ランドローバー・レンジローバー イヴォークR-DYNAMIC S P250(4WD/9AT)/レンジローバー イヴォークS D240(4WD/9AT)
頼れる2代目 2019.04.05 試乗記 ランドローバーのベストセラーSUV「レンジローバー イヴォーク」がフルモデルチェンジ。将来の電動化も見据えたという新たなプラットフォームを手にした新型は、どのような進化を遂げたのだろうか。ギリシャ・アテネで試乗した。フロントマスクはヴェラール顔に
2008年のデトロイトモーターショーにランドローバーが出展したコンセプトカーの「LRX」がレンジローバー イヴォークの起源だ。今で言うクーペSUVなのだが、リアに向かってルーフラインが下がっていくのに対し、ショルダーラインは上がっていくスタイリングは美しいだけでなく新鮮で、皆が息をのんだ。3年後の2011年にレンジローバー イヴォークとしてほぼそのままのカタチで市販された。当然大ヒット。ランドローバーとして最速で80万台を販売したクルマとなった。
7年たった2019年にフルモデルチェンジした。「いいから早く新型の画像を見せろ」とおっしゃるかもしれないが、今あなたが見ているのが新型の画像だ。ルーフラインが下がってショルダーラインが上がるモチーフはそのままだが、しっかり見れば違うことがわかるはず。フロントマスクは「ヴェラール」に端を発する新世代レンジローバー顔だ。リアは左右のコンビランプをブラックのガーニッシュが結ぶデザインとなった。
全体に凹凸が減ってつるんとフラッシュサーフェス化された。これについてチーフデザイナーのジェリー・マクガバン氏は「リダクショニズムにのっとったデザイン」だと表現していた。いうなれば”引き算の美学”を説明する途中、レクサスの「RX」や「LS」、「トヨタ・プリウス」のディテール画像と、同じ角度のイヴォークの画像を並べて表示し、その度に「わかるだろ?」と言わんばかりにしばらく黙った。現場には何色かの実車があったが、カタログなどに使われるいわゆるコミュニケーションカラーの「ノリータグレー」が最も新型の魅力を引き出しているように見えた。
とはいえヒットモデルのフルモデルチェンジでは典型的な、超キープコンセプトのスタイリングだ。サイズも初代とほとんど変わらない。ホイールベースは21mm延びた。これはそのままリアシートのニールーム拡大につながっている。リアのマルチリンクサスの設計を見直すことでラゲッジスペースが初代に対してわずかに拡大した。
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マイルドハイブリッドシステムを搭載
中身は大きく刷新された。具体的にはドアヒンジ以外はすべて新設計だそうだ。まずランドローバーが「PTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)」と呼ぶ新世代プラットフォームが用いられた。後述する電動化に備えるのが最大の目的だ。将来、イヴォーク以外に次期型の「ランドローバー・ディスカバリー スポーツ」や「ジャガーEペース」も用いることになるほか、タタブランドにも活用されるようだ。
パワートレインも新しい。今回試乗したのは2種類。ガソリン仕様は「P250」というタイプで、最高出力249ps、最大トルク365Nmの2リッター直4ターボエンジンに、48Vバッテリーと出力18kWの「BiSG(ベルト・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」が組み合わされる。トランスミッションは従来と同じ9段AT。メルセデス・ベンツが「Cクラス」や「Eクラス」で採用する「BSG」というメカニズムに似ている。通常よりも容量の大きいスターターモーターが減速時にジェネレーターとして機能して電力を回生する。回生した電力はバッテリーに蓄えられ、発進時にその電力を使ってスターターモーターが加速をアシストする。ランドローバーによれば、このマイルドハイブリッドシステムの採用によって燃費が6%改善するという。
乗ってみると、なるほど発進時にアクセルペダルの踏み込み量が少なくてもスッと加速する。ただし事前に説明を受けなければ電力によるアシストだとは気づかなかったと思う。アシストは自然といえば自然で、わずかといえばわずかだ。減速時には17km/h未満になるとエンジンが停止する。全体的には最高出力249psなりというパワーで、驚くほど力強いというわけではないが、不足を感じる局面もない。回しても静かで、必要な仕事はするがことさら存在を主張することがない、縁の下の力持ち系パワートレインだ。
ただし日本市場には、同じシステムを用いながら「P300」(300psを意味する)という名前の、よりパワフルなバージョンが導入される。2リッターターボで300psといえばそこそこパワーを絞り出しているタイプだから、アクセルを踏み込めばもっとたけだけしい加速力で存在を主張してくると思われる。
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最大トルク500Nm(!)のディーゼルターボ
