第58回:ええ? 燃費でも「アルヴェル」に勝ってるだとぉ…… スクープ! 激白新型「エルグランド」のホントの話
2026.06.10 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ 拡大 |
果たして本当に日産大復活の新シンボルとなるのか? 今夏登場、新型「エルグランド」に初試乗してきました。
ライバルに負けじと富士山をイメージした優美すぎる台形シルエットに、これまた新色「フジドーン」を使った「至極(シゴク)」なるシブいツートンカラーなどかつてないオリエンタルテイスト爆発! さらに各所で絶賛中の走りや静粛性も。
具体的には高機能フィルムを使った新遮音ガラスや3列個別対応のノイズキャンセル機能に驚くけど、オザワ的に勝手にこれはスクープか? と思ったのが開発トップの一野健人エンジニアによる「燃費でもトヨタ超え」の一言。
確かに新型エルグランドの第3世代「e-POWER」のデキはいい。ピークで想定500N・m超えのトルクは余裕だし、100%モーター駆動からくる滑らかさや前後ツインモーター4WDの「e-4ORCE」によるピッチング制御もなかなか。
だけどね。正直ハイブリッド燃費じゃ最新のトヨタ式ハイブリッドには勝てないでしょ? と思ってたところにこの意外なるお返事。ホ、ホントなんですか?
拡大 |
拡大 |
第3世代e-POWERの実力
小沢:スイマセン、一野さん。今回開発エンジニアを直撃するにあたり、事前予想で勝手にテーマを決めてまして……。
一野:はい。
小沢:新型エルグランド、燃費じゃ競合に微妙に負けるけれど、スタイル、走り、質感、デザインで勝つ! と。ただし燃費はさすがにトヨタなのかと。
一野:いやそれが燃費でも……。
小沢:マジで? ホントに?
一野:勝ちます(ニヤリ)。
小沢:ええ!? それマジで驚きですけど。まず走りから分析すると、今乗ってきましたが新型はいいですね、やっぱり。
一野:ありがとうございます。
小沢:ぶっちゃけ、トヨタのハイブリッドシステムが駆動にモーターもエンジンも使って最高燃費効率を出すのに対し、日産のe-POWERは、一度すべてのエンジンパワーを電気に変換してからモーターで駆動。要するに加速は完全にモーターのみなので、やっぱり静かさとかスムーズさ、パワーでも競合に勝つと。
一野:はい。
小沢:実際に全域での滑らかさが本当にスゴくて。このあたりはどうやって煮詰めた感じですか?
一野:やはり第3世代e-POWERで、静粛性を向上させつつ、出力もきちんと確保したうえで効率のいい回転域を常に使うと。
小沢:そうやって低燃費をたたき出すと。
一野:先ほど常に加減速でモーターをっておっしゃいましたけど、実際には大きくアクセルを踏んで、加速に対してパワーが必要なときには、エンジン回転も上げてサポートします。
小沢:そうか、発電量を増やすためにエンジンの回転数は上げるんですね。
一野:第3世代e-POWERはエンジン自体の効率アップはもちろん、いわゆるeアクスルが「5 in 1」になって、エンジンとモーター、インバーター、ギアボックスほか5つが一体化。効率と剛性感も上がっています。
小沢:同時に燃費を上げてると。ついでに省スペース化も果たしている。
一野:そうですね。全体にユニットサイズを小さくし、凝縮させて剛性を上げてます。
小沢:あと全車4WDでしかも前後モーター駆動のe-4ORCEですけど、これはどう効いてる?
一野:アクセルを踏んだときにノーズアップするので、前後の駆動力配分で抑えたり。逆にブレーキ時のリアのリフトアップも同様です。
小沢:オマケに今回は、e-POWERとe-4ORCE、さらに可変サスペンションの「インテリジェントダイナミックサスペンション」も付いてます。これも効いてますか。
一野:効いていますね。コーナリング中にリアへのトルク配分を変えるなどして回頭性もよくなっていますから。
3列個別に効く! 新世代ノイズキャンセリング
一野:音に関しては新開発のアクティブノイズコントロール、いわゆるノイズキャンセリング技術をフル活用しています。
小沢:いわゆる最近のヘッドホンのように、スピーカーから周囲のノイズと反位相の音を出して音を打ち消すってことですか?
