スバルで一番お買い得!? ここがスゴいぞ「クロストレック」
2022.09.19 デイリーコラムマイナーチェンジのようではあるが……
「スバルXV」がフルモデルチェンジを機に、その名を「クロストレック」と改めた。これはXVの海外販売名で、「クロスオーバー」と「トレッキング」からなる造語。XVは今回の新型から車名を世界で統一するのだ。
車名こそ変わったが、一見すれば誰もがXVの新型だとすぐにわかるだろう。キャビンのフォルムをやや絞り気味にして前後のフェンダーを強調するなど、従来型よりもシャープでアグレッシブな雰囲気が高まっているものの、内外装の仕立ては典型的なキープコンセプト。ボディーサイズは全長が5mm伸びただけでほぼ変わらず。ホイールベースの数値も不変。さらに、搭載されるパワーユニットは先代でも主力だった2リッターの「e-BOXER」だといわれては、ビッグマイナーチェンジと受け止められても仕方がないといえる。
XV改めクロストレックは世界的な人気車種で、「フォレスター」と並ぶスバルの屋台骨を支えるモデルであることから、キープコンセプトのモデルチェンジを行うのは当然といえば当然。「頼もしさや躍動感を強調した」という外観は、フロントグリルがゴツくなりボンネット部分は厚みを増した。これまでの「インプレッサ」ベースではなく、より本格派のSUVらしくなっている。洗練度やスタイリッシュさも間違いなく高まっているものの、一方で、フルモデルチェンジとしては、ややインパクトに欠けるとの印象を受ける人も多いはず。
しかし細部を見ていくと、やはり、スバルファン的には深くうならされるポイントが盛りだくさんだった。
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見えないところで凝っている
まずは車体の基本構造。プラットフォームはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の最新版で、最近のスバル車が順次取り入れているインナーフレーム構造化したもの。これは工場の製造工程から見直しを求められるつくりである。従来はアッパーボディーとアンダーボディーを別々に組み立てた後で接合していたのに対し、ボディー全体の骨格部材を強固に組み上げてから外板パネルを溶接する行程を経て組み立てられる。さらに、構造用接着剤の塗布長も大幅に伸ばされている(従来型の7mに対して5倍以上)。
これらの車体技術は現行型「レヴォーグ」や「アウトバック」でも高い評価を得ており、従来のSGPよりも大幅な高剛性化が図られている。かつ「入力の伝達性の均一化」が飛躍的に向上することから、操縦性のほか音や振動面での印象が劇的に良くなるのは間違いない。
さらに、「高減衰マスチック」と呼ばれる新技術も初投入。これはルーフパネルとブレースの間に用いられる弾性接着剤で、振動の吸収性が高く制振性に優れるとされ、車内音の収束性を向上させるという。
ほかにも2ピニオン式電動パワステや電動ブレーキブースターなど、やはりレヴォーグやアウトバックなどで始まった新たな機構が採用される。クロストレックはスバルのSUVとしてはエントリーモデルに位置づけられるのだが、フラッグシップ車に使われる最先端技術を安いモデルにも惜しみなく採用するところがスバルらしい。車種が少ないからこそ、という事情もあるが、衝突安全性や運転中に得られる動的な質感は、最上位モデルと同等以上に引き上げられるのだ。現時点では価格は未公開だが、ラインナップ的に従来型とさほど変わらない価格帯になると予想できる。つまり、クロストレックはスバル車のなかで最もお買い得なクルマになるともいえるのだ。
今回の新型は、前後バンパーやフェンダーの張り出し感を増し、オフローダーらしさもより高まっているが、外観のイメージどおり、悪路走破性にもさらなる磨きがかかっているのは明らかだ。最低地上高は200mmで先代と変わらず、4WDシステムも制御面に大幅な改良が加えられるという。タイヤは先代までの「ヨコハマ・ブルーアース」から、上級グレードは北米向けフォレスターにも採用されているオールシーズンタイヤの「ファルケン・ジークスZE001 A/S」に変更。強豪ひしめくSUV市場で存在感を発揮するため、クロストレックは持ち前のオフローダーとしての強みを伸ばすことでキャラをさらに際立たせる狙いだ。その一方、ライトなSUVユーザー向けの仕様も用意されるというから、客層の守備範囲を拡大することになる。
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上級車をしのぐ安全性
室内装備面の特筆すべきポイントは、フロントシート。シート単体の構造を一新して、乗員の骨盤、とりわけ仙骨と呼ばれる部位のホールド感を高め、頭の揺れを抑制して快適性を向上させる。シートレールのマウント部分の構造は、ブラケットを介さずにシートレールを直接車体に固定する方式となり、シートの保持剛性を大幅にアップ。ロングドライブ時の疲労低減効果が期待できるという。
上級グレードはファブリック表皮、スタンダードグレードはトリコット仕立てということで、撥水(はっすい)加工シートではないのだが、そのため「X-BREAK」と呼ばれるスバル得意の“アウトドア向けグレード”が将来的に追加されるに違いないと勝手に予想してしまう。
さらに注目すべきは安全性だ。前述のように、車体の強化により衝突安全性はフラッグシップのアウトバックと同等レベルにまで向上。NCAP(自動車アセスメント)において2021年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価で最高得点を獲得、ユーロNCAPの2021年安全性能テストでもファイブスターを受賞した世界最高レベルの衝突安全性が、より安いクロストレックでも得られるのはすごいことだ。
運転支援システムの「アイサイト」はカメラ部分が刷新され、「アイサイトX」のように、フロントガラス面に直接マウントされるタイプに。これで最新鋭のアイサイトX並みの視野角となるが、さらに中央部に広角の単眼カメラを増設。これにより、前方の視認精度は今のアイサイトXを超えるものになったと思われる。
上級グレードでは、フルLED化されたヘッドランプに加え、スバル初のLEDのコーナリングランプを追加。ほぼ真横に向けて照射することで、夜間の右左折時などに進行方向を明るく照らせる。一時的であれ、安全性で車格が上のモデルをも超えることになり、ますますお買い得感が高まるといえる。
スバルの新型クロストレックは、ガチガチのキープコンセプトでありながら、内容的な充実度の高さにはうならされる部分が多い。まさに、つくり手入魂のフルモデルチェンジであると感じさせる。
(文=マリオ高野/写真=スバル、webCG/編集=関 顕也)

マリオ高野
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