スバル・クロストレック プロトタイプ(4WD/CVT)/クロストレック プロトタイプ(FF/CVT)
これは期待できそう 2022.10.17 試乗記 スバルから新型のコンパクトSUV「クロストレック」が登場。「XV」の後継を担うニューモデルは、どのようなクルマに仕上がっているのか? クローズドコースで行われた先行試乗会より、期待をかき立てるプロトタイプの走りを報告する。ボディーサイズは「スバルXV」と同等をキープ
スバルから2022年9月15日に、「2023年以降、日本市場を皮切りに順次世界各国の市場に導入を予定」という注釈付きで初公開されたのが、このブランドにとって久々のブランニューモデルであるクロストレックだ。
もっとも、それが“ブランニュー”なのは日本を含む一部市場でのハナシで、かねてこの名称を用いてきたアメリカなどでは、「クロストレックのフルモデルチェンジ版」という扱いである。すなわち、母国日本では「XVという名称が、これまでアメリカなどで使われていたクロストレックの名に変えられた」というのが正解であり、そんな講釈を耳にするまでもなく、ここに紹介するクルマが「XV改め~」のモデルであることは、まずそのエクステリアデザインを一見すれば誰の目にも明らかだろう。
実際、ルックスがこれまで好評を博してきたXVの雰囲気を強く受け継いだものであるのにとどまらず、4480×1800×1580mm(ルーフレール装着車)と発表されたボディーの3サイズも、XVと各寸1cmと変わらない。加えれば2670mmというホイールベースの値も同一となれば、既存のXVオーナーならともかく、そうではない人はうっかり「これって本当にフルモデルチェンジなんだよね?」と、そんな確認の声すら上げたくなることだろう。正直なところ、それが個人的なクロストレックの第一印象だった。
ちなみに、このところはモデルチェンジのたびにサイズが大きくなる傾向が世界的に定着しているように思えるものの、このモデルの場合は意外なことに、最大のマーケットであるアメリカはもとより、カナダやオーストラリアといったいかにも「もうひと回り大きくしてほしい」という声が上がってきそうな市場からも、そうした要求が聞かれることはなかったという。
日本では“コンパクトSUV”とカテゴライズされるこのモデルも、かの地ではさらにそれを下回る“サブコンパクトSUV”の位置づけ。そうしたクルマはそもそも1人乗り……と、そんな割り切った考え方からサイズ拡大の声は出なかったのかもしれない。
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“フルモデルチェンジ”を実感させるインテリアの進化
もっとも、新旧2台が肩を並べれば、その見栄えにはやはりそれなりの差はある。例えばクロストレックと名を改めた新型のほうが、より大きなフロントグリルなどもあって、顔立ちが立体的でメリハリが利いて見える。あえてホイールと同心円を描かない異形のクラッディング処理や、より抑揚を強く感じられるフェンダーの張り出しなどから、筋肉質なイメージが強く感じられたのも新型だ。
一方、トヨタとの共同開発モデル「スバルBRZ」を除き、最新のスバル車に共通する巨大な縦型ディスプレイをダッシュボードの中央に据えるなど、インテリアの仕上がりがフルモデルチェンジならではであることは明白だ。
このダッシュボードに関しては、こうしたレイアウトを採るととかく下方に追いやられがちな空調のセンター吹き出し口を、細身の縦長形状としてセンターディスプレイの両サイドに配置し、なんとか“フェイスレベル”の送風を実現させていることに好感が持てる。スイッチ類をなんでもかんでも画面内に収めるのではなく、空調の温度調整やオーディオ類の基本操作を物理スイッチによってワンタッチでできるようにしているところも好印象。スイッチ類が姿を消してスッキリした一方で、「なにがなんだかワカラナイ」という思いを強いられるクルマも少なくなくなった最近では、どこか開発者の良心が感じられるようで、妙にありがたく思えた。
加えれば、前後左右の各方面に気になる死角が存在しないことも、このブランドの各車に共通して感じられる見逃せない美点。このあたりの筋の通った設計思想が各モデルに通底している点も、“スバリスト”を生み出す理由のひとつであるように思う。
一方、先に述べたようにボディーサイズやホイールベースに目立った変更はないことから、キャビン空間やラゲッジスペースは実質的に従来型と同等の大きさ。広いとは言えないものの、大人4人が無理なく乗り込め、それぞれが持ち込んだ1泊旅行の荷物は楽に積み込める……といった程度のユーティリティー性は確保されている。こうした点からも、開発陣が従来型のパッケージングに大いなる自信を持っていたことがうかがえる。
こうして、フルモデルチェンジながら基本的なディメンションの多くを踏襲したのは、さまざまな点で兄貴分の「フォレスター」にこれ以上近づくのは得策ではないという判断が下された結果でもあるはず。少なくとも、XVがクロストレックに代わっても「大きくならなかったこと」に安堵(あんど)した人は少なくないだろう。
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1.6リッターモデルが消滅し、FWD仕様が登場