一野:はい。まずはエンジンのそばのユニットとか、サスペンションの近くに加速度センサーを付けて振動をピックアップします。
小沢:なるほど。
一野:それプラス車内音をですね、フロントに3つ、セカンドに1つ、サードにも専用マイクを付けて拾っています。
小沢:そんなことしてるんですか? マイクはもちろん、3列それぞれ別に?
一野:そうです。1列目、2列目、3列目でそれぞれ別に専用の音を位相をずらして出していますので、すべての席でノイズキャンセルが効いています。
小沢:マジすか?
一野:はい。ノイズ源であるエンジンからの位相の遅れとか音の遅れを計算して全部のスピーカーから違う音を出しています。3列すべて静かになるように、エンジン音だけでなくて、ロードノイズも打ち消すような音を。
小沢:なるほど。それからプラットフォームは完全新開発ではない?
一野:既存のわれわれが「Dプラットフォーム」と呼んでいるものをe-POWERが搭載できるようにアップデートして使っています。
小沢:そこでさっきのノイキャンもそうですけど、遮音材、吸音材をずいぶんと多く入れてるそうで。
一野:新型はフロア高を上げて目線を高くしたので視界もいいですし、開放感も上がります。
小沢:既存のあるものをうまいこと活用して、全体をブラッシュアップしていると。
2列目・3列目の乗り心地を確認
小沢:ところでミニバンの走りって実は結構難しいじゃないですか。「運転席はいいけど、2列目や3列目では酔う」ってのがミニバンあるあるで、試乗会じゃそこが案外試せなかったり。
一野:今回はぜひそこを確かめていただきたく、私が運転するので後ろに乗ってみてください。まずは2列目で「スタンダード」モードからスタートしてみましょう。
小沢:なるほど。モードによっても結構違うと。しかし、運転席もよかったけど、確かに2列目もいいですね。ミニバンにありがちな無駄に大きく増幅されるうねりがない。
一野:ありがとうございます。
小沢:ミニバンの後席って細かい振動以上に大きなうねりが残ったりするじゃないですか。でもこのエルグランドはかなり抑えられている。これは四駆のe-4ORCEもだけど、可変サスペンションも効いてるんですか。
一野:はい。減衰力をリアルタイムで変えていますし、それも4輪別々に減衰力を制御しますので効果的です。
小沢:それ、何分の1秒ぐらいの単位で制御を?
一野:確か数十ミリ秒単位だったかと(未確認)。
小沢:それはセンサーを見ながら瞬時に?
一野:サスペンションへの入力と車輪速で必要な減衰量を計算しています。
小沢:そこをどうやって煮詰めたんですか?
一野:机上での計算もするんですが、今回はとにかく走り込んで走り込んで煮詰めました。普通の開発とは比べ物にならないぐらい走りましたから。しかも運転席のみならず後席にも。
小沢:2列目、3列目も実際に乗って。
一野:あとはなるべく公道で走れるよういろいろ試しました。
小沢:かたやe-4ORCEはどういう風に効いてるんですか?
一野:例えば、こういう場所でブレーキを踏んでいったときに、フロントが沈み込むノーズダイブをあまり起こさないように制御しています。
小沢:なるほど。ブレーキを踏んだときにもフラット感がありますね。
一野:あと、ここからカーブに入りますが、旋回時には内輪のブレーキを少しだけつまんでいます。
小沢:なるほど。ある種のベクタリング制御ですね。
一野:同時に外側・後ろ側のモーターのトルクを増やして、フロントの舵の利きをよくする。コーナーを「進入」「中間」「脱出」の3ステージくらいに細かく分けて制御しています。
小沢:あ、確かにナビ画面にe-4ORCEの作動状況が出てる!
