ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション(4WD/8AT)
エンジン礼賛 2024.01.06 試乗記 人気の「ランドローバー・ディフェンダー」に、2024年モデル限定で待望のV8モデルが登場。今や存在そのものがありがたい伝統の5リッターV8スーパーチャージドエンジンの息遣いに触れ、ハイパワーなクロスカントリー車ならではの魅力に浸った。ファン待望の大排気量モデル
ランドローバーの販売は世界的に好調で、日本でも2023年は、11月までで8094台と前年の約2倍を記録している。「レンジローバー」および「レンジローバー・スポーツ」がフルモデルチェンジしたこともあるが、それ以上に販売台数を押し上げているのがディフェンダーだ。
2019年に先行予約を開始したときから人気は凄(すさ)まじかった。当初は半導体不足などによる生産の遅れで、思うように販売台数は伸ばせなかったが、それも徐々に回復。ラインナップも「90」(2ドア)と「110」(4ドア)の2リッター直4ガソリンターボのみの状態から、2020年後半には待望の3リッター直6ディーゼルターボが、2022年にはロングボディーの「130」が加わり、2023年4月に受注開始した2024年モデルでは、5リッターV8スーパーチャージャーまで登場した。
現時点における2024年モデルの販売構成をみると、ボディータイプは110が実に90%。エンジンはディーゼルが90で66%、110で78%と人気が集中しているが、V8も90で23%、110で12%と健闘しているのには驚いた。車両価格がディーゼルの約1.5倍となる1500万円~と高価であるにもかかわらずだ。
日本では「メルセデスAMG G63」など、ハイパフォーマンスな本格オフローダーの人気が異様に高いが、こういったモデルが新車で買えるのもそう長くはないことを、ユーザーが察知していることも拍車をかけているのだろう。
時代錯誤と言われようと
ディフェンダーとV8の組み合わせは、前身にあたる「ランドローバー」の時代まで含めれば歴史が長く、1978年から始まっている。そもそも、1948年にデビューしたランドローバーは機動力の高さで人気を得ていたが、1970年代になると日本のライバルがより大型のエンジンを搭載して急伸してきた。それがこのクルマにも影響を与えたようだ。1994年にはディフェンダーV8は生産終了となるが、誕生50周年の1998年や70周年の2018年などに、特別なモデルとしてたびたび発売されてきた。2023年は75周年にあたり、再びV8が復活したというわけだ。
今回の試乗車は110の「CARPATHIAN EDITION(カルパチアンエディション)」で、クアッドアウトボードマウンテッドエキゾースト、マトリックスLEDヘッドライト、スエードクロスのステアリングホイール、グロスブラックブレーキキャリパーなどに加え、外装にはブラックのグリルやスキッドパン、ボンネット、クラッディングが用いられている。
折を見てはディフェンダーに設定されてきたV8モデルだが、もちろん世代によってそのエンジンは異なる。今回ディフェンダーに搭載された5リッターV8エンジンは、1998年に「ジャガーXJ8/XK8」で初出となった「AJ」型の最新バージョンで、レンジローバーのBMW製V8とは異なるJLRの伝統的なユニットだ。最大トルクは625N・m/2500-5000rpmで、ディーゼルの650N・m/1500-2500rpmに比べるとわずかに下回るが、2450kgという車両重量に対しても余裕はたっぷりとあり、スーパーチャージャーゆえ低回転域からスムーズにトルクが立ち上がる。街なかを流すようなシーンならば2000rpm前後で十分。50~60km/hでの巡航は1000rpm台で事足りる。
これぐらいならばエンジンは静かであまり存在を主張してこないが、わずかに右足に力を込めると3000rpmを超えたあたりからサウンドが勇ましくなり、グイッとボディーを押し出していく。発進時にアクセルを深く踏み込むと、テールが明確に沈んで猛然とダッシュ。Dレンジのまま加速していくと6500rpmまでけっこうな勢いで吹け上がっていく。最高出力の525PSは6500rpmで発生するので、高回転域での頭打ち感はまったくなく突き抜けていく感覚だ。いい意味で洗練されすぎておらず、どう猛な雰囲気があるのがたまらない。時代錯誤と言われようが、この血の通った感覚は素直に気持ちがいいのだ。
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欲しい人はお早めに
一方、パワフルなエンジンに対してシャシーは特に強化されていないようだが、それでも安定性は十二分にあった。本格オフローダーのディフェンダーだが、現行モデルはモノコック構造の「D7x」アーキテクチャーを採用している。他社の最も高剛性なラダーフレーム車に対しても3倍のねじり剛性がうたわれるだけあって、過去のモデルよりオンロード性能が飛躍的に高まっている。525PSを持て余すことがないのだ。
サスペンションはソフトタッチだが、エアサスペンションだからロールやピッチングを適度に抑えてくれる。コーナーを速く駆け抜けようとするとさすがにロールは深くなっていくが、ステアリング操作に対する反応は正確。遅れや違和感がないので安心感が損なわれず、思ったとおりに走れる。今回の110はタイトコーナーなどではボディーの大きさを感じたが、別の機会に乗った90のV8は身のこなしが機敏で楽しくさえあった。ディフェンダーV8の走りを存分に楽しみたいのなら、ショートボディーの90がオススメだ。
また基本的にはソフトな足まわりも、低速域で路面が荒れている場面では多少のゴツゴツ感があった。試乗車のタイヤは標準の20インチではなく、22インチだったので、それが影響しているのだろう。それ以外では乗り心地はおおむね良好で、120km/h制限区間の高速道路でも安定していた。ボディー形状のわりには横風にも強く、安心してクルージングできるのでロングドライブにも向いているだろう。
本格オフローダーながら、あり余るパワーでオンロードでも他を圧倒するディフェンダーV8は、一部の好き者にはたまらない魅力であふれている。ディフェンダー本来の持ち味を少しも損なうことなく、エンジンの美点が上乗せされているのも見どころだろう。ディーゼルの約1.5倍という車両価格や、決してよくはない燃費性能などにちゅうちょしてしまいそうだが、V8モデルは2024年限定グレードとされており、手に入る期間はごくわずか。気になる人は早めに行動したほうがいいだろう。
(文=石井昌道/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2450kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:525PS(386kW)/6500rpm
最大トルク:625N・m(63.7kgf・m)/2500-5500rpm
タイヤ:(前)275/45R22 115W M+S XL/(後)275/45R22 115W M+S XL(コンチネンタル・クロスコンタクトRX)
燃費:--km/リッター(WLTCモード)
価格:1685万円/テスト車=1728万4080円
オプション装備:ツインカップホルダー<フロント、カバー付き>(0円)/22インチ“スタイル5098”<グロスブラックフィニッシュ>(35万5000円)/22インチフルサイズスペアホイール(2万1000円)/オールシーズンタイヤ(0円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万8080円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1961km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:323.4km
使用燃料:51.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.3km/リッター(満タン法)/6.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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石井 昌道
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