グローバルでクロストレックの名に統一された新型車で、日本仕様に搭載されるのは2リッター水平対向4気筒エンジンと、「リニアトロニック」を名乗るCVTの後端に最高出力10kWのモーターを組み込んだ、「eボクサー」と称するパワーユニット1種類となる。ちょっと予想外だったのは、これまで設定のあった1.6リッターユニットを搭載したモデルがカタログから落ち、逆にこれまでは用意されていなかったFWD仕様が新たに設定されたことだ。1.6リッターモデルについては今後設定される可能性も考えられるものの、この点を含め、依然未発表である価格が大幅に上方に移行してしまわないかは気になるところだ。
一方、これまでのXVではすべてが4WD仕様であり、かつそれこそがコアコンピタンスのひとつというスバル車にもかかわらず、この期に及んでFWD仕様を新設定というのも、また別の意味で気になるポイントである。こちらは「多くはないとはいえ、非降雪地域に暮らす人などから『2輪駆動で十分』という声はあって、それが理由で販売の機会を逃してしまうことはやはり見過ごせなかった」という事情から、開発の当初から新型はFWD仕様を設定することを織り込んでいたとのことだ。
もちろん4WD仕様に対しては少なからず軽量化が図れ、わずかとはいえ駆動時のロスも減ることから燃費の向上が見込めるというメリットも考えられる。従来型のデビュー当時より、ずいぶんと圧が増した燃費改善要求など、「時代の要請」に応える意味合いもあるのだろう。
短時間の試乗でも感じられた進化のポイント
そんなクロストレックの先行試乗会は、静岡・伊豆は修善寺のサイクルスポーツセンターを舞台に行われた。ただし、一周5kmのサーキットコースのさらに前半区間を一部省略したうえで、4WD仕様とFWD仕様を各2周ずつ……と、走行の条件は極めて短時間かつ限定的だったことをあらかじめお断りしておきたい。
当然ではあるものの、両仕様を乗り比べるとやはりFWD仕様のほうが加速感はより軽やかな印象。晴天下のドライ路面ゆえ、トラクションの面で4WD仕様にアドバンテージが見いだせなかったということも、FWD仕様の印象を有利にしていたはずだ。CVTでありながらラバーバンド感の少ないリニアな加速フィールについては、両仕様ともに好感が持てた。いずれも、絶対的な加速能力に不満を抱くことは皆無だ。
全般的なフットワークのテイストは両仕様ともほとんど変わらず、リアにもダブルウイッシュボーンサスペンションをおごって専用のチューニングを施したというFWD仕様も、チープな印象を伴ってはいない。一方、このモデルに始まったことではないが、最高出力がわずか10kW≒13.6PSにとどまるモーターを組み込んだeボクサーは、エンジンを始動させずにクリープ力を発生できたり、中間加速のシーンで多少アシスト感を実感させてくれたりする程度で、率直なところそのありがたみは大きいとは思えない。これまでの体験を踏まえれば燃費改善の効果も大とは言えないので、重量やコスト増などを考慮すると、正直なところ個人的には、その採用に少々の疑問が残るアイテムではある。
骨格部材を組み立てた後にアウターパネルを溶接する、現行レヴォーグから採用されたインナーフレーム構造を採用し、構造用接着剤の塗布範囲も大幅に拡大するなどしたボディーの剛性感はより高くなり、2ピニオン化を図ったEPS(電動パワーステアリング)がもたらすステアフィールが自然な感覚をより増した点などは、明確なリファインの効果を感じ取れたポイント。かくも短時間のテストドライブではあったものの、取り付け構造やフレーム構造から見直したというドライバーズシートが、しっかりとした体のホールド感をもたらしてくれることなども確認できた。
今回はあくまでも“味見”程度のファーストインプレッションとなったが、どうやらその素性はかなりよさそうと思えたこのモデル。さまざまな路面や天候の下で、存分にドライブをできる日が待ち遠しい。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スバル・クロストレック プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2 kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6 kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001 A/S)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:949km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバル・クロストレック プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2 kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6 kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001 A/S)
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:941km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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