メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)
期待の二刀流 2026.08.21 試乗記 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。時代を見据えた基本構造
サッシュレスドアを持つ4ドアクーペという「CLS」のコンセプトを受け継いだ初代CLAが登場したのは2013年のこと。2015年にはCLSに倣って「シューティングブレーク」も追加され、2019年にはそろってフルモデルチェンジし、現在に至る。その間、日本市場では6万台以上が販売されたというから、コンパクト系のいちバリエーションとしてはそれなりの存在感を示してきたといえるだろう。
そして3代目となるCLAの販売が日本でも始まった。パワートレインの全面電動化にともない車台は完全刷新。……となるも、時流の変化で当初からハイブリッド車(HEV)も用意されることになるなど、開発はひと筋縄ではいかなかったところもあるだろう。それでも電動化に適した新型エンジンの開発や、用いるAIをマルチチャンネル化した対話型アシスタンスを搭載するインフォテインメントシステムなど、新たなトピックは枚挙にいとまがない。
プラットフォームは前述のとおり、BEV化を前提として完全刷新された「MMA」を採用した。そのエンジニアリング的な主旨は2023年のIAAにて、このCLAのコンセプトモデルとともに発表されているが、前型までの「MFA」プラットフォームが内燃機主体ながらxEV化も可能な空間を後席下部に有していたのに対して、MMAはBEV主体ながら内燃機をおさめることも可能なフロントセクションを有する車台として開発されたという触れ込みだった。
つまり、バッテリーを床下に敷くことを前提にポール側突などの衝突安全性能を織り込んだうえで骨格形状を最適化し、MFAベースでは限界があったバッテリーの搭載量を増やすことがMMAの狙いだったことは想像に難くない。結果、新しいCLAのBEV版を示す「with EQテクノロジー」の駆動用バッテリーの容量は、ロングレンジの「250+」で85.5kWh(ショートレンジの「200」が58kWh)と、ホイールベースが40mm長い「EQB」の70.5kWhよりも2割ほど大きくなっている。ちなみに一充電走行距離はセダンの250+が771km、シューティングブレークの200でも513km(ともにWLTCモード)を達成。また、リアモーターの後輪駆動レイアウトとなることもあって、メルセデスのBEVとしては珍しく、101リッターと充電ケーブルをおさめるだけではもったいないほどのフランク(フロントのトランクルーム)が設けられているのも特徴だ。
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つくり手の苦労が伝わってくる
そのフランク部に内燃機をおさめるとなると、相当ミニマムな設計となるだろう。M252型となる1.5リッター4気筒エンジンはボア×ストロークが75×84.8mmと、ストローク型の骨格で吸気バルブを早閉じさせる簡易型ミラーサイクルを採用。シリンダーにはナノスライドコーティングを用いてライナーの薄型化とボアピッチの短縮、さらにアルミ製クランクケースを組み合わせての軽量化など、小さく軽くするためのノウハウが注ぎ込まれている。
8段DCTとともにパッケージされる48Vの駆動モーターはエンジンと完全に切り離される仕組みで、独立したクラッチを介して微低速でのモーター走行や減速時の回生エネルギー回収が行われる仕組みだ。1.3kWhとHEVとしてはやや大容量の48Vの駆動バッテリーは、DC/DCコンバータとユニット化され、前席下部におさめられる。
BEVのほうは2026年の秋以降にデリバリーが開始されるということで、今回の取材車はこのHEVの上位グレードにあたる220となった。エンジンは同じM252型だが、アウトプットは220が最高出力190PS、最大トルク300N・mを、標準グレードの180が同136PS、同200N・mを発生する。48Vモーターはともに30PS、200N・mで同値となる。ただし200N・mはベストエフォートであって、継続的に発生できるトルクは85N・m前後、具体的には発進から20km/h程度や定速巡航時などの低負荷状態に限られるとみられる。それでもWLTCモードでともに20km/リッター超と、このアシストの有無の差は燃費にあらたかだ。
何はともあれ、エンジンルームを開けるとそのミチミチぶりにエンジニアたちの苦闘の跡が垣間見える。補機類の配置やエンジンマウントの位置は涙ぐましくも感じられるほどだ。後に控える「GLA」や「GLB」の後継車も用いるだろう、メカニカル四駆のドライブトレインも欧州では発表されているが、駆動力伝達のスペースがよくあったものだと思う。
BEV前提の“空間的なネガ”はナシ
乗り込むと否応なしに目に飛び込んでくるのは、ダッシュパネル全面に“ツライチ”で並ぶ3つの液晶画面だ。「MBUXスーパースクリーン」はオプション扱いとなるが、ADASの補完機能やARナビゲーション、ブルメスターのプレミアムオーディオ等がセットになった「アドバンストパッケージ」に含まれており、その価格は57万8000円と見た目的には随分値下がりした印象だ。
