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スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する

2026.10.16 デイリーコラム 堀田 剛資
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強みは「チームスズキ」での製品開発

2026年9月25日、スズキが中・長期の技術戦略説明会を開催した。題して「10年先を見据えた技術戦略2026」。彼らがこうした催しを開くのは、2024年より3年連続(参照:その1、その2)。そんな頻度で披露しても技術のネタが尽きないのだから、今のスズキは素直にスゴい。せっかくなので、今回は説明会のタイトルにあやかり、その発表内容から向こう10年のスズキを夢想したいと思う。長~いリポートとなるが、お覚悟あれ。

まずは、読者諸氏にとって最も大事なクルマについて。この点では、かねて「次期型の軽のエントリーモデルは、現行『アルト』比で100kg、いや120kgの軽量化を目指す!」という驚異の説明がなされていたが……残念。単純な引き算で車重500kg台の超軽量マシンが登場するわけではなさそうである。というのも、2030年以降を想定した法規対応に、燃費改善、衝突安全性の向上といった施策を盛り込むと、それだけで80kgの重量増が見込まれるからだ。俯瞰(ふかん)すると、プラマイで20~40kg程度の軽量化となるのではないか、といったあんばいだった。

とはいえこのご時世、新型でクルマが軽くなるってだけでもスゴいことだ。スズキの計算では、この5年で自動車は10%重くなり、平均価格は50%(!)も高くなったという。この調子では、軽やコンパクトといったエントリーモデルが早晩立ちゆかなくなるのは確実で、そうならないためにもスズキにはがんばっていただきたい。いや、これはマジで、切実に。

ちなみに、この軽量化(=製造資源の削減=環境負荷の低減=低コスト化)の施策に近道はないようで、会場では高張力鋼板の採用拡大に、衝突エネルギーのコントロール、ステアリングサポートメンバーおよびシートクッションの軽量化、軽量スチールホイールの開発、果ては1台につき2000本に及ぶボルト頭部の小型化……と、微に入り細にわたる改善策が解説されていた。

こうした「チームスズキ」での全方位の取り組みを、スズキは自社の大きな強みととらえている様子。初の軽乗用電気自動車(BEV)「eスカイ」でも、「航続距離を1km伸ばす改良を、100個入れる!」という戦略で、WLTCモードで310kmという航続距離を実現したのだとか。なるほどこれは、札束で暖をとる連中にはできない戦い方だろう。

スズキの技術戦略説明会「10年先を見据えた技術戦略2026」より、スズキの鈴木俊宏社長。
スズキの技術戦略説明会「10年先を見据えた技術戦略2026」より、スズキの鈴木俊宏社長。拡大
車両の高効率化を実現するための各種技術を説明するカットモデル。いたるところに貼られた&立てられた解説のポップからもわかるとおり、その中身は細かな改善の積み重ねとなっている。例えば……。
車両の高効率化を実現するための各種技術を説明するカットモデル。いたるところに貼られた&立てられた解説のポップからもわかるとおり、その中身は細かな改善の積み重ねとなっている。例えば……。拡大
ボルトの頭部を12mmから10mmに小型化することで、締結力を保ったまま1gの軽量化を実現。これは二輪の技術を転用したものだ。たかが1gだが、クルマ1台につき2000本のボルトが使われているのでばかにできない。
ボルトの頭部を12mmから10mmに小型化することで、締結力を保ったまま1gの軽量化を実現。これは二輪の技術を転用したものだ。たかが1gだが、クルマ1台につき2000本のボルトが使われているのでばかにできない。拡大
個人的に興味深かったのが、軽量スチールホイールの開発。確かに2024年の技術説明会で「鉄のポテンシャルを使い切る」とは言っていたが……。いやはや脱帽です。
個人的に興味深かったのが、軽量スチールホイールの開発。確かに2024年の技術説明会で「鉄のポテンシャルを使い切る」とは言っていたが……。いやはや脱帽です。拡大
「チームスズキ」といえば、スズキは2026年も「チームスズキCNチャレンジ」として鈴鹿8時間耐久レースに挑戦。車体部品にオイルやタイヤ、燃料……と、さまざまなサスティナブルアイテムを試しながら、無事完走を果たした。
「チームスズキ」といえば、スズキは2026年も「チームスズキCNチャレンジ」として鈴鹿8時間耐久レースに挑戦。車体部品にオイルやタイヤ、燃料……と、さまざまなサスティナブルアイテムを試しながら、無事完走を果たした。拡大
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ADASやSDVも軽く・賢く・お値打ち価格で

