第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く
2026.03.23 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ 拡大 |
2026年1月、ついに国内発売された3代目「日産リーフ」。ご存じ、わがニッポンが誇る事実上世界初の量産電気自動車(EV)であり、セールスでの存在感こそテスラに抜かれましたが、それでも累計15年で70万台はだてじゃありません!
加えて、最長700kmを超えるロングな航続可能距離とかスムーズな走りに注目されがちですが、新型リーフの本当のよさであり、アピールポイントは実はそこじゃない。手だれのEVユーザーであり、EVマニアが実際気にするのは、スペックからは見えづらい実電費や充電時間、なにより長距離を走った際の電池の劣化具合などです。
EVが売れない時代に長年苦労してきた日産開発陣が新型リーフで「本当に頑張ったところ」や「実は誇るべきポイント」とは何なのか? 今回は公道初試乗でこだわりのディテールを開発担当チーフプロダクトスペシャリストの遠藤慶至さんに根掘り葉掘り聞いてきましたっ!
音を熱エネルギーに変換
小沢:新型は“ツウ”がうなるポイントにこだわって開発されたとか。例えば今回導入された新素材の「メタマテリアル」。これっていったい何ですか?
遠藤:このトランクの床の分厚いところがメタマテリアルになります。
小沢:一見すると樹脂性のダンボールみたいな感じですがどこがスゴイと?
遠藤:この格子構造が表と裏に付いていまして、入ってきた音を吸収し、熱エネルギーに変えております。
小沢:熱エネルギーに変換? 単に音を吸収するというより?
遠藤:この格子の寸法により、吸音する周波数を変えられます。効率的に吸収し、ナノ構造で精密につくられています。しかも今回はそこに剛性をもたせました。
小沢:「象が踏んでも壊れない」じゃないけど物を置いても壊れないと。ちなみになぜにメタマテリアル? 素材は何です?
遠藤:ポリプロピレンです。商品名は「M-LIGHT」。日産と素材メーカーさんとの共同開発で、まだ「アリア」にも使われていません。
小沢:現状はリーフ専用開発。意外にぜいたくで。あと、新型リーフのエアコンはいまどきの冷媒を使ったヒートポンプ式ですが、これまたシブく進化しているようで。
遠藤:前型は-5℃までですが、今回から-20℃まで使えるようになりました。
小沢:え、-20℃? バナナでクギが打てますじゃないですけど、アラスカとかシベリアとかでもちゃんと暖まると。何がそんなに違うんですか。
遠藤:水滴対策です。ボディー外側にアウターコンデンサーっていう熱交換器があり、ここで放熱しているんですけれど、水滴が付いても凍らないようになっています。凍ってしまうとエアコンが働かなくなるので。具体的にはこの部分が-20℃より低くなるんです。
小沢:ええ? コンデンサーが-30℃とかまで冷えても周囲の水分が凍らない? そんなことできるんですか。
遠藤:具体的には凍ったらエアコンを逆に作動させるようなイメージです。通常、暖房時は室内に温かい冷媒、室外に冷たい冷媒を発生させるのですが、それを一瞬だけ逆に作動させる。そうやって霜取りをするんです。
小沢:その瞬間効率は落ちますが、トータルでは電熱ヒーターみたいなので温めるよりよほど効率がよいと。
遠藤:もったいないを差し引いても、ヒートポンプでエネルギーをセーブできる効果のほうが大きいので。
小沢:じゃ新型リーフはアラスカはもちろん北海道の士別とか真冬の襟裳岬でもガンガンにヒーターを使えると。航続距離を気にしてエアコンを我慢する必要はないと。
遠藤:もちろんエアコンを使うと航続距離はそれなりに落ちますが、今までのヒーターほど気を使う必要はありません。
小沢:それって結構大きいですよね。真冬に豪雪でクルマが止まって、どこまでヒーターがもつかみたいなときに。完全に死活問題になりますので。
急速充電でもバッテリーが傷まない
小沢:もうひとつ、バッテリーの耐久性です。これ実はEVユーザーがすごく気にしてるポイントで。昔の話ですけど、初代リーフの電池が劣化するって話があったじゃないですか。特にモデル末期になると、もともと100kmちょいしか走らなかったのがフル充電からでも100kmも走らなくなると。メーターの電池残量を示すセル表示も数個つかなくなるとかね。これって残念なのはもちろん、リセールバリューにも大きく関わってくる問題で。
遠藤:そこは先代はもちろん新型リーフもかなり頑張っておりまして、カタログ的にも8年16万kmを保証しておりますし、実験結果では8年後でもほとんど性能の落ちがありません。
小沢:このあたりはなかなか体感しづらいところで「本当ですか?」って話なんですけど。マジで8年たっても性能9割以上キープ?
