好みに合わせれば合わせるほど新しい愛好者が増えにくいというジレンマに陥るのだ。新型はTNGAを用い、RSモデルを設定することで、そこからの脱却を図ったのだ。
端的に言えば若返りだ。伝統あるプレミアムブランドは必ずこういう悩みを抱える。キャデラックがFRに戻したり、メルセデス・ベンツがクーペ用フロントグリルをセダンにも採用したりと試行錯誤して若返りを図る。数世代前に「ゼロクラウン」と銘打ち「アスリート」モデルを設定したり若向きのスタイリングを採用したりしていたのを思い出す。あれで獲得した層も年をとったということか。
もちろん一気に顧客を総入れ替えするわけにはいかない。これまでのクラウンユーザーに乗り換えてもらいながら新規ユーザーを獲得しなければならない。その微妙な思惑がハンドリングに表れていて面白い。ダンパーの味付けは過去のどのクラウンよりもスポーティーだが、それでも路面からの入力はプチプチ緩衝材に包まれた状態でドライバーにお届けされるような感覚もある。RSの場合、18インチタイヤ&ホイールが標準装備されるほか、仕様によってはリアパフォーマンスダンパーが組み込まれるなど、より硬い方向にしつけられている。また、リニアソレノイドバルブが組み込まれたAVS(アダプティブバリアブルサスペンション)によって、足まわりの設定を変化させることができる。ただし、振れ幅はさほど大きくない。いろいろ書いたが過去最高にワインディングロードを気持ちよく走ることができるクラウンと言って差し支えないだろう。それは電子制御云々(うんぬん)よりもTNGAの勝利といった感が強い。従来のクラウンが好きな保守層には標準を、スタイリングを気に入って新たにクラウンを試そうという人にはRSをそれぞれオススメしたい。
3種のパワートレインは狙いが明確
パワートレインは「レクサスLS」に載る3.5リッターV6ハイブリッド、カムリに(横置きされて)載る2.5リッター直4ハイブリッド、そして以前からある2リッター直4ターボエンジンの3種類。ハイブリッド2種は組み合わせられるエンジンから想像する通りの性格の違いがある。V6ハイブリッドはシステム出力359psと相当パワフルで、エンジン音も勇ましく車内に入ってくる。10段階にステップが区切られたCVTはかなりスポーティーな性格で、モードによっては減速時に積極的にギアダウンして次の加速に備えるので、コーナーの連続で加速と減速を繰り返す場合に最高に気持ちいい。
直4ハイブリッドはおなじみのトヨタの「THS II」なのだが、ボディー剛性が高く、遮音のレベルも高いので、黒子に徹し悪目立ちしないという意味でパワートレインの存在感がない。実用上の力強さは十分だ。2リッターターボは8段ATと組み合わせられる。従来V6エンジンを搭載していたクルマの多くは今や直4ターボに換装されつつあり、そのほとんんどがV6よりも総合的な性能が高いが、クラウンもそう。3種のパワートレインは価格が違うだけでなくそれぞれに狙いが明確なので、全部試乗して好きなのを選べばよい。
新型クラウンはなかなかの力作だ。クルマとしてうまく方向転換しながら進化した。加えて各種の“つながる”性能は、新しいデジタルガジェットや新しいOSに対した時と同様のワクワクを感じさせてくれる。30代の頃を思い返すと、60代になったらクラウンではなく、「メルセデス・ベンツEクラス」や「BMW 5シリーズ」に乗ってやろうと考えていたような気がする。しかし40代後半にさしかかり、60代が想像できないほど遠い将来ではなくなった今、最新のクラウンを好ましく感じている自分がいる。60代になるかそのもう少し手前でクラウンに乗るのもいいなと思い始めた。これはきっとアレだ。年をとるとよく思えてくるという“NHK現象”の一種だ。NHKのところを「和食」とか「邦画」に置き換えてもらってもよい。要するに年をとった自分と若向きにつくられたクラウンがシンクロし始めたのだ。「いつかはクラウン」というのが秀逸なコピーだとあらためてわかる。
(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・クラウン2.5G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1800×1455mm
ホイールベース:2920mm
車重:1750kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:184ps(135kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3800-5400rpm
モーター最高出力:143ps(105kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
システム総合出力:226ps(166kW)
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:24.0km/リッター(JC08モード)、20.0km/リッター(WLTCモード)、17.2km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、20.8km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、20.9km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:562万1400円/テスト車=611万2260円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスガレナ>(5万4000円)/ITSコネクト(2万7000円)/パーキングサポートブレーキ<後方歩行者>+リアカメラディテクション+パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2<巻き込み警報付き>(12万5280円)/デジタルインナーミラー(4万3200円)/T-Connect SDナビゲーションシステム+トヨタプレミアムサウンドシステム<16スピーカー、12chオーディオアンプ>(10万1520円)/ETC2.0ユニット<VICS機能付き>(1万6200円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(4万2660円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(8万1000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:525km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・クラウン3.5 Gエグゼクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1800×1455mm
ホイールベース:2920mm
車重:1900kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:299ps(220kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:356Nm(36.3kgm)/5100rpm
モーター最高出力:180ps(132kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
システム総合出力:359ps(264kW)
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ブリヂストン・レグノGR001)
燃費:17.8km/リッター(JC08モード)、16.0km/リッター(WLTCモード)、12.7km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、16.4km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、17.7km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:718万7400円/テスト車=766万0440円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスシルバー>(5万4000円)/ITSコネクト(2万7000円)/アクセサリーコンセント<AC100・1500w、コンセント1個、非常時給電システム付き>(4万3200円)パーキングサポートブレーキ<後方歩行者>+リアカメラディテクション+パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2<巻き込み警報付き>(12万5280円)/T-Connect SDナビゲーションシステム+トヨタプレミアムサウンドシステム<16スピーカー、12chオーディオアンプ>(10万1520円)/ETC2.0ユニット<VICS機能付き>(1万6200円) ※以下、販売店オプション /フロアマット<伝統工芸西陣織>(10万5840円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:928km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・クラウン2.0 RSアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1800×1455mm
ホイールベース:2920mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5200-5800rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1650-4400rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ブリヂストン・レグノGR001)
燃費:12.8km/リッター(JC08モード)、12.4km/リッター(WLTCモード)、8.7km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、12.6km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、15.1km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:559万4400円/テスト車=633万9060円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万7800円)/レザーシートパッケージ<本革シート表皮、合成皮革巻きオーナメント表皮、前席シートベンチレーション>(23万7600円)/ITSコネクト(2万7000円)/電動リアサンシェード(3万2400円)/パーキングサポートブレーキ<後方歩行者>+リアカメラディテクション+パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2<巻き込み警報付き>(12万5280円)/デジタルインナーミラー(4万3200円)/T-Connect SDナビゲーションシステム+トヨタプレミアムサウンドシステム<16スピーカー、12chオーディオアンプ>(10万1520円)/ETC2.0ユニット<VICS機能付き>(1万6200円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(4万2660円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(8万1000円)
テスト車の年式:--
テスト開始時の走行距離:764km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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