第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.07.09 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ強力なライバルに本当に勝てるのか?
ついに発表されましたよ、期待の新型「キックス」! 日産の売れ筋コンパクトSUVですが、注目はざっくり2つ。まずは「リーフ」「エルグランド」と出てくる日産の新型車のなかで、一番台数が見込める人気量販ジャンルであるってことと、あと個人的見解ですけど、初代は質感的にビミョーな部分があったので、どこまで進化したかってことです。
サイズ、デザイン的には悪くなかったですが、2020年に国内発表されたときは、日産自慢のハイブリッド化=「e-POWER」化がなされたとはいえ、2016年にブラジルで発表されてから4年もたってましたし、今やASEANの工場産だからといって質感が落ちることはないはずですが、初代に限っては純国産の「ホンダ・ヴェゼル」や「トヨタ・カローラ クロス」に比べ、インパネやシート、光モノ系がビミョーに見劣りしていた印象も。事実、モデル末期は国内月販1000台前後とライバルに大きく水を開けられてました。
それもあってか、新型ではついにルノーと共作の新世代CMF-Bプラットフォームを使ってるし、サイズやデザインが大きく変わったうえに、なんと国内生産化! 最後の追浜工場生産モデルになってるわけですよ。
加えて効率、パワーともに大幅アップした第3世代e-POWERも搭載。これまでネガだった部分が全部なくなり、一新しているといっていい!
ってなわけで新車発表会で急きょ開発リーダーの山本哲也さんをガッツリ直撃してみましたっ。
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ボルボやフォルクスワーゲンにも負けない立派感!
小沢:新車発表でノッてるところ申し訳ないですが、いきなりシビアな質問を(笑)。ぶっちゃけカローラ クロス、ヴェゼルなど競合が強いです。果たしてこの新型キックスで勝てますか?
山本:はい(笑)。
小沢:厳しいとこから言うとスタート価格。シンプルなフリート系の「Xシンプルパッケージ」は299万円ですが、「X」は約326万円、「X+」で約355万円、最上級の「G」は約390万円(全部FFの価格。4WDの「e-4ORCE」はそれぞれ34万円くらい高い)。競合に比べて一見高いんじゃないかという。カローラ クロス(今は全車ハイブリッド)でも300万円切りで、装備充実の「Z」でも361万円くらい。
山本:ただそのぶん、装備が充実していますし、われわれのマーケティングチームも競合モデルを確認をしながら装備を決めているので、決して高くはないと思います。
小沢:実はそうなんですよね。グレードによってはデカい12.3インチナビが標準ですし、驚いたのは「プロパイロット」が全車標準装備だということ。初代キックスにも付いてましたが、あれは海外生産でわざわざ取り外すのが大変だからという理由でした。国内産のノートは当初ベーシックグレードにはプロパイロットが付いてなくて、高値のオプションを選ぶ必要がありました。ところが今回そんな小細工はしてないと。
山本:もう、かなりいろいろなご意見をいただき、なおかつ反映させていただいておりまして(笑)。
小沢:なにより今回は外観やインテリアの質感が爆上がりしたと思っていて、申し訳ないですけど、旧型はブラジルで発表されたタイ生産車で、正直アジア戦略車か? みたいな匂いもありましたけど、ボルボとかフォルクスワーゲンに近い雰囲気すら感じるという。
山本:ありがとうございます。もう目いっぱいタフな感じを出したいっていうのがデザインチームの狙いで、フードも高いし、横幅いっぱいまで角張ったフォルムに。
小沢:フェンダーまわりの盛り上がりも繊細で思ったより質感高いです。
山本:細かな装飾、Vモーショングリルもそうなんですけど、全体的な造形としてかなり立派に見えるように考えています。
小沢:もう、単純に今までより高そうに見えるという。下世話な言い方ですが(笑)。
山本:特にこの最上級のGグレードは、黒いつやのグロスブラックをバンパーやサイドまわりに全面的に使っていて、事実上の日本特別仕様です。実際に海外のキックスにはないので。
小沢:なるほど。価格は390万円ですが、確かにそれだけのことはあると。
山本:日本のお客さまは特に上質感を求められるのでそこは意識しました。
最後の追浜ファクトリー産日産車
小沢:つくづく初代の反省が生きてると。それからキックス、アメリカで売られてるのはメキシコ産ですけど、日本仕様はなんと国内産なんですよね。しかも最後の追浜産。
山本:そうです、はい。
小沢:うれしいんですけど、なぜなんですか。今や海外で効率的につくるみたいなことは常識になっていて、インド生産車とか増えているのに、もうすぐたたんじゃう工場でつくるという。後に九州工場に移るみたいですが。
山本:生産拠点と販売地域の適正化みたいな取り組みのひとつで、実は今、日本マーケット向けは日本でつくるのが一番収益性が高いという。
小沢:円安もあるだろうし、地産地消は為替変動に躍らされないから、いいんですかね。
山本:そうだと思います。
小沢:それから結構日本専用のつくり込みもしてると聞いたんですが。
山本:そうなんです。フロントバンパーなどの黒い樹脂の部分を日本仕様では細くしてあって、日本のお客さまに好まれるようにボディー同色部を増やしています。
小沢:うわ、そうなんだ。凝ってる。
山本:インテリアも特に前席にかなりこだわっていまして、現行型の質感もマイナーチェンジで上げたんですけど、「物足りない」というお声があったので、新型ではマテリアルをさらに吟味しています。
小沢:なるほど。だからなんですね。安いXのファブリックシートの質感も意外と高いし、ステッチなんかも全面ダブルで入ってるという。
山本:手触りも結構いいと思います。
小沢:そうそう、ちょっとスーツみたいな感覚もあるし、メタリックの質感もいい。
山本:Xのシートは表皮に特徴的な「X」パターンが入っていて、触ってみると非常に柔らかいですよ。
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リアのヘッドルームはヴェゼル超え?
