第97回:日本製ドライブレコーダーをイタリアで使うぞ! 大作戦
2009.06.27 マッキナ あらモーダ!第97回:日本製ドライブレコーダーをイタリアで使うぞ! 大作戦
ドライブレコーダーを買う
イタリアで運転を始めて13年。おかげさまで無事故無違反で過ごしてきた。しかし、自分がいつ事故の当事者になるかはわからない。それに事故の相手として確率が高いのは、当然のことながらネイティヴのイタリア人。声のボリューム、弁が立つことに関しては欧州内でも一級の人たちである。こちらがまったく不利なのは明らかだ。
そこでボクが考えたのがドライブレコーダーの導入である。日本でタクシーから普及が始まり、その後各種民生用が売り出された、あれだ。
1年半前のことだった。損保業界で40年近く働いているイタリア人の友人に聞いてみたら、ドライブレコーダーの存在すら知らず、思わずこちらがコケてしまった。
ただ、彼いわく「事故のとき、事故後でも現場写真を即座に撮影しておくと、その後の処理がかなり円滑になる」とのこと。したがって、イタリアでもドライブレコーダーの有効性は高いと思われた。
ただしその頃のイタリアでは、ドライブレコーダーは自動車専門誌などで国外の話題として採り上げられているだけで、実際には販売されていなかった(ようやく最近になって、日本円にして4万円くらいで通信販売されるようになった)。
そこでボクは、日本でドライブレコーダーを購入することした。
イタリアに戻って自分で装着しなければいけないので、プロの手を介する必要があるものはダメだ。
その結果辿りついたのが、ベンチャークラフトという日本の会社が作っている「パパラッチ」という商品である。通販サイト経由のメーカー直販で3万円以下という価格も、サイフの軽いボクにはありがたい。
夜もバッチリ
「パパラッチ」は両面テープでフロントガラスに固定し、シガーライターから電源をとり、カメラ角度をガラスの斜面に合わせて調節するだけ。いたって簡単である。面倒くさがりなボクには、本当に嬉しい。映像はSDカードに記録され、パソコンのウィンドウズメディアプレイヤーで再生できる。
シガーライタープラグから本体に至る電源ケーブルは、最初のうちは付属の貼り付け式留め具を使ってピラーに留めておいたが、どうも見栄えが悪い。そこでピラー/天井とボディの隙間を見つけてケーブルをできるかぎり押し込んだところ、かなりすっきりした。
肝心の撮影画像はというと、思ったよりも遥かに鮮明で驚いた。街灯のない道が多くてどうしようもないイタリアの夜もバッチリだ。ちなみに最近発売された改良型は、さらに夜間撮影性能が向上しているようだ。
イタリアならではの苦労あり
なお以下の文は、日本で同様の製品を使う人には、ほとんど心配ないものが多い。「へえー」という軽い気持ちで、異国情緒として読んでいただきたい。
日本製品をイタリアで使うとなればいろんな不都合もある。まず時刻が日本標準時に固定されていて変更できないという点があるが、別の問題も解決しなければならなかった。
パパラッチはフロントガラスに付属の両面テープで貼り付ける方式だ。しかし、車上荒らしが多いイタリアで、せっかく買ったドライブレコーダーを盗まれてはたまらない。そこで脱着できるよう、女房から衣類用のマジックテープを少し分けてもらい、ガラスに貼り付けた。乗り降りするたびにバリバリと着脱して使用するというわけである。
ところがやがて夏が来ると問題が発生した。マジックテープの裏に付いた粘着剤が車内の熱で溶けてしまい、マジックテープの雄雌どうしは大丈夫でも、意味をなさなくなってしまったのだ。
また、運転中に本体が突然眼前に落ちてきたこともあった。SDカードを抜いて収録画像を観たら、落ちた拍子にカメラがこちらを向いてしまったのだろう、ビビる自分がバッチリ映っていた。これでは本当に事故で衝撃を受けたときにも、落っこちてしまうに違いない。
そんな折思い出したのは、イタリア式ETCである「テレパス」を固定している両面テープだ。3M製のそれは「デュアルロック・ファスナー」という名前だ。衣類用とは比べものにならないくらい厚く頑丈なうえ、炎天下に放置した車内でもビクともしない。
幸い、次に東京に行った時に東急ハンズで同じものを発見したので、持ち帰ってそれで固定すると問題は即座に解決した。
気分は『カーグラフィックTV』!
ドライブレコーダーで気をつけなければならないこととして、他にガラスに貼り付ける物との位置の兼ね合いがある。ヨーロッパでクルマに乗っていると、なにかと貼るものが多いからだ。
たとえば、オーストリアやスイスを通行するとき、「ヴィニェット」と呼ばれる高速道路通行証ステッカーを貼る。ドライブレコーダーもヴィニェットも、窓ガラス上部の日除けスモーク部分にかからぬよう貼らなければならない。ヴィニェットは、他車への使いまわしができぬよう、剥がすと破れるようになっている。貼り直しがきかない。決まりではガラス上部のほかに「運転席側Aピラー横に貼っても可」となっているが、ボクにとってはそれは目障りだ。
さらに前述の「テレパス」もある。日本のETCと違って電源不要の至極簡単なものだが、これもフロントウィンドウ上部が誤作動を防ぐ正しい位置だという。
それらに加えて、ルームミラーを支える支柱を避ける必要もある。
したがって、ドライブレコーダーを含むすべてをガラス上のどこに配置するか、レイアウトを考えるのはそれなりに大変なのだ。
それからもうひとつ、イタリアをはじめ欧州では、ロータリー式の交差点が日本と比べ物にならないくらい多い。それもかなり早いスピードで通過するので横Gを感じたりする。
すると、急ブレーキや急ハンドルなどの衝撃を感知して自動録画するパパラッチは、その横Gを感知して、交差点を通過する度に録画開始を知らせる「ピピッ」という作動音を鳴らすのだ。
まあ、ちょっとした揺れでも確実に記録しているという、安心の証だと思うことにしている。
そもそも呑気なボクは、急なコーナリングで作動してしまったときの映像をパソコンで再生しながら、「カーグラフィックTV!」などと叫びながら楽しんでいるのだから。
お守りシナジー効果2倍の秘策
ちなみにドライブレコーダーを、もっとヨーロッパでも普及させる方法を考えてみた。こちらでは、交通安全の守護聖人として崇められている聖クリストフォロスのステッカーをダッシュボードに貼っている人が多い。幼少期のキリストを肩に担いで川を渡っている図である。
そこで、この聖人をプリントしたドライブレコーダーを販売すればいいのではないかと思った。お守りシナジー効果2倍である。
なんて書いているうちに、これを読んだ日本の積極的な神主さんが「安全祈願お払い済みドラレコ」を売り出しそうであるが……。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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