一野:そうなんです。今どう動いているかこれを見ればリアルタイムで分かります。
小沢:なるほど。ブレーキを踏んで、離して……。あ、減速してハンドルを切った瞬間に、前のブレーキマークが赤くなって、内側がオレンジっぽくなった! こうやって常に4輪の制御状態が目に見えるんですね。
一野:では、ちょっと「スポーツ」モードに入れて、このワインディング路を行ってみます。
小沢:おお。足まわりが引き締まり、横Gの立ち上がりもシャープになりました。
一野:ここは運転手的には手応えのあるステアリングフィールにはかなりこだわりました。立ち上がりで左右のブレーキを微妙にかけながら、クルマの向きをコントロールしています。では、ここから「コンフォート」モードに変えてみます。
小沢:なるほど。ここも特に道路の継ぎ目の乗り越えショックが柔らかくなったというか、振動が遠めからトントン聞こえてくる感じに。
一野:コンフォートでは足まわりを柔らかくしてあるんですが、それでいて姿勢はなるべく変わらないように制御しています。
小沢:確かに。柔らかいんだけど妙にグラッとするロールがない。これができるのはやっぱり前後ツインモーターだからですかね。
一野:おっしゃるとおり。e-4ORCEによる緻密な制御の恩恵が非常に大きいです。前後別々にトルクを制御できるので。
小沢:確かにフロントにエンジンがあって、プロペラシャフトでリアを駆動するメカ四駆じゃ、ここまで細かく制御できないですよね。
一野:フロントだけのフル電動とか、機械式の4WDシステムではちょっと難しいかと。
小沢:そこは正直、「三菱アウトランダー」のS-AWCにもちょっと似てるかもです。前後フル電動の高速かつ緻密な制御が、背の高いミニバンボディーに効いている。
アルヴェル超えの燃費はホントですか?
(ここでクルマを止めて3列目シートに移動)
小沢:さて、言われたとおり3列目に移りましたが、ぶっちゃけミニバンの3列目って2列目より厳しいじゃないですか。フロントを軸に後ろが揺さぶられるかたちになりがちだし、特に3列目はリアタイヤの真上にくるので。
一野:確かにそのとおりなんですが……。
小沢:でも乗り心地は割といいですね。正直、2列目ほどよくはないけど、突き上げは思ったほどじゃない。もちろん今回はテストコースなんでそもそも道がそれほど荒れていないということもありますが。これには何が一番効いてるんですか?
一野:やっぱり電子制御サスペンションですね。可変ダンピングのスピードを路面に合わせて最適化しています。
小沢:それと確かに3列目にも、専用マイクはもちろんスピーカーも付いてます。正直、どんな音で打ち消しているかは分からないですけど、後ろからの音はあまり感じないです。
一野:ありがとうございます。3列目もしっかりつくり込んでいるのでよかったです。
小沢:ここが結構難しくて、3列目に子どもが座る場合って多いと思うんですけど、小さな子どもって何がなぜ不快か自分じゃ分からなかったりするじゃないですか。で、漠然と「いつも乗ると酔う!」と思ってクルマが嫌いになっちゃったりする。実はそのクルマの3列目の乗り心地が悪いだけだったりするのに。
一野:そうなんです。だから今回は前後のバランスが瞬時に変わるようにして、酔いにくいフラットな乗り心地を目指しました。
小沢:なるほど。新型エルグランドの走りに対するこだわりはよく分かりましたが、冒頭の燃費問題です。まだ詳細なスペックが正式発表されてないんですけど燃費で「アルファード/ヴェルファイア」に勝ってるって……ホントですか?