次いでは、自動車開発の新しい重点領域である、先進運転支援システム(ADAS)やSDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)、そしてそれらを支える電気・電子(E&E)アーキテクチャーについてである。……そこ、眠らないように。ここテスト出るから。

スズキでは、すでに2026年1月発売の「eビターラ」で、分散型E&Eアーキテクチャーと、それをベースとした限定的なSDVシステムを導入しているが(参照)、今後は2030年をめどに、機能や車体のエリアごとに制御ユニットの統合を進めた、一部ドメイン型E&Eアーキテクチャーを採用。省スペース化と通信容量の拡大を図るとともに、OTA(無線による通信アップデート)にも対応するとしている。

問題はその“実利”だが、スズキは2029年以降、通信や電源分配、ボディー制御などの機能を、ボッシュの次世代セントラルゾーンユニットに統合。機能・性能は高めつつ、コストを30%、重量を15%低減するという。ハーネスも重くて高価な銅線から順次アルミ線に代替し、2030年には1台当たり1.6kgの軽量化を実現するとのことだ。

こうした取り組みはADASも同様で、高解像度カメラとAIを用いてシステム構成を効率化。フロントレーダーの廃止やドライバーモニターおよび乗員用カメラのADASへの統合などを通し、現在と同等以上の性能は担保しつつ、大幅な低コスト化を図るとしている。軽量化と効率化、コストカットの鬼であるスズキの魂は、エレキの領域でも健在なのだ。

ところで余談だが、上述の統合セントラルゾーンユニットを筆頭に、実物の展示があったADASシステムも、最新のディスプレイオーディオも、鋭意開発中の電動ブレーキシステムも、会場で説明のあった先進機器は、全部が“ドイツの巨人”ボッシュの製品だった。スズキのエンジニア氏いわく「ははは。偶然ですヨ」とのことだが、妙なところで、日系メーカーへの売り込みに活路を見いだし、攻勢をかけているメガサプライヤーの地力を見た気がした。

2026年1月に発売されたスズキ初の量販BEV「eビターラ」。操作インターフェイスを統合したり、一部電装品の制御をひとつのECU(電子制御ユニット)にまとめたりと、同社にとってSDV化の端緒ともいえるクルマとなっていた。
2026年1月に発売されたスズキ初の量販BEV「eビターラ」。操作インターフェイスを統合したり、一部電装品の制御をひとつのECU(電子制御ユニット)にまとめたりと、同社にとってSDV化の端緒ともいえるクルマとなっていた。拡大
スズキの次世代E&Eアーキテクチャーの核ともいえるのが、ボッシュ製のセントラルゾーンユニット。電力分配や通信などの性能を12%高めつつ、低コスト化も実現。2029年よりグローバルに展開していく予定だ。
スズキの次世代E&Eアーキテクチャーの核ともいえるのが、ボッシュ製のセントラルゾーンユニット。電力分配や通信などの性能を12%高めつつ、低コスト化も実現。2029年よりグローバルに展開していく予定だ。拡大
こちらはデンキ系の血管&神経網となるハーネスの展示。導線を銅からアルミに変えることで、大幅な軽量化が実現するという。伝導性については銅のほうが優れているのだが、その点については織り込み済みとのこと。
こちらはデンキ系の血管&神経網となるハーネスの展示。導線を銅からアルミに変えることで、大幅な軽量化が実現するという。伝導性については銅のほうが優れているのだが、その点については織り込み済みとのこと。拡大
こちらはボッシュ製の次世代ADASシステム。自動運転レベル2の運転支援機能に対応しており、中国・ホライズン・ロボティクス製のSoC(システム・オン・チップ)を採用。2028年から展開していくとしている。
こちらはボッシュ製の次世代ADASシステム。自動運転レベル2の運転支援機能に対応しており、中国・ホライズン・ロボティクス製のSoC(システム・オン・チップ)を採用。2028年から展開していくとしている。拡大

