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【スペック】全長×全幅×全高=4881×1915×1353/ホイールベース=2942mm/車重=1880kg/駆動方式=FR/4.7リッターV8DOHC32バルブ(440ps/7000rpm、50.0kgm/4750rpm)/価格=1750.0万円

マセラーティ・グラントゥーリズモS(FR/6MT)【海外試乗記(後編)】

新しい舞台(後編) 2008.08.13 試乗記 新井 勉 マセラーティ・グラントゥーリズモS(FR/6MT)
……1750.0万円

マセラーティの新型スポーツカー「グラントゥーリズモS」に試乗したリポーターは、スポーツカーと呼ぶにふさわしいパフォーマンスを備えるだけでなく、ラクシュリーカーとしての性能も満たす乗り味を実感した。

『CG』2008年8月号から転載。
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性能も超一級

もちろん、GTSはエグゾーストノートが美しいだけのクーペではない。奏でる調べが一級なら性能も超一級、回転の上昇に合わせてリニアにパワーを盛り上げる4.7リッターV8は、典型的な高回転型の特性を示す。しかも、気筒あたりの排気量が586ccもあるというのに、まるで小排気量マルチシリンダーのようなスムーズさでレッドゾーンを目指すのだ。あまりに滑らかに吹け上がるものだから、低中速トルクが足りないような印象も受けてしまうが、実際にはどこから踏んでもあり余るトルクで1995kgもあるボディを引っ張り続け、アウトストラーダではあっという間に250km/hを超えた。
ちなみに、マセラーティの公表する最高速は295km/h。発進加速は0-100km/h:4.9秒、0-400m:13.0秒、0-1km:23.0秒という性能を誇る。

もうひとつの驚きは、乾式ツインプレート・クラッチを備えた6段シーケンシャル・ギアボックスのシフトマナーが格段に向上したことにある。例によってこのセミ・オートマチックシステムにはマニュアルモードとオートモードがあり、それぞれにノーマルとスポーツを用意。さらにマニュアル・スポーツモードを選ぶと、特定の条件を満たすことによって変速速度を速める“MC-Shift”が働くようになっている。このMCシフトはエンジン回転数5500rpm以上、スロットル開度80%以上のときに作動し、シフトチェンジに要する時間を0.1秒まで短縮するという。

実際、フルスロットルのまま7500rpmでステアリング右側のシフトパドルを引くと瞬時にシフトアップを済ませ、しかも変速ショックも極端に少なくなっていた。このシステムのソフトウェアは、フェラーリのF1スーパーファストのそれを流用しているに違いない。

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優雅さと心地よさ

それにしても、GTSのなんと乗りやすいことか。全力疾走の興奮を冷ますために、アウトストラーダでオート・ノーマルモードを選んで巡航させたときの心地よさ、なかでもキャビンの静粛性の高さは特筆もので、6速4700rpmの200km/h巡航でさえパセンジャーと普通に会話できる。このとき、路面によっては前245/35ZR20 95Y、後285/35ZR20 100Yという極太サイズのピレリPゼロが路面を蹴る音が気になることもあったが、これほどの速度でも風切り音は室内に及ばず、パワートレーンが発するメカニカルノイズもかすかに耳に届くにすぎなかった。

モデナの市街に戻って感心したのは、発進時のクラッチミートがかつてとは比べものにならないほどスムーズになっていたことで、強大なトルクを利して低回転で行なわれる自動シフトのスケジュールに違和感を覚えることもない。このあたりにフェラーリ599とは異なる制御の巧みさ、システムの進化を感じさせる。

ただし、操縦性の向上を目的に締め上げられたサスペンションは、低速での乗り心地が少し硬い。テスト車は一般的なオイル/ガスダンパーを装着した標準仕様で(オプションで電子制御スカイフック・サスペンションも選べる)、普通のGTに比べて減衰力を約10%上げたほか、スプリングレートもわずかに高めているという。感覚的には日本で走らせたGTのスカイフック仕様ノーマルモードの2割増し程度の硬さに感じられ、いっぽう、スポーツモードと比べればしなやかな動きに終始する。荒れた路面では凹凸を正確に拾う傾向にあるものの、突き上げ感は意外なほど少なく、速度を上げればフラット感が強調されるなど、全体としてはとてもバランスの取れたサスペンション・セッティングだと思う。

内装にはポルトローナ・フラウ社のレザーを採用。電動シートはレザーとアルカンターラのコンビネーションが標準で、10種類のレザーカラーから選べる。また13種類のステッチカラー、3種類のウッドパネル(または5種類のカラーパネル)、5種類のカーペットカラーなど、インテリアの組み合わせはオーナーが自由に選べるのが特徴だ。
内装にはポルトローナ・フラウ社のレザーを採用。電動シートはレザーとアルカンターラのコンビネーションが標準で、10種類のレザーカラーから選べる。また13種類のステッチカラー、3種類のウッドパネル(または5種類のカラーパネル)、5種類のカーペットカラーなど、インテリアの組み合わせはオーナーが自由に選べるのが特徴だ。 拡大

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走らせるのが愉しい

トランスアクスル方式を採用することで、前後重量配分をこれまでの49:51から47:53に変更。これに合わせてリアサブフレームを強化し、リアスタビライザーの捩れ剛性を2%アップしたというシャシーの運動性能がどれほど向上しているのか、個人的にはこの点に最も興味を持っていたが、ワイディングロードにさしかかると大粒の雨が落ち始め、残念ながら操縦性を試せる状況ではなかった。

Pゼロの排水性をもってしても、スロットルの踏み加減ひとつでアンダーにもオーバーに変化するといった具合で、MSP(マセラーティ・スタビリティ・プログラム)の介入が思いのほか遅いこと、ブレーキのペダルタッチと制動力がスポーツカーの要求を満たしていること、そして基本的にアンダーステアに躾けられていること以外に報告できることはない。ただ、それでも操る感覚において、知的興奮を覚えたのは確かだ。つまり、走らせるのが愉しい。

この洗練されたスタイリングと内に秘めた漲るパワー、スポーツカーと呼ぶにふさわしいパフォーマンスを備えながら、ラクシュリーカーとしての性能も満たすマセラーティ・グラントゥーリズモSは、今秋にも日本でのデリバリーがはじまるという。GTSの価格は1750万円。これほどの性能でGTの220万円プラスというのは、マセラーティもずいぶんと頑張ったものである。

(文=CG新井勉/写真=MASERATI)

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