「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.08 デイリーコラム「アプライドD」は折り返し地点
スバルの年次改良、いわゆるアプライドモデルの更新は、スバリストにとっては毎年の風物詩であり、けっこうな関心事でもある。一般的には「A型」から始まるアルファベットが進むにつれて熟成も進むとされるが、とりわけ「D型」への移行は特別な意味を持つ。いわゆるマイナーチェンジ、折り返し地点での大幅刷新である。
今回、つまり2026年9月17日に「インプレッサ」と「クロストレック」に施された「アプライドD」への改良は、単なる内外装のコスメティックチェンジや装備の追加、見直しにとどまらない。両車のパワートレイン戦略そのものを根本から覆す、きわめてドラスティックなすみ分けが断行されたのだ。
端的に言えば、インプレッサは「純ガソリンエンジン専用機」へと割り切られ、クロストレックは「ハイブリッド専用機」となった。かつて両車に混在していたマイルドハイブリッド「e-BOXER」を廃止し、両者のキャラクターを明確に切り分けたスバルの真意は何なのだろうか?
両モデルの関係をしっかりと線引き
これまでの両車は基本的に同じプラットフォームを共有し、パワートレインも純粋な2リッター水平対向直噴ガソリンと2リッター水平対向直噴ガソリン+小型モーターのe-BOXERを、双方で選べる構成になっていた。だがアプライドDでその図式は解体され、前述のとおりインプレッサはe-BOXERを廃止し純ガソリンエンジンのみの設定に。そしてクロストレックはマイルドハイブリッドと純ガソリンエンジンを整理し、ストロングハイブリッドである「S:HEV」のみという構成に集約された。
かつては、超ざっくりいえば「車高を上げたインプレッサがクロストレック」というような関係だったものが、パワートレインと価格帯の両面において、明確に異なるステージへと引き離されたかっこうだ。
スバルがインプレッサとクロストレックをきっちりと差異化した背景には、グローバルおよび国内の市場環境、そして技術的なリソース配分という現実がある。
わかりやすい“売り”が必要だった?
モーターアシストにより発進を滑らかにするe-BOXERは、走りの質感向上にはある程度寄与したものの、燃費改善効果という点では本格ハイブリッドに対抗しきれなかった。ユーザーからは「ハイブリッドを名乗る割には実燃費が……」という声も根強く、CAFE(企業別平均燃費)規制の引き締めが年々厳しさを増すなか、主力SUVであるクロストレックにこそ、まずまずの燃費性能を誇るS:HEVを全面配備することは急務だった。
だがその際に、もしもインプレッサまでS:HEV化してしまったり、あるいは強力なターボエンジンなどを採用してしまったりすると、スバルの屋台骨を支えるエントリーハッチバックにおける“手ごろさ”という美点が失われてしまう。
しかしインプレッサを純ガソリンエンジンに絞れば、同車は車重の軽さを最大限に生かした「軽快なハンドリングのハッチバックモデル」としてのキャラクターを明確にできる。重いバッテリーを背負わないことによるノーズの入りやすさやリニアなスロットルレスポンスを、そしてもちろん車両価格の安さを、わかりやすい“売り”にできるということだ。
一方のクロストレックは、当然ながらトルクフルで高効率なS:HEVこそがふさわしいCセグメントSUVだが、全車S:HEV化は諸刃の剣でもある。つまり車両価格がどうしても上昇しまうことで、ユーザーが離れてしまうリスクもあるわけだ。
それぞれの使命がより鮮明に
だが今やクロストレックは、スバルの世界戦略においてはインプレッサ以上の稼ぎ頭になっている。そしてスバルとしては、車両価格が多少上がったとしても選ばれ続けるだけのブランド力と需要が、クロストレックにはすでに備わっていると判断したのだろう。それゆえスバルは迷うことなく(?)クロストレック全車のS:HEV化が行えたのだ。
そしてクロストレックの(ある種の)プチプレミアム路線がイケるとなれば、今後はS:HEVではなく純ガソリンターボエンジンを搭載する「クロストレック STI Sport」的なグレードの登場も期待できるだろう。
今回振るった大ナタは、一見すると「選択肢が狭まった」ようにみえるかもしれない。だが自動車愛好家あるいはスバリストとしての視点からであれば、実に理にかなった改良と感じられる。
軽快な身のこなしと素直なエンジンフィール、そして納得のプライスで日常を小気味よく駆け抜けることができるD型インプレッサ。そして最新の電動パワートレインによる極太トルクと燃費性能、さらには頼もしいロードクリアランスでもって日本各地を元気に走り回れるD型クロストレック。
それぞれの使命がより鮮明になった今回のアプライドDは、インプレッサとクロストレックの本質を、これまで以上に際立たせる結果となったのだ。
(文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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