フォルクスワーゲン・ティグアンTSIファーストエディション(FF/7AT)
暫定ナンバーワン 2021.05.22 試乗記 フォルクスワーゲンの正統派SUV「ティグアン」がマイナーチェンジ。導入記念の特別仕様車「TSIファーストエディション」に試乗し、新エンジン「1.5 TSI Evo」や最新世代に移行した運転支援システムの仕上がりを確かめた。ティグアンにまつわる朗報と悲報
2020年7月に本国でマイナーチェンジが発表されたティグアンが、ついに日本にやってきた。その概要は後述するが、フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)からうれしい知らせがあった。
それは、同社のSUVとしては初となるハイパフォーマンスモデルの「ティグアンR」が日本に導入されるというニュース。最高出力320PS(235kW)の2リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載するとともに、トルクベクタリング機能を備える専用の4WDシステムを採用するこのスポーツSUVがどんな走りを見せてくれるのか、いまから楽しみである。
一方、ティグアンのマイナーチェンジモデルの発売を待ち望んでいた人にとって残念な知らせもある。それは、これまで販売の半分を占めていたディーゼルエンジン「TDI」と4WDを採用する「ティグアンTDI 4MOTION」がラインナップに見当たらないことだ。VGJによればTDIの技術的な理由から導入のめどが立っておらず、ガソリンエンジンの4WDモデルの導入も含めて対応を検討しているというのだ。
フォルクスワーゲンのSUVは、身近なスモールサイズの「Tクロス」とスポーティーなクロスオーバーSUVの「Tロック」、そして、正統派SUVのティグアンが日本市場で販売されている。今やSUVにとって4WDが必須ではないとはいえ、“正統派”をうたうティグアンとしては、かなり頭が痛い状況といえるだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
頼みの綱は新エンジン
そんななかで、ガソリンエンジンのFFモデルに再び主役の座がまわってきた。今回のマイナーチェンジではパワートレインが一新され、エンジンもトランスミッションも最新版にアップデートされるのが心強い。
これまでティグアンには1.4リッター直列4気筒ターボの「1.4 TSI」エンジンが搭載されてきたが、マイナーチェンジを機にその後継機にあたる1.5 TSI Evoエンジンが採用されている。名前からもわかるように排気量が1.5リッターに拡大されるとともに、走行状況により2気筒運転を行うアクティブシリンダーマネジメント(気筒休止機構)を搭載している。組み合わされるデュアルクラッチトランスミッションが、従来の湿式多板クラッチ式の6段DSGから7段DSGへと進化したのも見逃せない点だ。
もちろんマイナーチェンジをうたうだけに、内外装のリニューアルも見どころである。フロントマスクは、ヘッドランプやラジエーターグリルのデザインが変更されたことに加えて、高機能のLEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT(アイキューライト)」が利用できるようになったのがうれしいところ。
一方、インテリアは、基本的には従来型を踏襲するが、ステアリングホイールやエアコンのコントロールパネルが新しいデザインに変わっていたり、新しいオンラインサービス「ウィーコネクト」が利用可能なインフォテインメントシステムが搭載されたりと、改良は多岐にわたっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
TSIファーストエディションのうれしい装備
さて、今回試乗したのは、新型導入を記念して設定された特別仕様車のティグアンTSIファーストエディション。充実した装備の「ティグアンTSIエレガンス」をベースに、「ノワゼット/チタンブラック」と呼ばれるブラウンとブラックのコンビネーションレザーシートやダークカラーの専用ウッドパネル、ブラックのルーフライニングなどを追加することで、上質で落ち着いた雰囲気に仕上げられている。さらに、TSIエレガンスには設定のないダンピングコントロールサスペンションの「DCC」が標準装着されるのも注目したいポイントである。
早速走りだすと、1.5 TSI evoエンジンと7段DSGを組み合わせたパワートレインが、期待以上に活発であることがわかる。以前の1.4リッターもFFのティグアンを走らせるには必要十分なエンジンだったが、この1.5リッターはさらに素早くトルクが立ち上がり、静粛性やスムーズさも向上。1550kgのボディーをすんなり動かす性能の持ち主である。シフトフィーリングもこれまで以上に洗練された印象だ。
通常の走行であれば2000rpm以下で事足りる。アクセルペダルに軽く右足をのせるような場面では、前述の気筒休止機構が作動し、2シリンダーに切り替わることで燃費が向上。さらに、走行モードをエコモードに設定すれば、アクセルオフでクラッチが切り離されるコースティング走行となり、このふたつをうまく利用すれば、カタログ燃費の16.1km/リッター(高速道路モード/WLTC-H)超えは難くない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
バランスよく仕上がったおすすめモデル
高速道路の合流などの場面でアクセルペダルを踏み込めば3000rpmあたりからさらに力強さを増し、1.5 TSIはレブリミットまで気持ちよく回転を上げる頼もしさも兼ね備えている。
235/50R19サイズの「ピレリ・スコーピオン ヴェルデ」タイヤとスポークデザインの19インチアルミホイールは、ベースとなるTSIエレガンスに対して1インチアップとなるが、アダプティブシャシーコントロール「DCC」のおかげもあって、低速の一般道から高速道路までフラットで快適な乗り心地を実現。ワインディングロードを走らせるチャンスもあったが、SUVとしてはしっかりとロールが抑えられており、しなやかな動きのサスペンションとあいまって、見た目以上に軽快なハンドリングを楽しむことができた。
マイナーチェンジを機に運転支援システムもバージョンアップ。全速度域で速度調整と車間調整、レーンキープを行う「トラベルアシスト」が搭載され、ステアリングホイールのスイッチで簡単に起動できるようになった。車線の中央を維持するよう制御も実に自然で、ロングドライブや渋滞時には大いに役立ちそうだ。
余裕で足が組めるスペースが確保される後席や、広大なラゲッジスペースもこれまでどおりで、走りとユーティリティーが高いレベルで両立されるティグアン。なかでもこの特別仕様車のTSIファーストエディションは、FFモデルで一番のおすすめではないかと思う。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンTSIファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4515×1840×1675mm
ホイールベース:2675mm
車重:1550kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/50R19 99V/(後)235/50R19 99V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ)
燃費:14.3km/リッター(WLTCモード)/15.5km/リッター(JC08モード)
価格:524万9000円/テスト車=553万5000円
オプション装備:ラグジュアリーパッケージ<電動サンシェード、UVカット機能付き電動パノラマスライディングルーフ+総合出力480W、16チェンネル、9スピーカー、プレミアムサウンドシステムharman/kardon>(25万3000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:880km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。


















