遠藤:そこは頑張りました。
小沢:さらにEVの場合、急速充電を使いすぎるとバッテリーが劣化するというのが専らの定説であまり使うなって話もありますが。
遠藤:それが今回、普通に家で充電した場合でも急速充電と劣化はほぼ変わらなくなっています。どちらを使ってても8年で90%以上のバッテリー容量が残る。
小沢:本当ですかそれ! これまた結構重要な話なんですけど。
遠藤:そこには大きく3つ要因がありまして、まず1つは今回バッテリーを新しく開発しています。特にセルの中身を素材から見直して。2つ目は今までのリーフは空冷でしたけど、水冷にしてしっかり温度マネジメントをやっています。冷たいほうも温かいほうも一定のレンジ内でコントロールすることによって夏場はもちろん冬場の劣化も防いでいます。それから意外に重要なのが絶対的な電池量で、容量が最大78kWhに上がっているので充電回数が減り、結果として耐久性向上につながっているんです。
小沢:そうか! 大容量っていろいろ副産物があるんですね。
遠藤:お客さまがわれわれの実験以上の使い方をしない限り電池は大丈夫かと。
小沢:特に日本人はクルマの扱いが丁寧ですからね。安心度は高いでしょう。それからもうひとつ、バッテリーによってボディー剛性が上がるという話もお聞きしたんですけど。
遠藤:かなり進化しています。バッテリーケースがアルミ製でそれ自体が高剛性ということもありますし、さらにケース中央に部材を設けて弓なりに曲がる部分をしっかり抑えられました。適材適所で曲がらない構造になっています。
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出っ張りどころか穴もない
小沢:それからフロア下やボディーの見えない部分の出っ張りを極力なくしたと。具体的には5cm以上の突起物をなくして、超フラットフロア化したのはもちろん、実は穴埋めもしたんですって? 静粛性のために。
遠藤:例えばこのジャッキアップポイントには専用カバーを付けて空力をよくしています。
小沢:ああ、これか。普通はむき出しですけど、こんな樹脂カバーまで付けて。
遠藤:穴の数でいうとほとんどふさいでいて、フロアのフラット率95%。それからドアの水抜き穴もふさいでいます。リアドアには2カ所あって、今までは開けっぱなしでしたが本当に水が抜けるだけの開口部にしてあります。さらにこの穴の奥の通路に音が反響しないように、トリムでふさいであります。
小沢:要するに静かにするためにドアには吸音材をいっぱい使うのが普通なんだけど、あえて穴をふさいで、反響まで構造で抑えちゃったと。
遠藤:そうです。コストダウンと軽量化にもつながるので。実はアリアでもここまではできていなかったと思います。
小沢:風切り音の対策も今までとは違うレベルでやっているとか。
遠藤:まずAピラーと窓ガラスとの段差を減らし、さらにサイドウィンドウとサイドミラーの隙間も広げています。この隙間で渦を巻いた空気が窓ガラスをたたくんです。そこが音源になってしまうので、ここを広げて防いでいます。
ルーフの角度はマジックナンバー
小沢:それからもう1つ細かい話ですけど、リアワイパーが付いてないですよね。ここは露骨にコストダウンかと思いきや、実は理想のガラス角度を見つけたとか。
遠藤:そうなんです。このリアのルーフの傾きはわれわれがマジックナンバーと呼んでいる部分で、要するに魔法の角度。水平面より17°傾けることで風の巻き込みと抵抗を抑えられる。
小沢:ある種の黄金律を発見しちゃったと。
遠藤:ここに空気がきれいに流れることによって雨粒を流してくれるので、リアワイパーが要らなくなる。
小沢:これまた結果的に空力がよくなったうえに、リアワイパーまで省けたと。
遠藤:ついでに言うとリアバンパーの角度もマジックナンバーを見つけました。空気の合流点をなるべく後ろにできましたので、これで抵抗を減らしています。
小沢:いろいろスポイラーを付ければいいってもんじゃないってことですね。
遠藤:実際、新型リーフは豪雨の中を走ってもリアガラスが全然汚れません。コレ、結構スゴイですよ。
小沢:ジミだけど新型リーフはEVの細かいノウハウの塊だと。で、最後にこのフラットツインのディスプレイとリーフには初搭載のGoogle。これまたジミに使いやすいとか
遠藤:非常に便利でGoogleマップって皆さんよく使われると思うんですけど、例えばわれわれは千葉の成田にいて、近くに成田山新勝寺がありますよね。突然「名所があるから行きましょう」となったときに、スマートフォンで地図を出して、この送るボタンを押して、日産コネクトでこのクルマに「送信」ってやればもう目的地が設定完了。リーフに乗ったらすぐに成田山新勝寺に出発できる。
小沢:なるほど。こりゃジミに便利かも。
ってなわけでハデじゃないけどいかにも日本人的な工夫をしまくっている新型リーフ。まだまだシブい工夫はあるようなので皆さん、こうご期待! 実は見えないアイデア装備の塊たる新型リーフにご注目くださいな。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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