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メルセデス・ベンツCLA250+ with EQテクノロジー(RWD)/CLA350 4MATIC with EQテクノロジー(4WD)

妥協なき仕上がり 2025.07.17 試乗記 渡辺 慎太郎 「メルセデス・ベンツCLA」がフルモデルチェンジ。その中身はといえば、シャシーやパワートレイン、ソフトウエアに至るまですべてが新設計。メルセデスの今後の方向性を示す重要なプロダクトへと生まれ変わっている。電気自動車(BEV)版の仕上がりをリポートする。
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メルセデスの本気度を示すCLA

2025年3月に発表されたメルセデス・ベンツの新型CLAの国際試乗会は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。北欧諸国は世界的にもBEVの普及率が高いエリアで、充電インフラ整備もそれなりに進んでいるからだろう。確かに、街なかでBEVに遭遇する機会は日本なんかよりもはるかに多いけれど、想像していたほどでもなかったというのも正直なところ。デンマークは“北欧”といっても、ノルウェーやスウェーデン、フィンランドよりは地理的にいわゆる“欧州”に近く、実際ドイツの隣国でもある。BEVへのシフトが前述の3カ国ほど進んでいないのは、そういう事情もあるのかもしれない。

フォルクスワーゲンなどのさまざまなBEVが走り回るいっぽうで、メルセデスのBEVはそれほど多く見かけなかった。デンマークに限らず、世界各国の路上にスリーポインテッドスターの付いたBEVや電動化モデルをもっと紛れ込ませたいという強い思いがメルセデスにはあるのだと思う。その一役を担うのが新型CLAである。新規のプラットフォーム、新規のOS、新規のBEVパワートレイン、新規のハイブリッド機構など、クルマを構成するあれこれのほとんどを新たに開発したという事実からも、メルセデスがこのセグメントでのシェア拡大を本気で狙っていることが推測できる。

ハイブリッド仕様の発売は年末くらいになるそうで、今回はBEV仕様のみの試乗となった。「ハイブリッドはお預けか」とちょっと落胆したものの、BEV仕様はそんな気分を一掃するくらいの上出来な仕上がりだったのである。

「メルセデス・ベンツCLA」は2013年に初代がデビュー。3代目となる新型では電気自動車とハイブリッド車をラインナップする完全な電動化モデルになった。
「メルセデス・ベンツCLA」は2013年に初代がデビュー。3代目となる新型では電気自動車とハイブリッド車をラインナップする完全な電動化モデルになった。拡大
今回試乗できたのは電気自動車版の「CLA250+ with EQテクノロジー」(後輪駆動)と「CLA350 4MATIC with EQテクノロジー」(四輪駆動)。写真は前者を中心に紹介する。
今回試乗できたのは電気自動車版の「CLA250+ with EQテクノロジー」(後輪駆動)と「CLA350 4MATIC with EQテクノロジー」(四輪駆動)。写真は前者を中心に紹介する。拡大
スリーポインテッドスターをかたどったヘッドランプが新世代モデルであることを印象づける。空力性能を示すCd値は0.21を実現している。
スリーポインテッドスターをかたどったヘッドランプが新世代モデルであることを印象づける。空力性能を示すCd値は0.21を実現している。拡大
リアコンビランプにもスリーポインテッドスターをインクルードしている。
リアコンビランプにもスリーポインテッドスターをインクルードしている。拡大
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何よりも空力性能を重視

新型CLAのボディーサイズを旧型と比べてみると、全長で35mm、全幅で25mm、全高で29mm、ホイールベースで61mm、それぞれ大きくなっている。ホイールベースが長くなった原因は駆動用バッテリーを収めるため。いっぽう、ホイールベースの延長分ほど全長が伸びていないのは、エンジンルームまわりのフロント部全体が前後方向に短くなったからだ。新型CLAは開発当初、パワートレインはBEVのみとされていたので、エンジンルームを極力小さくつくっていたのである。

総じてボディーは大きくなっているものの、室内はフロントがヘッドクリアランス、レッグルーム、肘まわり、肩まわりが拡大されているのに、リアはヘッドクリアランスを除いてすべて狭くなっている。この差は実際にシートに座ってみても体感できる。タイトな印象が軽減した前席に対して後席は相変わらずかなりタイトである。ラゲッジ容量も55リッター小さくなったが、BEV仕様ではフロントにも101リッターのラゲッジルームが新たに設けられた。ちなみに、新型CLAは全車がガラスルーフを標準装備する。これは通常のルーフよりもトリムや構造部材が省けるぶん、ヘッドクリアランスが稼げるからだ。