小沢:あとボディーサイズですけど全長が8cmくらい伸びたので後席が広くなってますね。
山本:足元は特に広くなっていて、膝まわりで23mm伸びています。
小沢:ただ、厳しいことを言うと、ホンダのヴェゼルって後席が異常に広いんですよ。そのぶん、ラゲッジスペースが……っていうところはあるんですけども。
山本:われわれの測り方だと室内の広さはほぼ一緒で、特に後席のヘッドルームはヴェゼルより広い。
小沢:何でそんなことが実現できるんですか? 足元は正直ヴェゼルの方が広そうですけど、もしやキックスはルーフを高くした?
山本:もちろんヴェゼルは全高が抑えてあるということもありますけど、キックスはリアにリクライニング機能が付いていて、その角度もあって頭上空間が広く感じていただけるようになっています。
小沢:なるほど。競合よりも寝そべって座れるから頭まわりが広いんですね、キックスは。
山本:はい。
小沢:そのぶん、ラゲッジ容量はどうですか?
山本:「ゴルフに行きたい」っていうお客さまが結構いらっしゃって。ラゲッジスペースには少なくともゴルフバック1個を背もたれを倒さなくても載せられるようにしました。
小沢:そうなんだ。確かにこれくらいのコンパクトSUVって意外にゴルフバッグが詰めなくて。特にヨーロッパ車だと1個も入んないんですよね。ドイツ系もフランス系も。
山本:はい。現行のキックスもかなり苦しかったです。
小沢:なるほど。いろいろな面で日本人のことを考えたつくり込みがなされていると。
山本:そうですね、はい。
小沢:ひとつ気になったのは、ラゲッジの床が妙に高くないですか?
山本:これはe-4ORCEなので、どうしてもリアモーターの影響がありまして。
小沢:そうか。そこは残念。実際、フロア下を見るといろんな制御系が積まれてますし、モーターも結構デカいですね。
山本:そうなんです。リアモーターの最大トルクを現行型から40%も引き上げているので。そのぶん非常に安定して気持ちよく走れるんですけど、荷室に少ししわ寄せが。
小沢:なるほどね。これまた日本人が大好きな4駆にこだわったせいだ。今まで以上に。
あの日産が日本回帰
小沢:最後に新作の第3世代e-POWERですけど、実はここが一番驚いてまして、なんとWLTCモード燃費の最良スコアが25.7km/リッター! ずいぶん頑張りましたね。
山本:はい、頑張りました(笑)
小沢:第3世代を注目のエルグランドより早く搭載してきたと思ったんですけど、私的には、正確には半分新開発かな? と感じたんですよ。というのも1.4リッター直3エンジンは確かに発電専用ですけど、4年前の現行「セレナe-POWER」の時に開発されたものじゃないですか。発電専用だけど、イチから発電専用として超効率的につくられたという意味では、エルグランド用の1.5リッターターボのほうがもしや上じゃないのかと?
山本:そこは難しい部分がありますが、開発年代としてはそうかもしれません。
小沢:ではこの低燃費はどうやって達成したんですか?
山本:やはり大きくはエンジンの力と新規開発eアクスルの5-in-1ユニットの力、あとは車両全体ですね。
小沢:エルグランドもそうですけれど、根本はエンジンの熱効率の高さで、それを駆動系で生かしつつ、静粛性も高めたと。
山本:そうですね。基本的には30km/hぐらいの低速では1600rpmで、一番燃費のいいポイントが大体2000rpmぐらい。ほとんどの領域で定点回転しています。
小沢:なるほど。屋台の発電機のようにブーンとほとんど一定速で回ってるんだ。
山本:高速道路では2000rpmから2400rpmぐらいに上がりますけど。基本的にはもう2000rpm前後でずっと発電するという。
小沢:しかし、トヨタはともかく燃費でホンダに並んできたのには驚きました(ハイブリッドのヴェゼルの燃費は21.2~26.0km/リッター)。やっぱ純粋なシリーズハイブリッドだとエンジンパワーをいったん全部電気に変え、それをモーターで再び動力に戻すから、どこかにロスがあるような気がするんですよ。トヨタのシリーズパラレル式と比べると負けちゃう。でも今回の第3世代は相当いいですよね。
山本:はい。やはり日本のお客さまの「燃費」に対するお声はすごく大きいので。
小沢:なるほど。新型キックスのキモはつくづく「日本回帰」ですね。デザインにしろ質感にしろ走りの質にしろ、すごく日本人の感性やこだわりを意識している。
山本:はい。そういう部分はあるのかと思っています。
日産がかつて「日本市場軽視」と揶揄されていたとはとても思えない出来映えのキックス。一時のグローバル主義から離れた日本的な物づくりがなされているようです。
マジでクルマはよさそうです。まだ乗っていませんけど(笑)。今度、試乗でもできたらリポートいたしますのでお楽しみに。アデュー!
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)
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小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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