2つの自社製eアクスルで幅広い車種をカバー

引き続きまして、みんな大好きパワートレインの話である。読者諸氏ならご存じのとおり、スズキは他の日系メーカーと同じく、かねて“マルチパスウェイ”の戦略をとっており、BEVもエンジン搭載車も、両方がんばるスタンスでいる。

まずはBEVについてだが、この分野でのスズキといえば、電費97Wh/km(WLTCモード)のeスカイを出して世間のド肝を抜いたばかり。そしてそのeスカイには、スズキ独自の3 in 1(モーターとインバーター、リダクションギアをひとまとめにした駆動ユニット)のeアクスルが採用されているのはご存じのとおりだ。

さらにスズキでは、クラス最小とされる同ユニットのサイズは保ちつつ、DC/DCコンバーターや車載充電システム、電力配分ユニットの機能まで統合した、6 in 1の軽BEV用eアクスルを開発。2030年ごろの頭出しを目指すとしている。さらに、同ユニットより出力を高めつつ、サイズアップは1割ほどに抑えたBセグメント車向けのeアクスルも開発。これら2つのユニットの組み合わせにより、Dセグメントのモデルまでをカバーするとのことだった。

……ん? ちょっと待て、Dセグメント? 今のスズキにDセグメント車なんてあったか? それはどんなクルマになる計画で、誕生の暁には日本にも来るんでしょうね? ちょっと気になるんですけど。

パワートレインの戦略について解説する、スズキの加藤勝弘副社長。同社で技術統括を務めている。
パワートレインの戦略について解説する、スズキの加藤勝弘副社長。同社で技術統括を務めている。拡大
軽乗用BEV「eスカイ」に搭載される、スズキ自製のeアクスル。2024年の技術説明では「自社製のeアクスルは次世代モデル以降になる」と聞いていたので、デビューの早さに驚いた。
軽乗用BEV「eスカイ」に搭載される、スズキ自製のeアクスル。2024年の技術説明では「自社製のeアクスルは次世代モデル以降になる」と聞いていたので、デビューの早さに驚いた。拡大
パワートレイン戦略について説明する、四輪電動技術本部長の井沢和幸氏。スズキでは、モーターなどの種類は抑えつつ、その組み合わせによって広範な車種や駆動システムをカバーする戦略を考えているのだ。
パワートレイン戦略について説明する、四輪電動技術本部長の井沢和幸氏。スズキでは、モーターなどの種類は抑えつつ、その組み合わせによって広範な車種や駆動システムをカバーする戦略を考えているのだ。拡大

開発が進む新しいエンジンとハイブリッドシステム

失礼、取り乱しました。パワートレインに話を戻すと、モーターについては地政学リスクの回避と将来的なリサイクル性の向上にも配慮し、重希土類フリー化を推進。またeアクスルに続き、電池パックや熱マネジメント、充放電などといった電池システムも、自社開発による内製化とラインナップ間での共通化を進めるとしている。こうしたあたりの“手の内化”は、軽さ、小ささ、省エネ、そして低価格と、各領域で効率化を極めようとするスズキにとって、避けて通れない道なのだろう。

一方、ハイブリッド車については、クラスに応じて最適なシステムを使い分け。軽自動車には2030年までに電動走行も可能な48Vのマイルドハイブリッドシステムを用意し、2022年モデル比で15%の燃費改善を目指すという。また小型車向けには、エンジンを発電に用い、モーターで走行するシリーズハイブリッドを採用。そこに外部からの充電機能を追加し、バッテリーの搭載重量を抑えたレンジエクステンダーEVも用意するそうだ。

もちろん、エンジン自体の改善についても引き続き注力。シリーズハイブリッド用の改良型「Z12E」エンジンでは、より幅広い使用域で熱効率40%を実現し、さらに50%の領域を目指すとしている。またインドなどの市場向けに、排気量1.2リッターの次世代DITC(直噴ターボ)エンジンも開発。内燃機の高効率化を突き詰めるとした。

ちなみに、プレゼンテーション後の質疑応答によると、将来的なパワーユニットの比率はBEV:HEV=2:8程度を想定。「だったらMTの『ジムニー』のようなクルマは、いずれお役御免ですね(泣)」と技術の人にからんだら、上述の比率はあくまで乗用車のもので、ジムニーや小型商用車などについては、今もパワートレイン戦略で頭を悩ませているとのことだった。どうぞ大いに悩んでください。そして、“By Your Side”(スズキのコーポレートスローガン)なスズキならではの最適解を、ぜひ提示してほしい。