一野:ホントです(笑)。
小沢:でもアルファードのハイブリッドって確かWLTCモードでリッター18km後半(※最良は「G<FWD>」の18.9km/リッター)とか、ものスゴい数字を出してました。そこにシリーズハイブリッドのエルグランドが勝つなんて、正直リクツ的に無理だと思ってたんですが。
一野:なるほど。
小沢:リクツ的にトヨタのハイブリッドはためた電気でモーターを駆動すると同時に、時折エンジンで直接駆動して使い分ける。エンジンの効率のいいところをダイレクトに使いつつ、今まで捨てていた部分を上手にモーターで拾うみたいな賢いシステム。それに対し、e-POWERはエンジン直接駆動はなくて、いったんエンジンパワーを全部電気に変換して、それをモーター駆動で使う。いったん全部変換するところが、根本的にトヨタ方式よりロスが大きいと感じてたんですが。
一野:詳しくはまた公道で乗っていただくときに解説しますが、その燃費の数値ってハイブリッドのFWDモデルですよね。ウチは全車ハイブリッドの四駆なので、四駆同士で比較すると……負けないと思います。
小沢:ええマジで!? 燃費で不利なハズのシリーズハイブリッドが燃費最強のトヨタ式ハイブリッドに勝つ。しかもデカくて重いミニバンで……。詳しい解説は今度お願いするとして、公道で乗れるのを楽しみにしております。
というわけで滑らかさ、電動4WD制御の巧みさで勝つことは予想していたけど、まさか燃費までとは。でもアルヴェルは2026年6月3日に燃費も含めてアップデートされてるし、ホントなんだろうかねぇ? 次回の勢いまかせを刮目(かつもく)して待て(笑)。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは? 2026.8.27 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。
-
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる 2026.7.9 日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。
-
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃 2026.4.18 小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。
-
第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く 2026.3.23 航続距離が伸びたり走りの質がよくなったりで話題の3代目「日産リーフ」だが、本当に見るべき点はそこにあらず。小沢コージが開発エンジニアを直撃し、ジミだけど大きな進化や、言われなかったら気づかないような改良点などを聞いてきました。
-
第55回:続・直撃「BYDラッコ」! 背が15cmも高いのに航続距離が「サクラ」&「N-ONE e:」超えってマジか? 2026.2.3 2026年の発売に向けて着々と開発が進められている「BYDラッコ」。日本の軽自動車関係者を震え上がらせている中国発の軽スーパーハイト電気自動車だが、ついに大まかな航続可能距離が判明した。「これは事件だ!」ということで小沢コージが開発関係者を再直撃!
-
NEW
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.9.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、9月15日(火)の夜、19時半から実施します。 -
NEW
ブーム再到来はあるか!? 国産ステーションワゴン興亡史(前編)
2026.9.7デイリーコラムかつて日本でも一世を風靡(ふうび)したステーションワゴンだが、すっかりSUVの陰に押しやられてしまい、今ではモデルラインナップもごくわずかだ。ここでは国産ワゴン興亡の歴史を追う。ブーム再到来のきっかけのひとつ(!?)になれば幸いである。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.9.6ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルで、STIで、クルマの走りを磨いてきた辰己英治さんが、3代目となる新型「日産リーフ」に試乗。15年にわたり進化してきた電気自動車の走りは、ミスター・スバルの目にどう映るのか? 日本専用に調律されたという、足まわりの仕上がりに迫る。 -
ランボルギーニ・レヴエルトSV(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.9.5試乗記ランボルギーニの歴史において「SV」の2文字は特別な意味を持つ。その称号が与えられた、ハイブリッドの最新マシン「レヴエルトSV」の走りやいかに? イタリアのテストコースで試乗した西川 淳がリポートする。 -
あの多田哲哉の自動車放談――BMW M235 xDriveグランクーペ編
2026.9.4webCG Movies元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんが、BMWのコンパクトスポーツセダン「2シリーズ グランクーペ」に試乗。そのステアリングを握った印象を動画でリポートします。 -
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?
2026.9.4デイリーコラム特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。







































