【F1 2021】フェルスタッペン圧勝 シーズンの流れはレッドブルに
2021.06.28 自動車ニュース![]() |
2021年6月27日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.318km)で行われたF1世界選手権第8戦シュタイアーマルクGP。チームのホームグラウンドで、マックス・フェルスタッペンが全周をリードして圧勝。流れに乗ったレッドブルは4連勝を飾った一方、ターボハイブリッド時代の王者メルセデスはなすすべなく4連敗を喫した。
![]() |
![]() |
あれから1年 大きく変わった勢力図
開幕戦が急きょキャンセルされ、次々とレースが延期・中止に追い込まれ、ようやく7月にオーストリアGPでシーズンが始まったものの、その時点ではチャンピオンシップが全何戦となるかも分からなかった2020年。世界を週替わりで転戦するF1は、新型コロナウイルスのまん延と各国での入国制限、ロックダウンなどの感染防止対策でかつてない危機的な状況に追い込まれたが、関係者の尽力と創意工夫により、無事17戦で選手権を終えることができたことは周知の通り。あれから1年、再びF1がオーストリアはレッドブル・リンクに戻ってきた。
昨季と同じように同地2連戦となるが、この1年の間でチームの勢力図は大きく変わった。メルセデスがライバルを寄せつけず2連勝して幕を開けた2020年と違い、7戦を終え数々の接戦の末にレッドブルが4勝と勝ち越し、選手権をリードして迎えた2021年。今季の激戦の背景には、コロナ禍が少なからず影響しているといえる。
昨年はレース数減などで資金繰りに奔走するチームも出たため、2021年向けマシンの開発は大幅に制限される措置がとられた。また長年チーム間の不均衡の元凶だった予算格差も、年間制限が決まったことで是正の方向に動くこととなった。現有のパッケージとリソースを効率よく最大限に活用することに舵がとられた結果、各マシンの熟成が進みポテンシャルの差がぐっと縮まり、トップから中団までの接戦につながった。今季の激戦は、パンデミックの混乱がもたらした思わぬ副産物だともいえるだろう。
既に中止が決まっていたシンガポールGPの代替に、一度中止となったトルコGPが復活。また第10戦イギリスGPは収容人数100%、14万人の観客導入に踏み切るというニュースも入った。コロナの影がまだ消えない2021年シーズン、史上最多23戦の長期戦は、ようやく3分の1を過ぎようとしていた。
![]() |
レッドブル快調 フェルスタッペンは2戦連続ポール
前戦フランスGPでのマックス・フェルスタッペンの逆転勝利で、レッドブルは2013年以来、ホンダとしては1991年にマクラーレンでアイルトン・セナが成し遂げてから30年ぶりとなる3連勝を達成。フェルスタッペンはハミルトンに12点、レッドブルはメルセデスに37点の差をつけレッドブル・リンクに凱旋(がいせん)した。
レッドブルは勢いをキープしたままプラクティス、予選を順調にこなし、Q3になるとフェルスタッペンが2戦連続、今季3回目、通算6回目のポールポジションを獲得。ここを得意とするメルセデスのバルテリ・ボッタスが0.194秒差で2位につけたが、初日プラクティス中にピットレーンでスピン、危険なドライビングだとして3グリッド降格ペナルティーを受け5番グリッドに。フロントローにはハミルトン。マクラーレンのランド・ノリスが3番グリッド、レッドブルのセルジオ・ペレスが4番グリッドにつけた。
ボッタスの後ろには、アルファタウリのピエール・ガスリー。フェラーリのシャルル・ルクレール7位の次は、8位につけたアルファタウリの角田裕毅だったのだが、予選中ボッタスを妨害したとして3グリッド降格、11位に。アルピーヌのフェルナンド・アロンソ、アストンマーティンのランス・ストロール、そしてウィリアムズのジョージ・ラッセルが繰り上がり、それぞれトップ10内からスタートすることとなった。
![]() |
![]() |
スタートでフェルスタッペンが首位キープ
スタートでトップを守ったフェルスタッペン、2位を維持したハミルトン。それは71周にわたっての、おのおのにとっての孤独な戦いの始まりだった。
上位陣はそれぞれポジションを維持した一方、ガスリーとルクレールが接触し、ガスリーはタイヤをパンクさせ失速しピットイン、リタイアを余儀なくされた。ルクレールも緊急ピットインを強いられ予想外の後退となるも、その後は各所でオーバーテイクを繰り返し、最後にはスタート順位と同じ7位まで挽回したのだから、1周目の接触が悔やまれた。
また3位ノリスは、10周目にペレスにかわされ4位、程なくしてボッタスにも抜かれ5位に後退。トップ2チームとの力量の差は歴然としているが、ゴールまで中団勢トップのこのポジションを堅守したのだからさすがである。
トップ争いは、20周を過ぎミディアムを履くフェルスタッペン、ハミルトンともペースが鈍化するも差は4秒台に拡大。ハミルトンは必死に食らいつこうとしてもフェルスタッペンに追いつけず、一瞬コースの外にタイヤを落とし挙動を乱すなど危ないシーンも見られた。
27周目、3位走行中のペレスがピットに入り、ソフトからハードに換装。それを見るやボッタスにペースアップの指示が入り、翌周メルセデスがハードに交換してコースに戻ると、ボッタスがペレスの前に出ていた。2位ハミルトンも29周目にハードに履き替え、次のラップでフェルスタッペンもタイヤ交換を行った。
![]() |
![]() |
レッドブル4連勝 メルセデスは初の4連敗
トップはフェルスタッペンのまま、4.5秒離れて2位ハミルトン、さらに17秒遅れて3位ボッタス、前から2.6秒間隔があき4位ペレスといった位置関係で第2スティントへ。フロントランナーは全車ハード装着、つまり次のピットストップの予定はなく、見た目には地味なタイヤマネジメントの勝負に持ち込まれた。
だが、タイヤマネジメントの名手であるハミルトンですら、フェルスタッペンとの差を詰めることができず、逆に右フロントタイヤにブリスターを作りながら引き離される始末。残り20周で7.5秒、それが10秒と広がり続けることにメルセデス陣営は打つ手がなく、残り2周でハミルトンにソフトタイヤを与え、ファステストラップの1点を追加するのが精いっぱいだった。
なすすべがなかったのは、ボッタスを抜けずにいた4位ペレスも同じだった。55周目、後続に対し十分なマージンを築いていたペレスは2ストップに切り替え、ミディアムタイヤを履いて20秒先のボッタスを追いかけた。だがこの決断、あと2周早ければ成功したかもしれなかったが、ペレスは0.527秒差で表彰台を逃した。
フェルスタッペンは、一度もリードを失うことなくパーフェクトなかたちで2連勝。8戦して4勝目を飾り、チャンピオンシップでのリードも18点まで拡大した。「マシンのバランスは良かった。来週もこんな勝利を見せないとね。今から楽しみにしているよ」とは、自信あふれるウィナーのコメント。それに比べて2位ハミルトンは、「孤独なレースだったよ。レッドブルを追いかけようとしたけど、彼らはここ数レースで大幅に性能を向上させたよね」と完敗を認めざるを得なかった。メルセデスが4レースも勝利から離れている状況は、2014年からのターボハイブリッド規定下で初めてである。
4連勝と流れに乗ったレッドブルを止める方法をたった数日で見つけることは、王者メルセデスとて難しいだろう。続く第9戦オーストリアGPもレッドブル・リンクでの開催。決勝は7月4日に行われる。
(文=bg)