会場には、現在開発中の3基の新エンジンも展示されていた。
会場には、現在開発中の3基の新エンジンも展示されていた。拡大
こちらは小型車向けに用意されるシリーズハイブリッドユニット。エンジンは、既存の「Z12E」を発電用に最適化して採用。2022年のパワーユニットより29%のCO2削減を目指している。
こちらは小型車向けに用意されるシリーズハイブリッドユニット。エンジンは、既存の「Z12E」を発電用に最適化して採用。2022年のパワーユニットより29%のCO2削減を目指している。拡大
軽自動車用の48Vマイルドハイブリッドユニット。自然吸気エンジンとターボエンジンの両方に設定が可能で、クラッチの搭載により、電動走行も可能としているという。
軽自動車用の48Vマイルドハイブリッドユニット。自然吸気エンジンとターボエンジンの両方に設定が可能で、クラッチの搭載により、電動走行も可能としているという。拡大
新開発の直噴ターボエンジン。排気量は1.2リッターで、126PS(93kW)の最高出力と230N・mの最大トルクを発生。40%を超える熱効率も特徴で、もちろんカーボンニュートラル燃料の使用も想定されている。
新開発の直噴ターボエンジン。排気量は1.2リッターで、126PS(93kW)の最高出力と230N・mの最大トルクを発生。40%を超える熱効率も特徴で、もちろんカーボンニュートラル燃料の使用も想定されている。拡大

適切な製品をスピーディーに提供するために

さて、ここまでは製品サイドの話。ここからは、それらを支える開発・生産体制の話だ。経済系のメディアが大々的に報じているとおり、スズキは今回の説明会で、2030年に向けて新型車の開発期間を半減すると発表した。厳密には、現在で40~48カ月となっているところを24カ月に短縮するという。

これを支えるのが開発効率(こちらは人員×時間で試算)の改善で、シミュレーションやモデルベース開発といったデジタル技術の活用、各開発工程の並行進行などにより、2020年比で30%の向上を目指すと述べた。また生産効率についても、車両のさらなるモジュール化などにより、現マネサール工場比で50%の改善を図るとしている。

ちなみにその目的だが、あくまで「急速な社会の変化に対応し、迅速に最適な製品を開発・供給できる体制を整えるため」とのこと。要は、時短に乗じてポコポコと新車を増やすことは考えていないのだ。また開発の効率化につきものである、未成熟なままでの新型車の上市についても(読者の皆さんもご記憶にあるでしょう? どこのなにとは言いませんが……)「そんなことをしていては本末転倒」と鈴木俊宏社長はキッパリ否定した。開発段階からテストメンバーが携わり、デジタル技術の活用にしても、時間をかけてシミュレーションとリアルの合わせ込み精度を高めてやっていくとのことだ。このあたりは、2025年に新しい行動理念「3現・2原」(現場・現物・現実・原理・原則)を提唱したばかりのスズキだし、心配ないでしょう。たぶん。

一方で思ったのが、そうした日系メーカーならではのつくり込みが、今後も市場で評価されるのかということ。記者も隆盛する新興メーカーの製品に触れては、「日本的なものづくりは古いのかな……」なんて悲観したりもするのだが、スズキの技術者いわく、実際にはそんなことはないという。むしろ「うちが強いマーケットや、これから伸びが期待されるマーケットは、どこも道が悪いですから」ということで、日本車の品質は喜ばれているとのことだった。日本のものづくりウオッチャーとして、ささやかながらも勇気づけられる話だった。