が、内外装やサスペンション、タイヤサイズなどがスポーティーに彩られる「AMGラインパッケージ」(59万8000円)との同時選択が必須となり、結局のところお支払いは100万円を軽々と超えてしまう。ご自慢の最新世代オペレーティングシステム「MB.OS」を満喫しようというのなら欲しくなるアイテムであろうことは、ガジェットものに疎い自分にも分からなくはないので、このあたりはなんとかならないものかと思う。
「ChatGPT」や「Google Gemini」など、項目ごとに最適なAIを用いるという対話型コミュニケーションは、限られた試乗の最中にその効果を実感することはかなわなかった。でも、そもそもMBUXは、先代「Aクラス」から用いてきた内製AIがかなり鍛えられていて、目的地設定などはほぼノーストレスでボイスコマンドが可能だったので、何が何でも……というほどの必要性は感じない。日本車よりもスムーズに日本語を理解してくれるだけでもありがたく思えるほどだ。まあ渋滞にハマった際の眠気覚ましの話相手くらいにはなってくれるだろうから、それは別の機会に試してみたい。
BEV前提のプラットフォームということで、気になっていたのは着座姿勢や居住性だが、HEVの220に乗るぶんには、足元まわりに上げ底的な違和感は覚えなかった。後席も、身長181cmの筆者が座ってみて、頭まわりも含めて窮屈さは感じない。ちなみにこの後席を生かした状態でもセダンでは2つ、シューティングブレークでは3つのゴルフバッグが搭載できるという。一方で外寸的には「Cクラス」と比べると全長で60mmほど短く、全幅は15mm幅広く……と、いよいよ両車の区分けが難しくなっている。ともに日本の路上でストレスなく扱うにはギリギリというところだろうか。ただし、ハイブリッドパワートレインを押し込んだ割には5.2mと最小回転半径が小さい点にはメルセデスの良心が感じられる。
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シャシー性能には感心する……が
試乗コースには、大型車の往来で舗装が劣化し路面状況が相当厳しいところもあったが、19インチタイヤとローダウンサスを織り込むAMGラインパッケージを装着した取材車は、ちょっと感心するほどの乗り心地をみせてくれた。もはやCクラス同然という車格の割にはそう重くはない車重、BEV化前提によるシャシーの剛性強化など、物理面での複合的な要因は考えられるが、ロアアームをダブルジョイントとして実質マルチリンク化したフロントサスや、フロアパンの面積を最大限に採りながらトラベルをつかさどるアーム長も確保したリアサスなど、動的質感についてはシャシー側の工夫も随所に見受けられる。
この凝ったサスの効果だろう、操舵フィールのFFらしからぬクリアさもCLAの美点のひとつかもしれない。大舵角から意地悪にパワーを加えても、トルクステアのような濁ったフィードバックは最小限に抑えられているし、大舵角から中立に戻ろうとするセルフアライニングのトルクと舵の摺動(しゅうどう)感やタイヤのアライメントとの調律にも引っ掛かりがない。ある意味リアモーターのBEVが本丸とも目されるクルマとなれば、ともあれシャシーは相当入念につくり込んだのであろう意気込みが感じられる。
対して、パワートレインは僅かながらも生煮え感が感じられた。微低速や急減速からの再加速といった、クラッチ制御式のHEVがアラを出しやすいちょっと意地悪な場面でのことではあるが、クオリティーにシビアな客層のクルマとしてはもうひと声の熟成を望みたいところだ。でも、今回は燃費は測れなかったものの、常速域でもエンジンを落として燃費に貢献するハイブリッドパワートレインのマネジメントをみていると、結構な燃費をマークしてくれるのではないかという期待は高まった。
今回の試乗機会では“曲がってナンボ”に触れられる場所がなかったよなあと思いながらも、ともあれシャシーの余力は十分に感じられた。この先、上陸するBEVが正反対の後輪駆動にしてどのような走りを見せてくれるかによっては、MMAのポテンシャルはメルセデスのDセグメント前後のモデル群に大きな影響を与えることになるのかもしれない。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA220
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1835×1455mm
ホイールベース:2790mm
車重:1670kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/2000-3500rpm
モーター最高出力:30PS(22kW)/1150rpm
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/0-1000rpm
タイヤ:(前)225/40ZR19 93W XL/(後)225/40ZR19 93W XL(ミシュランeプライマシー2)
燃費:20.2km/リッター(WLTCモード)
価格:687万円/テスト車=810万6000円
オプション装備:AMGラインパッケージ(59万8000円)/アドバンストパッケージ(57万8000円)/アクアミント<ソリッドの有償ボディーカラー>(6万円)
テスト車の年式:2026年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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