ドゥカティ・スクランブラー ナイトシフト(6MT)
間口は広く 走りは楽しく 2025.05.25 JAIA輸入二輪車試乗会2025 人気の「ドゥカティ・スクランブラー」シリーズから、カフェレーサースタイルの「ナイトシフト」に試乗。伝統のLツインエンジンを搭載した軽快なロードスポーツは、どんなシーンでも乗りやすく、それでいてドゥカティらしいスポーツ性も備えたマシンだった。ドゥカティ初心者でもこれなら楽しめる
スクランブラーだっていうから、まったりとしたバイクなのかと思ったら、基本的な特性はやっぱりドゥカティだった。
サスペンションは十分にストロークがあってよく動くし、車体が軽いから扱いやすいのだけれど、バイク任せで曲がっていくような感じのハンドリングではない。このあたりが、他のスクランブラーとは違うところ。深くバイクをバンクさせようとすると、ライダーがステアリングで操作してやらないといけないのは、他のドゥカティのスポーツネイキッドと同じだ。ただし、その特性は穏やかだから、乗りにくいというわけではない。スポーティーに走ろうとしたとき、ステアリングを積極的に操作してやるようにすると、一気に面白くなるようなキャラクターなのである。
ドゥカティのスポーツネイキッドにはスパルタンな特性のマシンもあって、ワインディングロードなどを攻めようとして、うまく乗れなくて悩むことが何度かあった。でもスクランブラーには、そんなハードルの高さはない。これならドゥカティビギナーでも、マシンと対話しながらコーナリングを楽しめるだろう。ほかと履き比べたわけではないから確かなことは言えないが、たぶんオフロードイメージのタイヤ「ピレリMT60 RS」も、この乗りやすさに貢献しているのではないかと思う。
エンジンはLツインらしいリズミカルな鼓動感があって、スロットルを開ければトルルルルという感じで加速していく。中速トルクはそこそこだけれど、普通にストリートを走るのであれば十分。高回転までスムーズに回っていく感覚がとても気持ちよく、パワフルというほどではないにしても、実に扱いやすくて楽しかった。
もちろん、普段使いでの扱いやすさも申し分ない。今回試乗した大磯ロングビーチの特設コースには、Uターン等の低速コーナーもあったのだが、こうしたシーンは低回転域でギクシャクするエンジンだと、とても乗りにくくなってしまう。しかしスクランブラーは、ツインエンジンでありながら低回転でもよく粘るし、スロットルのマネジメントが秀逸で開けやすかった。
シャシーにしてもエンジンにしても、扱いやすく、それでいてドゥカティに共通するスポーツ性が感じられる。ドゥカティ・スクランブラーは、乗りやすさとバイクを操る楽しさを兼ね備えたマシンであった。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1449mm
シート高:795mm
重量:182kg(燃料除く)
エンジン:803cc 空冷4ストロークV型2気筒SOHC 2バルブ(1気筒あたり)
最高出力:73PS(53.6kW)/8250rpm
最大トルク:65.2N・m(6.7kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:153万8000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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