BMW S1000RR(6MT)
やっぱりトラックを走りたい! 2025.06.06 JAIA輸入二輪車試乗会2025 リッタークラスの4気筒エンジンに、ウイングレット付きのカウルを備えた「BMW S1000RR」に試乗。そのパフォーマンスは意外やストリートでも楽しめるものだったが、走っていると、やっぱりサーキットの景色が頭に浮かんでしまうのだった。ストリートでも楽しそうだけど……
最初にお断りしておくが、テスターのゴトー、ストリートでスーパースポーツを走らせるのは好きではない。超高回転型のエンジンは到底使い切れないし、ハイスピードを考えた車体も持て余す。だいたい、前傾姿勢は体が硬い還暦オヤジにはキツイのである。
今回試乗した大磯ロングビーチの特設コースでも同じような感想になるはずだから、最初にスーパースポーツが予定に入っているのを知ったら、お断りしていたかもしれない。それなのに現地に到着したら「S1000RRもお願いします」と担当H氏に言われて「えー」となった。しかも最新モデルはブレーキダクトが追加されてウイングレットも形が変わっている。バリバリのサーキット仕様といういでたちじゃないか。でも乗れというならしかたない、と走りだしてみたら、アレ? なんかいい感じなのである。
エンジンは最高出力210PSという途方もないパワーを発揮するのだけれど、このバイクのいいところは実用域でもけっこう気持ちよく走れてしまうところ。低中回転ではトルクがモリモリあって走りやすいし、4気筒らしいワイルドな力量感があるから、乗っていても楽しい(ストリートではけっこう重要)。クイックシフターも秀逸で、回転数が低いときもアップダウンともに気持ちよく変速ができる。S1000RRは昔から常用域で走りやすいバイクだったが、パフォーマンスだけでなくそこも進化しているのである。
試乗車はメーター表示で9000rpmからがレッドゾーンになっていた。ピークパワーの発生回転数が1万3750rpm、最大トルクも1万1000rpmで発生するというのに、これはおかしい。なにか設定で変わるのかと思って聞いてみたら、慣らし運転中はリミッター作動の回転数が変わるのだとか。そんな機能まで付いているんだ、と感心する。もっとも、ここまでの回転でも十分すぎるくらいに速い。これで本来のレブリミットである1万4000rpmまで回ってしまったらどうなってしまうのかと思ってしまうが、中速域だけでも十分に楽しめてしまうってところが、またすごい。
試乗した特設コースは、スーパースポーツには拷問のような(ちょっとオーバーに書いている)超低速コーナーの連続。ペースを上げるのはやっぱり大変で、バンク角を深くして勢いよく切り返そうとしたらとっ散らかってしまった。でもハンドリングはニュートラルで、無理せず普通に走るのであれば、問題なし。ブレーキやサスペンションのフィーリングも上質で気持ちいい。ただしサスのセッティングはハードだから、ストリートで路面の荒れた場所を走ったりしたら、印象が少し変わったかもしれない。
デザインだけでなく、エンジンや車体にもガッツリと手が入った2025年モデルのS1000RRは、ストリートでの乗りやすさも確保されてはいるのだけれど、やっぱり本領を発揮するのはサーキット。webCGで富士スピードウェイでの試乗を設定してくれたら、うれしいのだけれど。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2075×740×1205mm
ホイールベース:1455mm
シート高:832mm
重量:198kg(DIN空車重量)
エンジン:999cc 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:210PS(154kW)/1万3750rpm
最大トルク:113N・m(11.5kgf・m)/1万1000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:268万8000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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