開発・生産に関しても大幅な効率化を追求。特に「開発期間の半減」については、高い開発速度で世界を驚かせた、中国メーカーを念頭に置いたものと思われる。
開発・生産に関しても大幅な効率化を追求。特に「開発期間の半減」については、高い開発速度で世界を驚かせた、中国メーカーを念頭に置いたものと思われる。拡大
生産効率については、今日におけるインド・マネサール工場を基準に50%の改善を図る。同工場は年産90万台の能力を持つ、インド最大の生産拠点だ。+50%という目標に対し、現時点で最も新しいカルコダ工場などが、どれほどの生産効率を実現しているのか、聞きそびれてしまった。
生産効率については、今日におけるインド・マネサール工場を基準に50%の改善を図る。同工場は年産90万台の能力を持つ、インド最大の生産拠点だ。+50%という目標に対し、現時点で最も新しいカルコダ工場などが、どれほどの生産効率を実現しているのか、聞きそびれてしまった。拡大
本稿で紹介した技術に加え、会場では操縦安定性や乗り心地など、“走り”に関する技術開発についても説明があった。開発の“時短”は図りつつも、スズキは走りのよさも妥協するつもりはないとのこと。クルマ好きの皆さん、ご安心あれ。
本稿で紹介した技術に加え、会場では操縦安定性や乗り心地など、“走り”に関する技術開発についても説明があった。開発の“時短”は図りつつも、スズキは走りのよさも妥協するつもりはないとのこと。クルマ好きの皆さん、ご安心あれ。拡大
2025年に発表されたCO2回収装置については、「スーパーキャリイ」に搭載された状態で実物が出展された。ターゲットは農作物の育成にCO2を用いる農家などで、後付けできるキットの製作も検討しているという。
2025年に発表されたCO2回収装置については、「スーパーキャリイ」に搭載された状態で実物が出展された。ターゲットは農作物の育成にCO2を用いる農家などで、後付けできるキットの製作も検討しているという。拡大

インドで年産400万台を目指すということは……

最後はスズキの生命線であるインド、そしてグローバル戦略に関するお話である。

現在スズキは日本、インド、パキスタン、インドネシア、ハンガリーに生産拠点を構えており、日本、中南米、オセアニア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパで車両を販売している。なかでも、マーケットとしても生産拠点としても大きな存在となっているのがインドだ。かの地における2025年度の販売台数は186万1704台で、これはグローバル販売(331万9975台)の56%にあたる数字だ。生産台数も234万7056台と、グローバル生産(353万2868台)の66%、すなわち3分の2を占めるに至っている。

そんな重要拠点であるインドにおいて、スズキは(厳密には現地子会社のマルチスズキ・インディアだが)2025年2月に第4の工場であるカルコダ工場(ハリヤナ州)を稼働。今後も継続的に生産能力を増強し、2030年以降は年産400万台を目指すとした。これは拡大する現地市場への対応に加え、今後成長が見込まれるアフリカなどへの輸出拠点としても、かの地に期待しているためだ。

さてソロバンのご用意を。2026年7月の資料によると、同国におけるスズキの四輪車生産能力は、年間約265万台。年産400万台というと、そこから135万台の増強となる。スズキは2026年度(2027年3月期)に約355万4000台の世界販売を見込んでいるので、まぁ生産台数も同じような数字だろう。そこに135万台が加算された将来の生産能力は、およそ490万台。スズキは2030年には、年産500万台級の自動車メーカーとなる(かもしれない)のだ。これは、今日でいえばステランティスに次ぐ数字である。

既述のとおり、鈴木社長は「やみくもに車種を増やすつもりはない」と述べていたが、さすがにここまでくると、顧客ニーズの多様化とそれに応えるラインナップの拡充は避けられないだろう。先述したDセグメント車の計画も、あるいはそれを見越してのものなのかもしれない。

