ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ?
2026.03.13 デイリーコラム生産はルノーコリア
日本のファンが「ルノー・グランカングー」の発表で盛り上がっていた2026年1月、お隣、韓国では、より大きなニュースがルノーから飛び出していた。大型のクーペSUV「フィランテ」が、世界初公開されたのだ。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4915×1890×1635mmと、長さと幅はグランカングーとほぼ同等。ルノーのニュースリリースでは「インターナショナル・フラッグシップ」と紹介されている。
それにしても、なぜ韓国でワールドプレミアなのか? それは、この国にルノーコリアというルノー直系の自動車会社があるからだ。同社は2022年まではルノーサムスンと名乗っていたが、サムスンが手を引いたことで現在の名前になった。かつて日本にも導入されていた「コレオス」や、現在販売されている「アルカナ」も、ここが生産を担当している。
そんなルノーコリアだが、実は中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディング・グループ)も資本参加している。以前のコラム(参照)で、ルノーとハイブリッド車の開発で提携したことを紹介した、あの中国のメーカーだ。その体制の下で最初に生まれたのが、コレオスの進化形である「グランコレオス」で、今回紹介するフィランテは第2弾のモデルになる。
クルマの中身はボルボ/ジーリー系?
車台はルノー・日産・三菱アライアンスとは関係のないボルボの「CMAプラットフォーム」で、最近では「XC40/EX40/C40」等のボルボ車に加え、ジーリー・グループの各車にも採用されているものだ。
1.5リッター直列4気筒エンジンとモーター、2つの遊星ギアなどを組み合わせたフルハイブリッドのパワートレインも、ルノーとジーリーの合弁企業であるホース・パワートレインで開発されたもの。わが国でも展開されているルノー独自の「フルハイブリッドE-TECH」とは別物である。フィランテの場合、システム最高出力は250PSに達するという。日本車でいえば「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」のハイブリッドが250PSだから、余裕のあるパワートレインといえそうだ。燃費は韓国仕様で15.1km/リッターと公称されている。
ちなみに、車名のフィランテ(Filante)とは、「流れるような」という意味のフランス語だ。ルノーでは1950年代の速度記録車が「エトワール・フィランテ(流れ星)」を名乗り、また2025年に発表された電気自動車のコンセプトモデル「フィランテ レコード2025」が、一回の充電で1000km以上を走破するという記録を残している。
これまでとは趣の異なるデザインの理由
スタイリングは、これまでのルノーと比べると装飾過多に感じる。フロントグリルやエンブレムにイルミネーションを入れるのは他車にも例はあるが、これまでのルノーは“あっさりフェイス”が多かったので、激変と呼びたくなる。リアパネルをブラックアウトした後ろ姿も、ルノーではあまり見られなかった。
こうした仕立ては、そもそもフィランテが欧州“以外”の市場をターゲットにしていることが大きい。生産拠点の韓国に加え、南米や中東諸国に展開していくとのこと。ちなみに欧州向けには、やや小柄なクーペSUV「ラファール」が用意されている。
インテリアは写真を見る限り、インストゥルメントパネルまわりはコレオスと似ているものの、ステアリングホイールやシート、ドアトリムはクーペSUVらしい凝った造形や仕立てになっているようだ。
わが国でルノーというと、伝統的なコンパクトハッチバックに、同じくコンパクトなSUV、そして「カングー」のようなMPVの印象が強い。フィランテが属するクラスの車種というと、「サフラン」や「アヴァンタイム」などが輸入されたことはあるものの、目立った結果は残せなかった。たしかに、日本人はコテコテ系のカーデザインが好きだし、パワートレインもわが国でメジャーなハイブリッドで、しかも隣国生産である。ラインナップ不足で悩むわが国での事情を思うと、もしかしたら導入されるかもしれないが……。
それにしても、日産や三菱との関係はキープしながら、ジーリーと手を組み、1990年代に合併寸前までいったものの物別れに終わったボルボと同じプラットフォームを使い、こんな立派なクーペSUVを送り出す。こうした立ち回りはフランス外交の「戦略的自律」に通じるところがあって、個人的には、そっちのほうに感心してしまった。
(文=森口将之/写真=ルノー/編集=堀田剛資)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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