「D240」という2リッター直4ディーゼルターボエンジン仕様にも乗った。こちらも同じマイルドハイブリッドシステムと、9段ATとの組み合わせ。この春に日本導入された「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」の2.2リッターディーゼルエンジンは、最高出力210ps、最大トルク470Nmという2リッター級ディーゼルとしては異例のハイスペックに注目が集まったが、新型イヴォークのD240はそれを軽々と上回る同240ps、同500Nm。乗ったらこれがスペック通りに力強く、全域で速かった。低回転で大きな力(トルク)を発生する代わりに高回転域で伸びないのが一般的なディーゼルターボの特性だが、D240は下から上、具体的には5000rpm近くまで伸びやかに加速力を持続する。過給圧が大きなシーケンシャルターボを採用しているに違いない。尿素SCRを使って厳しい排ガス基準のユーロ6dをクリアする。
ただし、残念ながら日本仕様のディーゼルはD240ではなく現行モデルに搭載される「D180」が引き続き搭載される。決してD180に不満があるわけではないが、よりパワフルなD240を知っちゃっただけに恨めしい。走行負荷の低い日本市場に高価なD240は見合わない(そこまでのパワーが必要ない)という判断か、それともユーロ6dはクリアしても日本のポスト新長期規制をクリアするのは難しいのだろうか。引き続き取材を続けたい。
PTA初出しモデルとなった新型イヴォークだが、先代よりも明確に乗り心地が向上した。その改善しろは、同じように新プラットフォームを用いて乗り心地を一気に改善させた新世代のスバル車やボルボ車と同程度といえる。ざらついた不整な路面を走行した場合に不快な細かい振動を乗員にまで伝えてこないし、先代ならドスンとシャープな衝撃を乗員に伝えてきたであろう大きな段差を越えても、角が取れた入力となって乗員に伝わる。
日本導入は2019年の初夏
「クリアサイトグラウンドビュー」という画期的な新機能が導入された。言葉で説明するのが難しいから下(パソコンの人は左)にある画像を見ていただきたいのだが、フロントグリルおよび左右ドアミラーの3カ所にカメラが設置されており、それらが撮影した映像をバーチャル処理することで、車両のフロント部分と前輪が輪郭だけ表示され、車両の直前にある地面が透けて見える映像がモニターに映し出される。オフロード走行時に地面の状態を把握できるほか、狭い路地などで前輪を縁石などに擦ってしまわぬよう目視できるというわけだ。ステアリングを切れば映像内の前輪(の輪郭)の角度も連動して変わる。日本ではオフロードよりも、やはり縁石までの余裕を確認することなどに役立つと思われる。30km/h未満で使える。
ランドローバーは2014年に「トランスペアレント(透明)ボンネット」と称し、フロントフードが透けてその先の地面が見える技術をコンセプトとして発表した。いかにもオフローダー専業ブランドの同社らしい技術として注目を集め、実用化が期待された。その後続報がなかったので、さすがにフードに映像を映すのは難しいのだろうと思っていたが、クリアサイトグラウンドビューとして日の目を見た。『007』か『キングスマン』を彷彿(ほうふつ)させる英国らしい機能でワクワクが止まらない。バードビュー映像、真上からの映像に続くお役立ちバーチャル映像として、多くのメーカーが追随するに違いない。
新型イヴォークの日本導入は2019年初夏の予定。新型では3ドアやコンバーチブルの開発は、少なくとも現時点では予定されていないという。
(文=塩見 智/写真=ジャガー・ランドローバー/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォークR-DYNAMIC S P250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4371×1904×1649mm
ホイールベース:2681mm
車重:1818kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:249ps(183kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:365Nm(37.2kgm)/1300-4500rpm
モーター最高出力:18kW
モーター最大トルク:55Nm
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:7.9リッター/100km(約12.7km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ランドローバー・レンジローバー イヴォークS D240
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4371×1904×1649mm
ホイールベース:2681mm
車重:1880kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:240ps(177kW)/2400rpm
エンジン最大トルク:500Nm(50.1kgm)/1500-2500rpm
モーター最高出力:18kW
モーター最大トルク:55Nm
タイヤ:(前)235/50R20 104W/(後)235/50R20 104W(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:6.2リッター/100km(約16.1km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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