2025年2月に稼働したハリヤナ州のカルコダ工場。スズキにとっては、グルガオン工場、マネサール工場、グジャラート州ハンサルプール工場に次ぐ、インドで4番目の生産拠点であり、初年度の生産能力は25万台とされていた。
2025年2月に稼働したハリヤナ州のカルコダ工場。スズキにとっては、グルガオン工場、マネサール工場、グジャラート州ハンサルプール工場に次ぐ、インドで4番目の生産拠点であり、初年度の生産能力は25万台とされていた。拡大
グローバル戦略の観点では、輸出拠点としても期待されているインド。2025年度は、アフリカ、日本、欧州などに44万8000台を輸出。前年比は135%で、過去最高の台数を記録した。
グローバル戦略の観点では、輸出拠点としても期待されているインド。2025年度は、アフリカ、日本、欧州などに44万8000台を輸出。前年比は135%で、過去最高の台数を記録した。拡大
インド関連の技術としては、現地で販売されるSUV「ビクトリス」のCNG仕様が出展された。CNG車は燃料代が安いことから現地で人気が高く、また1万km走行あたりのCO2排出量が純ガソリン車より約155kg少ないなど(スズキ試算)、環境負荷も小さいとされている。
インド関連の技術としては、現地で販売されるSUV「ビクトリス」のCNG仕様が出展された。CNG車は燃料代が安いことから現地で人気が高く、また1万km走行あたりのCO2排出量が純ガソリン車より約155kg少ないなど(スズキ試算)、環境負荷も小さいとされている。拡大
そのCNG車に燃料を供給する事業として注目されているのが、牛フンなどからガスを生成するバイオガス事業。2025年にはインドで新たに3基のプラントが稼働。2026年7月には日印政府がインドに1000基のプラントを導入する「日印CNGイニシアチブ」に合意するなど、推進の動きが加速している。写真はブカラのバイオガスプラント。よく見ると、敷地内に鳥居が建てられている。
そのCNG車に燃料を供給する事業として注目されているのが、牛フンなどからガスを生成するバイオガス事業。2025年にはインドで新たに3基のプラントが稼働。2026年7月には日印政府がインドに1000基のプラントを導入する「日印CNGイニシアチブ」に合意するなど、推進の動きが加速している。写真はブカラのバイオガスプラント。よく見ると、敷地内に鳥居が建てられている。拡大

そのとき、あなたは浜松にいますか?

もうひとつインドの話をしたい。今回の説明によると、スズキはおひざ元の日本において新技術や機能の開発を行い、それをマルチスズキと共有。それぞれの顧客や市場に合わせた製品開発・量産開発を行っているという。

そこで気になったのが生産技術の開発についてで、要は「これだけインドの比重が大きいスズキでも、生産技術の先行開発は日本の工場が担うのか?」ということだ。今年の説明会にはインドからもスタッフが参加しており、質疑における「日本とインドでは生産のやり方も違うけれど、インドのほうが進んでいるところもあって……」という答弁に、記者はやっぱりねと思ったのだ。この点については鈴木社長も、「インドではまっさらな状態から新工場を建てられるので、日本より新しいチャレンジがしやすい」とのことである。

うーむ。そうなると、やがてはスズキ&マルチスズキのマザー工場は、日本ではなくインドに移るのか? そうなった場合、製品開発はどうなるのだ。鈴木社長も「生産だけががんばるのではなく、新しい生産技術に合わせて、クルマの設計も変えていこうよ」と言っていたが……。

……読者諸氏の皆さま、今から10年後のスズキは、いったいどんなメーカーになっているのでしょうね? 世界で500万台を生産・販売し、小型車のみならずミドルクラスの車種もラインナップし、日系メーカー2位の地位を盤石のものとした彼らは、そのときも日本にいるのかしら? 浜松に母屋はあるのかしら?

彼らの輝かしい未来像に胸をときめかせつつ、「英国発祥が売りだけど、今やほとんどがタイ製かインド製」となった某バイクメーカーや、創業の地にマーケティングとブランドの戦略拠点だけが残る某タイヤメーカーみたいになっていたら、ちょっと寂しいなと、そんなことも思ってしまった2026年のスズキの技術説明会だった。

(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=スズキ、webCG/編集=堀田剛資)
 

現在進行形で進むインドでの生産能力の強化。2026年5月にはカルコダ工場で第2ラインが稼働。生産能力が年間50万台に増強された。
現在進行形で進むインドでの生産能力の強化。2026年5月にはカルコダ工場で第2ラインが稼働。生産能力が年間50万台に増強された。拡大
グジャラート州のハンサルプール工場では、2026年7月に年産25万台のD工場が稼働。さらにグジャラート州では、サナンド市に新たな工場を建てる計画も進められている。
グジャラート州のハンサルプール工場では、2026年7月に年産25万台のD工場が稼働。さらにグジャラート州では、サナンド市に新たな工場を建てる計画も進められている。拡大
技術戦略説明会より、マルチスズキで四輪技術担当を務めるTarun Aggarwal(タルン・アガルワル)氏。
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マルチスズキで四輪生産担当を務める、Sarada Prasana Nayak(サラダ・プラサンナ・ナヤク)氏。
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スズキの技術戦略説明会「10年先を見据えた技術戦略2026」より、報道関係者であふれた展示エリアの様子。
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堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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