500万円超のラインナップが2倍に!? 唐突すぎるホンダの上級車種戦略に物申す
2026.03.27 デイリーコラム実は大・新車攻勢を仕掛けていたホンダ
最近のホンダといえば、電気自動車(BEV)「Honda 0サルーン/SUV」「アキュラRSX」の開発・発売中止の話題でもちきりである。去る2026年3月12日の会見で、2025年度の通期決算がホンダの上場以来初となる赤字、しかも最大6900億円という巨額赤字になる見通しであること、その最大の原因が、肝いりで開発中だったHonda 0シリーズの計画中止による最大2兆5000億円の損失であることが発表されたからだ(参照)。それに続いて、ソニーと共同開発していたBEVプロジェクトも中止となった。
これはこれで大変な事態なのだが、今回の主題はそうした赤字や損失の話ではない。その衝撃によって、すっかりかすんでしまった(?)ホンダの新車の話である。
ホンダはこの2月末に、日本で1台の新型モデルを発売。3月上旬には、さらに1台の新型モデルの事前キャンペーンを開始するとともに、2026年後半に2モデルを日本に導入すると発表した。また2月中旬には、スモールBEV「スーパーONE」の情報も先行公開されている。新車のデビューは自動車メーカー最大の慶事にして、ある意味でお祭りなのだが、その直後の特大カミングアウトのせいで、水をさされてしまった感はいなめない。
2月末に国内で発売された新型車とは「CR-V」である。それまでの国内向けSUVのトップに位置していた「ZR-V」の、さらに上に位置づけられるクルマだ。本体価格は512万2700円~577万9400円。先代までは国内で生産されていたが、今回はタイから輸入される。
続く3月上旬から国内発売の事前キャンペーンが行われているのは、中国から輸入される予定のBEV「インサイト」だ。正式価格は未発表だが、複数のメディアで550万円~560万円という価格が報じられている。
そして、同じく3月上旬に2026年後半の導入が発表されたのが、「インテグラ タイプS」と「パスポート」である(参照)。これらは、新たに創設された「米国製乗用車に関する認定制度」を活用した、米国からの輸入車だ。
この2台も国内価格は明らかではない。ただ、インテグラ タイプSは中身がほぼ「シビック タイプR」で、北米では上級ブランドのアキュラで販売される高級コンパクトスポーツセダンである。もう1台のパスポートは、ホンダブランドでは世界最大級のSUV。燃料電池車の「CR-V e:FCEV」を例外とすれば、どちらも現在国内で売られているホンダ車よりは高額になることが予想される。
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いまひとつ盛り上がらないメーカー&ディーラーの期待
興味深いのは、ここにあげた2026年内に日本で発売されるホンダの新型車は、スーパーONE以外はすべてが輸入車で、しかも全長が4.7m以上、本体価格が500万円を超える上級モデルであることだ。
これ以前、ホンダの国内ラインナップで車両本体500万円超の正札をさげていたのは、「アコード」「オデッセイ」、そして「シビック タイプRブラックレーシングパッケージ」(以下、タイプR)と「プレリュード」の4台。まあ、今回のインテグラやパスポートは対トランプ関税の緊急措置という側面はあるにしても、500万円超の上級モデルの数が、わずか1年で2倍(!)になるわけだ。
思い返せば、今から10年ちょっと前の2014年中ごろ、国内で買えるホンダのセダンが9代目アコードだけになったと思ったら、そこから約4年間で6車種ものセダンが次々と発売された。ところが、今度は続く4年間で、それらはすべて日本から撤退。国内向けセダンはまたアコードだけになってしまった。
こうして見ると、ホンダの国内戦略はいつも極端というか、“行き当たりばったり”で“ちぐはぐ”という印象がぬぐえない。
先日、都内ホンダカーズのセールスマンの方とお話しする機会があったのだが、今回の新型CR-Vについても、販売現場での盛り上がりは“そこそこ”といったところらしい。CR-V本来のライバルには「トヨタRAV4」「日産エクストレイル」「スバル・フォレスター」「マツダCX-5」などがある。さらに、海外より高めの設定となる日本での価格を考えると、上級の「トヨタ・ハリアー」「三菱アウトランダーPEHV」、そして「マツダCX-60」も射程内に入ってくる。つまり、CR-Vの市場は国内でも屈指の激戦区にして、利幅も大きい高付加価値商品群のマーケットなのである。そこに投入される期待の大型新人だというのに、盛り上がりが“そこそこ”とは、なんともさみしい。
もちろん、この印象はあくまで一部の例にすぎない。でも、新型CR-Vの国内販売計画は月間400台=年間4800台。先述したどのライバルの2025年実績より少ない台数で、ホンダ自身も過大な期待をしていないことがうかがえる。
上級車種を買ってくれる顧客を失いかねない
先に「この2026年に国内発売予定の上級ホンダ車は、CR-Vを含めてすべて輸入車である」と書いたが、従来からあるアコードとオデッセイも輸入車であり、現行アコードはタイ、現行オデッセイは中国で生産されている。つまり、500万円超の現行ホンダ車で国内生産されているのは、特殊なスポーツモデルともいえるタイプRとプレリュードだけだ。
ホンダは創業時から「需要のあるところで生産する」という“地産地消”を理念として掲げている。アコードやCR-V、オデッセイなど、かつては日本でも人気だった上級ホンダ車が、ことごとく海外生産に移行したのも、もとをただせば日本であまり売れなくなったからだ。
かねて「クルマばなれ」が指摘される日本だが、国産・輸入車を問わず、マニアックなスポーツカーやスーパーカーにかぎっては、今も世界屈指の大量消費国である。そう考えると、タイプRやプレリュードが国内生産なのは理にかなう。
いずれにしても、いったん海外生産になってしまうと、必然的にグレード等のバリエーションが絞られることもあり、結局は日本での売れ行きも上向きにくくなるのが現実だ。また、CR-Vのようにモデルチェンジごとに年単位の空白ができると、そのタイミングで買い替えたい既納客は行き場を失い、結局はホンダからはなれてしまう。そうして顧客を失った市場に、忘れたころにクルマを復活させても、販売現場が盛り上がらないのは当然だ。
クルマのようなグローバル商品では、地産地消は理屈としては正しいのかもしれない。ただ、それがホンダ伝統のこらえ性のない社風(失礼!)とあいまって……というか、その社風の原因の一端が地産地消なのかもしれないが……今のままでは、上級モデルを喜んで買ってくれる上客は、ホンダからはなれていくばかりと思われる。少なくとも外側からは、ホンダの近年の国内販売戦略は悪循環にハマっているとしか思えない。
ホンダの四輪事業は、昔から利益率が低いのも弱点とされている。2024年度通期の四輪事業の営業利益率は1.7%。同期のトヨタやスズキのそれは約10%である。冒頭の巨額赤字の主原因はあくまでHonda 0シリーズだし、ホンダの生命線はアメリカ市場である。でもわれわれ日本人としては、足もとの日本市場で軽自動車から上級車まで取りそろえて、しっかり利益を出す景気のいいホンダを見たいのだ。
(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業、日産自動車/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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