明らかに、パッケージよりもエクステリアデザイン、もっといえば空力重視のフォルムを優先していることが分かる。そして新型CLAのCd値は「EQS」の0.20に次ぐ0.21を達成した。「先代のCLAでは、後席を使うのはほとんどが子供だった」とのデータがあるらしいので、かなり割り切った試みである。しかし0.21のCd値の効果は航続距離の向上のみならず、静粛性の向上にも大いに表れていたので、このスタイリングはマイナスもプラスも持ち合わせていることになる。

「MMA」と呼ばれるシャシーは新設計。足まわりはフロントが3リンク、リアがマルチリンクを採用している。
「MMA」と呼ばれるシャシーは新設計。足まわりはフロントが3リンク、リアがマルチリンクを採用している。拡大
余計な装飾を抑えたインテリアは現行モデルと比べるとグッと大人っぽくなった。おそらくオプションと思われるが、助手席前方にも独立したディスプレイを搭載できる。
余計な装飾を抑えたインテリアは現行モデルと比べるとグッと大人っぽくなった。おそらくオプションと思われるが、助手席前方にも独立したディスプレイを搭載できる。拡大
前席はヘッドルームが16mm、レッグルームが12mm、ショルダールームが11mm拡大。これなら充電中でもくつろげることだろう。
前席はヘッドルームが16mm、レッグルームが12mm、ショルダールームが11mm拡大。これなら充電中でもくつろげることだろう。拡大
後席はガラスルーフのおかげでヘッドルームは広くなっているが、ショルダールームやレッグルームなどはいずれも縮小。4ドアクーペとして割り切った設計といえるだろう。
後席はガラスルーフのおかげでヘッドルームは広くなっているが、ショルダールームやレッグルームなどはいずれも縮小。4ドアクーペとして割り切った設計といえるだろう。拡大

割れないガラスルーフ

新型CLAのBEVには2WD(後輪駆動)の「CLA250+ with EQテクノロジー」と4WDの「CLA350 4MATIC with EQテクノロジー」の2種類が用意されている。まったく新しいクルマの最初の試乗は、できるだけ素の仕様を選ぶようにするといつも決めているので、CLA250のキーをまずは受け取った。

異様なまでに高い剛性感のボディーとステアリング系、ロードノイズがかすかに聞こえる程度で風切り音はほとんど気にならない静粛性、そして減衰の効いたマイルドで快適な乗り心地。コペンハーゲンの市街地をタウンスピードで10分ほどドライブした印象である。残りの試乗時間で、それぞれの原因の解析を試みた。

ボディー剛性については、試乗前にメルセデスにおける“衝突安全の博士”からレクチャーを受けていた。新型CLAのボディー設計をするうえで肝となったのは、やはり駆動用バッテリーとガラスルーフだったという。側面衝突でバッテリーにダメージが加わると二次災害の可能性があるので、サイドシルに衝撃吸収とバッテリー&キャビンを守る強度を持たせたそうだ。

そして問題はガラスルーフである。割れてしまう恐れがあるからだ。そこで博士いわく「割れないようにしました」とのこと。具体的には、AピラーからCピラーにかけての円弧状の部分とBピラーに熱間成形の超ハイテンスチールを採用。万が一クルマがロールオーバーしてもガラスルーフが簡単には割れないレベルの剛性を確保しているという。ヘッドクリアランスを稼ぐためというちょっと不健全な理由で採用したガラスルーフは衝突安全面ではやっかいで、それを克服してBEVにかぶせたら強靱なボディーが誕生した、ということのようである。

コペンハーゲンのゲフィオンの噴水で。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は85kW、一充電走行距離は「CLA250+」の場合で694-792km(WLTPモード)とされている。
コペンハーゲンのゲフィオンの噴水で。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は85kW、一充電走行距離は「CLA250+」の場合で694-792km(WLTPモード)とされている。拡大
車両を統合制御するオペレーティングシステムには新開発の「MB.OS」を採用。インフォテインメントシステムまわりの省電力を徹底したのも新型のポイントだ。
車両を統合制御するオペレーティングシステムには新開発の「MB.OS」を採用。インフォテインメントシステムまわりの省電力を徹底したのも新型のポイントだ。拡大
シートの電動調整用スイッチがドア側にあるのはメルセデスではおなじみの光景ながら、弧を描くようなスイッチはこれまでにないタイプ。スイッチ自体が動かない静電容量式から機械式に回帰したのも見逃せないポイントだ。
シートの電動調整用スイッチがドア側にあるのはメルセデスではおなじみの光景ながら、弧を描くようなスイッチはこれまでにないタイプ。スイッチ自体が動かない静電容量式から機械式に回帰したのも見逃せないポイントだ。拡大
リアアクスルに最高出力272PS、最大トルク335N・mの駆動用モーターを搭載。スプリント能力と長い航続距離を両立するため2段のトランスミッションが組み込まれている。
リアアクスルに最高出力272PS、最大トルク335N・mの駆動用モーターを搭載。スプリント能力と長い航続距離を両立するため2段のトランスミッションが組み込まれている。拡大

