レンジローバー・イヴォーク ダイナミックSE D200(4WD/9AT)
遥かな高みへ 2024.05.13 試乗記 扱いやすいボディーサイズで人気の「レンジローバー・イヴォーク」。デザイン変更を受けた最新モデルでは端正なスタイリングにさらに磨きがかかっているが、乗り味の洗練ぶりもなかなかのものだ。2リッターディーゼルモデルの仕上がりをリポートする。エントリーでも立派
ランドローバーがレンジローバーとディスカバリー、ディフェンダーという3本立てのモデルシリーズをそろえることは周知のとおり。ただし2023年に「JLR」という統一ブランドを打ち出し、ランドローバーの名前はあまり前面に出なくなりそうだが、社名はジャガー・ランドローバーをそのまま継続するという。何だかややこしいのはこれまでどおりだが、要するにレンジローバーをこれまでよりも独立したブランドとして分かりやすくアピールするもくろみのようだ。高い洗練度とラグジュアリーを特徴とするのがレンジローバーファミリーであることには変わりなく、イヴォークは「スポーツ」や「ヴェラール」に続く末弟のエントリーモデルという位置づけだ。とはいえ、もはや兄貴分たちと遜色なしと言っていい。
2023年のマイナーチェンジ(現行型は2019年発売の2代目)でライトまわりがさらにシャープになった外観同様、すっきりミニマルなインテリアが最新型の特徴で、センターコンソールに位置するのはもはや9ATの小さなシフトセレクターのみという潔さだ。従来型では上下2枚のディスプレイが設けられ、下段側には温度調整&シートヒーター用ダイヤルが設置されていたが、新型ではすべてのコントロール類はダッシュ中央の湾曲した11.4インチタッチディスプレイに一体化された。下段ディスプレイがあった場所には物入れが備わり、中にはワイヤレスチャージャーが装備されているが、リッドを閉めてしまえばまったく生活感がないモデルルームのようだ。
4気筒ディーゼルも見事
「D200」というモデルナンバーは約200PSの2リッター4気筒ディーゼルターボ搭載を意味する。ご存じのように、兄貴分のレンジローバー・スポーツや「ディフェンダー」に積まれる3リッター6気筒ディーゼルターボ(マイルドハイブリッド)は、「インジニウム」と称するジャガー・ランドローバー自慢のモジュラーエンジンシリーズでも名機と評判が高いが、なかなかどうしてこちらの4気筒ディーゼルも見事な出来栄えである。ほかにはガソリンの2リッター4気筒ターボ(「P200」と「P250」)とガソリンの1.5リッター3気筒プラグインハイブリッドの「P300e」もラインナップされている。
204PS/3750rpmと430N・m/1750-2500rpmのパワーとトルクを生み出す2リッター4気筒ディーゼルターボに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインは従来型と変わらず、もちろん9段ATと電子制御多板クラッチを介して4輪を駆動する4WDである。「テレインレスポンス2」によって「スノー」あるいは「サンド」などにドライブモードを切り替えれば、ラフロードの走破性もレンジローバーの名に恥じないことは定評のあるところ。ツルリとフラッシュサーフェス化されたクールで都会的な外観とは裏腹に最大渡河水深は530mmと本格的。“なんちゃって”な4WDモデルはつくらないのがポリシーだ。
勘違いするほどスムーズ
最初に乗ったときには大げさではなく、走りだしてしばらくの間、ディーゼルモデルであることに気づかなかった。急いで乗り換えた際のエンジン始動時の音も、以前は明確だった“身震い”も、そうとは感じさせないもので、動きだしが身軽なことも、力強いピックアップもマイルドハイブリッドのモーターアシストのおかげだろう、と決めつけていた。もちろん実際にそれも効いているはずだが、その後フル加速を試した際のシフトアップが早かったことでD200であることに気づいた。というぐらいだから、走行中はスムーズで静かで快適そのものである。パフォーマンスの公称値は最高速213km/h、0-100km/h加速8.5秒というものだが、現実の路上ではそれ以上に力強く、扱いやすい。
乗り心地も見事にフラットで落ち着いている。オプションの「ダイナミックハンドリングパック」(22万3000円)に含まれる「アダプティプダイナミクス」(電子制御ダンパー)の効果もあるはずだが、これまたオプションの21インチタイヤを履きながら、ガサツな振動も荒々しい突き上げも感じない。この点だけでやはりレンジローバー一族はあまたのSUVとは一線を画しているとあらためて感じさせられる。
ほぼ文句なしだけど
クーペSUVのように見せながら、意外に実用性が高いのもイヴォークの美点である。このサイズにしてはリアシートも窮屈ではないし、ラゲッジスペースも広く使いやすい。全幅は1.9mあまりとワイドだが、全長は4.4m以下で日本でも扱いやすいサイズのはずだ。
もっとも、2019年に現行型イヴォークが発売されたときには400万円台後半からのラインナップだったが、2024年モデルではほぼ700万円スタートとなった。このD200の上級グレード「ダイナミックSE」の車両価格は834万円(先ごろ発表された2025年モデルは若干価格が引き下げられたが)、それに総額220万円あまりのオプションが乗っかってトータルでは大台を軽く超える。さらに現在は、購入の際にエアラインの燃料サーチャージのような為替調整代が上乗せされるという。
見事な出来栄えであることは間違いないし、装備の進化も理解できるけれど、そしてもちろん円安の影響が大きいとはいえ、イヴォークも手の届かないレベルになってしまったか、とため息が出る。円安が落ち着くまで我慢するしかないのだろうか。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
レンジローバー・イヴォーク ダイナミックSE D200
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1905×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期原動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/3750rpm
エンジン最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1750-2500rpm
モーター最高出力:18PS(13kW)/5000rpm
モーター最大トルク:42N・m(4.3kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)245/45R21 104W M+S/(後)245/45R21 104W M+S(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:13.3km/リッター(WLTCモード)
価格:834万円/テスト車=1056万8080円
オプション装備:ボディーカラー<コリンシアンブロンズ>(8万7000円)/コンフォートパック(18万6000円)/MERIDIANサラウンドサウンドシステム(15万7000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(8万2000円)/スペースセーバースチールスペアホイール(2万9000円)/21インチ“スタイル5078”ホイール<グロスブラックフィニッシュ>(17万4000円)/スライディングパノラミックルーフ(27万円)/プライバシーガラス(6万6000円)/電動調整ステアリングコラム(2万2000円)/フロントフォグランプ(3万1000円)/ピクセルLEDヘッドライト<シグネチャーDLR付き>(9万4000円)/コールドクライメートパック(21万6000円)/テクノロジーパック(28万2000円)/ブラックエクステリアパック(16万4000円)/コントラストルーフ<ブラック>(8万7000円)/ダイナミックハンドリングパック(22万3000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万8080円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2526km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:283.2km
使用燃料:22.4リッター(軽油)
参考燃費:12.6km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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