ホンダ・アコードEX(FF)
まぎれもなく外車 2020.04.23 試乗記 フルモデルチェンジした「ホンダ・アコード」に試乗。ハイブリッドシステム「e:HEV」や新世代プラットフォームの採用によって、走りや使い勝手はどう進化したのか? 年間50万台を売り上げるというグローバルモデルの出来栄えを、日本の道で確かめた。ハイブリッドありきで開発
新型アコードがやってきた。1976年の初代から数えて10代目だ。2013年に発売された先代モデルは狭山工場製だったが、こんどはメイド・イン・タイランド。初代「フィット」のお尻にトランクルームを付けた「フィット アリア」以来、11年ぶりにアユタヤのタイ工場からやってくるホンダ車である。アコードの2大生産拠点は米国オハイオと中国の広州だが、タイでも10年以上前からつくられている。
先代同様、日本のアコードはハイブリッドのみである。販売計画は月300台。年間50万台という世界販売の規模からすると、ホンダの“意地”さえ感じさせる国内導入といえる。
メイン市場の北米や中国でのデビューから2年以上遅れたのも、ニーズを考えれば致し方ないだろう。最初からハイブリッドありきで開発された新型のハイブリッド比率は約3割。中国ではハイブリッドだけで月5000台も売れているという。アコードはもはや“外車”なのだ。
低重心、低慣性をうたう新型プラットフォーム(車台)に、先代用をブラッシュアップした2リッター4気筒の2モーター式シリーズハイブリッドユニットを搭載し、ファストバックスタイルのセダンボディーで包んだのが新型アコードである。
試乗したのは「EX」。初代のころからアコードが使うなつかしいグレード名だが、10代目の品ぞろえは465万円のこれだけである。
加速はエンジン車の感覚
グローバルカーとして世界中で売れていても、日本での販売はごくわずか。しかもアコードのように海外から“お取り寄せ”なんていうクルマは、本当に外車のつもりで選び、買い、乗るのが楽しいんじゃないだろうか。
走り始めて最初に頭に浮かんだのは、「プジョー508」だった。新型プラットフォームのうたい文句は大げさではなく、アコードは低重心なドライブフィールがまず新鮮だ。全長4.9m、全幅1.86m。長さも幅もビッグサイズなのに、ステアリングを握っていると、そのサイズをあまり感じさせない。低く構えて地面感があり、身のこなしも軽い。そんなところがプジョーのフルサイズセダンを彷彿(ほうふつ)させたのだ。スポーツセダンと呼びたくなるような蛮カラさとは無縁だが、アコードも大型セダンとしては間違いなくスポーティー仕上げである。
そんなキャラクターにパワートレインもマッチしている。高効率なアトキンソンサイクルの2リッター4気筒をほぼ発電専用に使い、ほぼずっとモーターで走るのがこのハイブリッドの特徴だ。強い加速を求めてスロットルを踏み込むと、エンジンもリニアに気持ちよく回転を上げる。オッ、エンジン駆動に入ったかなと思うが、ETCゲートからのダッシュのようなときでも、エンジンは圧電をかけるために回っているという。そのため、今回のように急ぎ足の試乗だと、EVっぽさはそれほどない。自然にフツーのエンジン車の感じだ。スロットルの操作とは無関係にエンジンが回って発電する、その違和感を減らしたのが新型ハイブリッドの改良点のひとつだという。
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乗り心地は先代に軍配
今回、試乗できたのは正味数時間。撮影地周辺の一般道を少し走ってから、一目散に都内に戻ったので、8~9割は高速走行だった。
18インチのアルミ鍛造ホイールにはノイズリデューシング機能が備わる。ホイールに付けた樹脂製レゾネーター(消音装置)の効果により、高速道路の継ぎ目などで発生するボコンという共鳴音を抑制するというもの。オンオフができるものではないので、あるなしの差を体感することはできないが、これと同じ効果をボディー側の防音材などで実現するとなると、いまより10kg重くなるという。
乗り心地はビッグサルーンらしく落ち着いている。最初、平滑な路面ではそう思ったが、路面が荒れていると乗り心地の落ち込みが大きい。フトコロが深くないのだ。低い重心感覚という長所があるのだから、ハイスピード領域でももう少し路面に吸い付くようなスタビリティーがほしい。乗り心地だけは先代のほうがよかったような気がする。
今回はトータルでも210km弱しか走れなかったが、燃費は満タン法で15.5km/リッターだった。先代アコードはやはりワンデーツーリングで20km/リッターを超え、ホンダ初の2モーターハイブリッドはスゴイ! と思った。JC08モード値は31.6km/リッターから30.0km/リッターへわずかにドロップしているが、こんな大差がつく理由はない。車重は先代より50kg軽くなっている。これは新型のせいではなく、走り方が悪かったと思う。アクセルを踏みすぎた。
このハイブリッドシステムでいちばん燃費を稼ぐには、どういう走り方をしたらいいか。宮原哲也チーフエンジニアに聞くと、「可能な限りエンジンを回さないこと」。ごもっともである。
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とっくに“世界のアコード”
このボディーサイズだから、キャビンは広い。後席もとくにレッグルームは広大だ。助手席背もたれの肩に付くスイッチで、後席乗員が助手席を前後にスライドさせることができる。中国や東南アジアだと、アコードはリムジン的にも使われることが多いそうだ。
573リッターのトランク容量はハイブリッドセダンで世界最大をうたう。トランクルームを侵食していたバッテリーユニットを後席下に収めた成果である。トランクスルーにもなった。それなら、ステーションワゴンがつくれるではないかと思ったが、トランク/客室貫通部の左右には環状バルクヘッドという隔壁があるため、このままでは無理だという。やはり最初からセダン専用のボディー構造なのだ。4代目アコードには「USワゴン」というヒット作があったのになあ、なんていうノスタルジックな国内事情をくんでもらえる余地はないのだ。とっくに“世界のアコード”なのである。
「NSX」の次にレアな輸入ホンダ車になること間違いなしの新型アコードはどんな人にいちばんお薦めか。かつてアコードを所有したことがあり、その後いろいろ乗って、そろそろドイツのDセグメントセダンかなと思っている。でもカタログのクルマのようにカッコよくするとなると、すごく高くなる。じゃあもういちど乗ってみるか、なんていうアコードアゲイン層だろうか。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=櫻井健一/撮影協力=河口湖ステラシアター)
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テスト車のデータ
ホンダ・アコードEX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4900×1860×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(ブリヂストン・レグノGR-EL)
燃費:22.8km/リッター(WLTCモード)/30.0km/リッター(JC08モード)
価格:465万円/テスト車=478万3100円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-204WD>(4万2900円)/発話型ETC2.0車載器(2万7500円)/ETC車載器取り付けアタッチメント(5500円)/フロアカーペットマット プレミアム(5万7200円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1431km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:207.8km
使用燃料:13.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.5km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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