正確無比なハンドリング

しっかりしたボディーさえ手に入れれば、サスペンションは狙いどおりに動きやすくなる。CLAのダンパーは電子制御式ではなく、コンベンショナルなタイプが標準装着されているが、これが路面からの入力の大小を問わずいい塩梅(あんばい)で減衰してくれるので、速度や路面依存度の低い快適な乗り心地となっているのだろう。風切り音は高速道路に入っても耳障りにはならない。EQSと同様のエアロダイナミクスのおかげである。ただし、高速巡航時にはばね上が微妙に動く傾向が見られた。空気がきちんと整流されていればもう少しどっしりとした、ステアリングが座るような直進安定性であってもいいはずなので、この部分に関してだけは腑(ふ)に落ちなかった。

操縦性は例によって正確無比で、安定志向である。ピッチ、ロール、ヨーそれぞれの動きとつながりは、おそらくエンジニアの計算どおりであり、旋回中には無駄な動きも不穏な動きもまったく見られない。約2.5tの車両重量を忘れるような軽快感すら感じられた。これは動力性能でも同じことがいえる。最高出力272PS/最大トルク335N・mのモーターは軽々とボディーを運ぶ。ペダルの動きに対するレスポンスもよく、常に後輪へしっかりとトラクションがかかっていた。後で試乗したCLA350のほうが確かにパワーはあって、前輪も駆動するからスタビリティーは若干高く感じられるものの、総体的な印象に大きな違いはなく、個人的にはCLA250で十分だと思った。

最新型のMB.OSは、グラフィックに大きな違いはないけれど、反応速度は速く画面の切り替わりもスムーズになっている。音声認識機能は、ドライバーひとりだと「ハイ、メルセデス」のコマンドが必要ないが、他にも乗員がいる場合は言わないと作動しない。つまり、何人乗車しているのかをクルマ側が把握しているわけである。目に見えない部分では、消費電力が従来型よりもセーブできているそうだ。このあたりの改善は、バッテリー残量が気になるスマートフォンのモデルチェンジのようでもある。そういう意味では“クルマのスマホ化”は進んでいるかもしれないけれど、衝突安全やボディー設計といった、自動車としての基本性能に欠かせない部分への妥協なきメルセデスの姿勢には、相変わらず感心するばかりである。

(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

「CLA350 4MATIC」はフロントにも最高出力109PSのモーターを搭載。システム全体では最高出力354PS、最大トルク515N・mを発生する。
「CLA350 4MATIC」はフロントにも最高出力109PSのモーターを搭載。システム全体では最高出力354PS、最大トルク515N・mを発生する。拡大
トランク容量は先代モデルよりも55リッター小さい405リッター。リアにメインのドライブユニットを積むだけあって床面がだいぶ高くなっている。
トランク容量は先代モデルよりも55リッター小さい405リッター。リアにメインのドライブユニットを積むだけあって床面がだいぶ高くなっている。拡大
フロントにも容量101リッターのラゲッジスペースが備わっており、全体としては先代モデルよりも積載能力は高くなっている。ただしこれはハイブリッドモデルには備わらない。
フロントにも容量101リッターのラゲッジスペースが備わっており、全体としては先代モデルよりも積載能力は高くなっている。ただしこれはハイブリッドモデルには備わらない。拡大
普通充電は出力11kW、急速充電は出力350kWまで対応。後者を使った場合、わずか10分の充電で300kmほど走れるだけの電力が得られるという。
普通充電は出力11kW、急速充電は出力350kWまで対応。後者を使った場合、わずか10分の充電で300kmほど走れるだけの電力が得られるという。拡大
メルセデス・ベンツCLA250+ with EQテクノロジー
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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツCLA250+ with EQテクノロジー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4723×1855×1468mm
ホイールベース:2790mm
車重:2510kg
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
最高出力:272PS(200kW)
最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)
タイヤ:(前)225/40R19 93W XL/(後)225/40R19 93W XL(ミシュランeプライマシー2)
一充電走行距離:694-792km(WLTPモード)
交流電力量消費率:14.1-12.2kWh/100km(WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
参考電力消費率:--km/kWh

メルセデス・ベンツCLA350 4MATIC with EQテクノロジー
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メルセデス・ベンツCLA350 4MATIC with EQテクノロジー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4723×1855×1468mm
ホイールベース:2790mm
車重:2575kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:109PS(80kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:272PS(200kW)
リアモーター最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)
システム最高出力:354PS(260kW)
システム最大トルク:515N・m(52.5kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95W XL/(後)225/45R18 95W XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6)
一充電走行距離:672-771km(WLTPモード)
交流電力量消費率:14.7-12.5kWh/100km(WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
参考電力消費率:--km/kWh

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