ホンダCB750ホーネット(6MT)
ベテランにもビギナーにも 2026.07.18 試乗記 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。「CB750」なのにツイン?
ホンダの“CB750”のエンジンといえば、ほとんどのライダーは4気筒を思い浮かべるのではないだろうか。具体的には二輪業界に衝撃を与えた最初の「ドリームCB750フォア」や、現在の「CB1000F」の原型になった「CB750F/900F」などだ。
しかし、目の前にある「CB750ホーネット」は2気筒だ。おまけにホーネットとしても、かつて存在していた250/600/900cc、現在の1000ccはいずれも4気筒なので、初のツインということになる。こうした経緯から、「どうして、750のホーネットだけツインなんだ?」と思う人は少なくないかもしれない。でも、僕はちょっと違う見方をしている。
ナナハンのホーネットは、2022年にまず欧州で発表された。2025年からわが国でも展開を始め、2026年4月のマイナーチェンジでE-Clutch専用となったが、この自動クラッチ仕様も欧州に先行投入されていた。同じ750ccクラスでも、欧州はもともとバーチカルツインやVツインをアイデンティティーとしてきたブランドが多い。そんな思想に引かれてモト・グッツィやトライアンフを乗り続けてきた僕からすると、このマシンはホンダの欧州対抗馬であり、ツインを搭載するのも自然なことに思える。
2気筒のパンチと快適な操作性を両立
実車に接してまず感じたのは、ライディングポジションの優しさだった。身長170cmで手足が短い昭和体形ながら、片足はべったり着くし、ハンドルも遠すぎない。外観から想像するより、はるかにリラックスできる。
最近のトレンドである270°クランクの直列2気筒は、SOHCながら4バルブ。しかも吸気バルブはカム直押しという、凝った構造を持つ。ライドモードは「スタンダード」「スポーツ」「レイン」で、ほかにユーザー独自の設定ができるモードが2つある。スタンダードは日本車らしい扱いやすさ、まろやかさが印象的で、スポーツモードでは欧州車のツインを思わせる歯切れのよさが前面に出てくる。一方で、レインモードでもそれほどガクッとレスポンスが落ちるわけではない。
2気筒ということで気になる人がいるかもしれない振動は、ハンドルやシートにはほとんど伝わらないのに対し、ステップは4000rpmから気になりはじめ、6000rpmを超えるとそれが大きくなっていく。ステップにゴムをかぶせれば弱められそうだが、ツインの鼓動感が味わえるのは2000~4000rpmあたりで、高速道路での回転数は6速・80km/hで3000rpmちょっと。2気筒らしいパンチはこの領域でもしっかり体感できるので、普段使いでは、前述の振動はあまり気にならないかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本のバイクらしい懐の深さと素直さ
個人的にクラッチレスの大型モーターサイクルは、ホンダの「DCT」、ヤマハ発動機の「Y-AMT」、BMWの「ASA」に乗ったことがある。そういえば、普段の足に使っているホンダの「スーパーカブ」もクラッチレスだ。
そんな経験をもとにして書けば、まず発進時のクラッチミートはスパッとつながるタイプで、自分好み。その後はクイックシフターと同じように、スロットルはそのまま、左足でチェンジペダルを操作するだけ。シフトダウンも同じで、中ぶかしをしなくてもスムーズにギアとスピードを下げてくれる。
試しにクラッチレバーを握ってみると、驚くほど軽い。短時間ならこれでもいいと思ったけれど、気がつくとクラッチレスモードに戻っている自分がいる。なにより楽だし、ほかの操作に集中できるぶん、安全でもある。もちろん自動変速モードがあるDCTやY-AMT、ASAのほうが快適性はさらに上だけれど、クラッチを切ってギアを変えていく動作には独特の楽しさがあるわけで、あの世界を残したままクラッチレスでも走れるE-Clutchは、うまい落としどころだと思った。
感心したのは、1速での走行中にギクシャクしないよう、スロットルを閉じても回転を上げ気味にしておくこと。日本らしいおもてなしだ。
スチールフレームは適度なしなりを感じるタイプで、それほどハイスペックなサスペンションが付いているわけではないものの、乗り心地は良好であり、ハンドリングは過敏ではなく、街なかから高速まで素直な動きだった。
見た目は尖(とが)っているけれど、乗ればホンダならではの扱いやすさと楽しさの両立が光る。ナナハン入門車としてはうってつけだし、外国車のツインがトゥーマッチに感じるようになったベテランにも薦められそうだ。
(文=森口将之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=本田技研工業)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2090×780×1085mm
ホイールベース:1420mm
シート高:795mm
重量:約196kg
エンジン:754cc 水冷4ストローク直列2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:91PS(67kW)/9500rpm
最大トルク:75N・m(7.6kgf・m)/7250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:22.7km/リッター(WMTCモード)
価格:114万9500円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆ホンダCBR650R E-Clutch(6MT)【レビュー】
◆ホンダ・レブル250 SエディションE-Clutch(6MT)【レビュー】

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
NEW
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。 -
自動運転はこの先10年でどこまで進化できる?
2026.10.13あの多田哲哉のクルマQ&A自動車業界において、再び話題になる機会が増えてきた「自動運転」。この先はどのように進化・普及するのか。既存の先進運転支援システムで十分ではないのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの見解を聞いた。















































