スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】
荒野のピュアスポーツ 2026.01.07 試乗記 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。まるで剣豪
「うわッ! ハジける加速とはこのことか!!」といきなりビックリさせられたのが、スズキの400ccオフローダーことデュアルパーパスモデルのDR-Z4S。スロットルを軽くひねっただけで、151kgのボディーが前輪を上げてウイリーしかねない突進力を見せる。うーむ、油断ならないランパンテ……なんてカッコつけている場合ではない。視点は高い。シートは硬い。エンジンは速い……。
当初の興奮がさめて落ちついて観察してみれば、DR-Z4Sのグリップやステップの位置はごく自然で、むしろアップライトのオフ車らしい、もとい! デュアルパーパスらしい乗車姿勢をとれる。それでも普段、「ヤマハ・セロー250」というトレッキング用“お気楽”バイクを足にしている身には、スロットルレスポンスの鋭さや、フレームの剛性感の高さ、スポーティーに締まったサスペンションと、なんというか「研ぎ澄まされたマシン」を感じさせるニューカマーだ。初対面でバッサリやられた感じ。
内心、冷や汗をかきながらスタッフがいる場所にもどると、編集者が「(フォトグラファーにして元オフ車乗りの)Kさんが、ライドモードを『A』にしていましたから」と笑う。3種類の出力特性から選べる「スズキドライブモードセレクター(SDMS)」を、最もアグレッシブな設定にしていたわけだ。嫌がらせか!?
その後、ナチュラルな「B」やレインモードとおぼしきおだやかな「C」も試してみると、最新の電子制御を採り入れたバイクらしく、わかりやすくパワーカーブの変化を体感できたが、本質のところでの「寄らば切るぞ」の剣呑(けんのん)さは変わらない。いや、セロー乗りの自分、おびえすぎ? ちなみに、この新型DRは電制スロットルを採用しながら、あえてスロットルケーブルを残してライダーのフィールに寄り添っている。さすが、こだわりの一品である。
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そこここに宿るつくり手の本気
さて、スズキDR-Z4Sは、かつての「DR-Z400S」を令和によみがえらせたモデル。先代同様、姉妹車にオンロードを舞台にするスーパーモタードこと「DR-Z4SM」がある。主な違いはタイヤ径で、Z4Sが前:21インチと後ろ:18インチ、Z4SMは前後とも17インチだ。
15年を超える空白を経ての復活を可能にしたのが、内部パーツの約9割を刷新したという398cc単気筒エンジンである。ツインカム4バルブのメカニズムを組み込んだシリンダーヘッド、カムシャフト、ピストン、バルブなど新設計パーツ多数にして、デュアルスパークプラグ化。10ホールインジェクターを備えたフューエルインジェクションシステムを採用して、厳しい排ガス規制(Euro 5B)をみごとにパスした。最高出力38PS/8000rpm、最大トルク37N・m/6500rpmのアウトプットはZ400Sのスペックにわずかに届かないが、それを言うのはやぼというものだろう。
レーシィなドライサンプユニットに、最新の電子制御を組み合わせたスズキ渾身(こんしん)の一作を載せる揺り籠は、新設計の鋼管セミダブルタイプ。興味深いのは、エンジンのFI化に伴い大型化したスロットルボディーや吸気系パーツを逃がすため、タンクレール部は燃料タンクを左右から挟むツインスパー形状になっていること。まさにオフロードのスーパースポーツ!
サブフレーム、スイングアームともアルミ製で、凝った形状が美しい。サスペンションは前後ともKYB製になり、フロントは倒立フォーク、リアは言うまでもなくリンク式モノショックで、ともにフルアジャスタブルだ。撮影中のDR-Z4Sを眺めていると、いかにも“ただ者ではない”オーラが漂っていて、シンプルだけれど素直にカッコいい。いまこそスズキファンは言うべきですね。「“高そう”ではない。高いんです!」。Z4Sの価格は、119万9000円だ。
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ワタシの足が長ければ!
スズキDR-Z4Sのシート高は890mm。オフ車のシート高は、実際にまたがってみると、サスペンションが柔らかくてボディーが沈むし車重も軽いから、それほど気にならない……てなことを言ってみたいもんですな。身長165cmの短足ライダー(←ワタシです)にとって、DR-Z4Sのそれは文字どおりハードルが高く、正直に言いましょう。シートにまたがりお尻を右にズラして右足のつま先でギリ接地していると、左足でサイドスタンドを払うことさえままならない。万が一オーナーになったなら、サイドスタンドから横に伸びるアシストバーは必須となろう。
とはいえ、ひとたび走りだしてしまえば、たとえば街なかなら、停車時に車道より一段高い歩道の端に足をかけたりして、意外となんとかなってしまう。フルカウルのスポーツモデルとは一味違う、相対的に軽いボディーにシンプルなスタイル、鋭い出足と破竹の加速、そうしたアグレッシブさに魅せられ、「もしやローダウンバージョン、出ないかな?」と夢想していた自分に悲報。体格のいい人が多い欧米では、標準シート高は920mmということで、つまり日本仕様ははなからローダウン仕様というわけだ。残念。
自分とはあまり縁がなかったが、人知れず(!?)DR-Z4Sの走りをサポートしてくれる「STCS(スズキトラクションコントロールシステム)」には、積極的に未舗装路を攻めたいウデ自慢のために、タイヤの空転をある程度許容する「G(グラベル)」モードが用意され、さらにABSはリアのみならず、「前後ともカット」が選べるようになった。DR-Z4Sを自在にコントロールし、かっこうの相棒として活用できるエキスパートがうらやましい。
同車のハードルを跳びきれなかった者として願うのは、スズキが新開発ユニットを活用したシングルスポーツを世に出してくれること、そして自分の足があと20cm伸びることである。
(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=スズキ)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2270×885×1230mm
ホイールベース:1490mm
シート高:890mm
重量:151kg
エンジン:398cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:38PS(28kW)/8000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/6500rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:27.7km/リッター(WMTCモード)
価格:119万9000円
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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