トライアンフ・スピードツイン1200RS(6MT)
紳士な猛獣 2025.06.01 JAIA輸入二輪車試乗会2025 排気量1.2リッターの、巨大なパラツインエンジンを搭載した「トライアンフ・スピードツイン1200RS」。どう猛さとジェントルさを併せ持つブリティッシュロードスターは、ストリートを楽しむバイクの最適解ともいえる一台に仕上がっていた。ロードスポーツの最適解
トライアンフ・スピードツイン1200RSは、ちょっと見た感じ、レトロネイキッドなデザインでコンパクトだからとても乗りやすそうな感じがする。しかしだまされてはいけない。倒立フォークやブレーキ、太いラジアルのハイグリップタイヤからは、ただものではないという雰囲気がプンプンと漂ってくる。乗ってみたら予想どおり……というか予想以上に元気なバイクだった。
圧倒されるのは中回転域の力強さ。3000rpmも回っていれば、スロットルを開けた瞬間に怒涛(どとう)のトルクで加速していく。うっかりグイっとやったらのけぞりそうである。レブリミットの7000rpmまではアッという間。高回転は回らないけれど、ここまで中速トルクがすごければ、そもそもその必要性さえ感じない。俊足ランナーのような鋭さではなく、相撲取りのごとき力持ちのフィーリングである。
エンジンは270°クランクのパラレルツインだが、とてもスムーズで振動もなく、ツインのドコドコというパルス感もほとんどない。排気量1.2リッターのツインがここまでなめらかな回り方をするとは恐れ入った。
またこのエンジン、パワフルなだけではなく、開け始めのレスポンスがマイルドで使いやすい。1500rpmくらいからでも、スロットルを開ければギクシャクせずに立ち上がっていく。スポーツモードにしたらどうなるのかと思ったら、それでもツキが穏やかなので、若干拍子抜けしそうになる。ところがそこから大きく開けると豹変(ひょうへん)。ロデオでゲートが開いた牛のようにすっ飛んでいく。
しかし、テスターのゴトーが思うに、スピードツイン1200RSの一番の魅力は、スポーティーでありながら過激すぎないところ。前述したエンジンだけでなく、ハンドリングも同じだ。サスペンションはしなやかに動いてくれて、バンクしていくときのステアの動きも自然。スポーティーに走ろうと思ったときは自分でハンドルを操作しなければならないが、バリバリのスポーツネイキッドのようなシビアさはない。ジェントルさと過激さのバランスが、実にいいあんばいである。ストリートで楽しくスポーツライディングを楽しみたいライダーにとっては、理想的な性格かもしれないなあと、走りながら思ったのであった。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2073×792×1127mm
ホイールベース:1414mm
シート高:810mm
重量:216kg
エンジン:1197cc 水冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:105PS(77kW)/7750rpm
最大トルク:112N・m(11.4kgf・m)/4250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:222万9000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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