ダイハツ自慢の生産工場「コペンファクトリー」訪問記
2015.07.07 画像・写真ダイハツ工業は2015年6月、大阪府池田市の同社本社第二地区に設けられた、オープン軽「コペン」のボディー骨格生産ラインと、同車の専用生産施設である「コペンファクトリー」を、報道陣に初めて公開した。
以前は「エキスパートセンター」として先代コペンを、さらに前には「ミゼットII」を生産していた“工房”は、新型コペンの発表を機に設備の総替えを実施。最新設備を導入する一方で、人の手を使った精密な小規模生産ラインも構築し、日々コペンを送り出している。
現行型コペンの生産累計は、2015年5月末現在で1万753台。同年6月の生産ペースは月産440台だった。生産に関わる人員は120人で、工程数はボディー、塗装、組み立て(コペンファクトリーにて実施)の全68工程。その中から、ボディー生産や最終組み立て、検査などの様子を写真で紹介する。
(文と写真=岩尾信哉)

大阪府池田市ダイハツ町のダイハツ工業本社工場内に設けられた、「コペン」の組み立て・最終検査ラインである「コペンファクトリー」。正面入り口には、“第3のコペン”である「コペン セロ」が展示されていた。
-
大阪府池田市ダイハツ町のダイハツ工業本社工場内に設けられた、「コペン」の組み立て・最終検査ラインである「コペンファクトリー」。正面入り口には、“第3のコペン”である「コペン セロ」が展示されていた。
-
当日の取材は、ダイハツ本社西工場内からスタート。「D-Frame」と呼ばれるコペンの主要ボディー骨格の製造工程から見学した。こちらは「コペンファクトリー」と違い、「コペン」のオーナー以外でも見学申し込みが可能な生産現場である。
-
高い防錆(ぼうせい)性と見栄えのために「黒塗り電着厚膜塗装」が施された、「コペン」のボディー骨格(写真手前が現行型で、奥は先代型)。高張力鋼板(980MPa級ハイテン鋼を含む)は、アンダーフロアまわりを中心に約3割採用されている。
-
溶接ロボットがフレームをつなぎ合わせていく。溶接に伴うスパッタ(発火)を溶接ガンの角度や接触圧などを調整して抑えている。なお、ボディー骨格生産の自動化率は旧型の10%から新型では90%に増加した。写真手前に見えるのは、ボディー骨格を移動させるための台車の取っ手である。
-
フレーム接合部を“ろう付け”と呼ばれる溶接技術で仕上げる工程。ろう付け工程を担当するのは、25人の中から選ばれた、技能の高い作業員4人のみ。ダイハツは引き続き、このろう付け工程の人員育成に取り組んでいくとのこと。
-
コペンのボディーは、金属の骨格に樹脂外板を組み合わせた構造であるため、高い製造精度が要求される。これに対応するため、ブースの上部左右などに設置された3次元計測カメラによって、ボディー骨格の製造精度がチェックされる(ダイハツ初)。パーツ取り付けのための計測基準点は、81カ所設定されている。
-
場所は変わって、「コペンファクトリー」の組み立てライン。白いフロアをはじめ、清潔さが際立つスペースだ。建屋は2階建てとなる。
-
組み立てラインの第1工程では、トランクフード(取り外し可能なパネルのひとつ)や、樹脂製のルーフなどが組み付けられる。
-
樹脂製ルーフの組み付けは、2人での作業となる。なお、「コペンファクトリー」での組み立て工程と検査工程は、施設内の左右に分かれて実施されており、その総人員は60人。タイムタクト(作業に要する時間)は1工程あたり15分と長めに設定されている。そのため、2個の作業用モニターを使用することで、“作業の見える化”が図られている。
-
サッシュとガラス部分の組み立て調整など、今回非公開とされた工程を含め、組み立てライン全体には、作業指示用の大型モニターと締め付け確認用の小型タブレット型モニターが用意される。後者を使うことで、デジタルトルクレンチによる個々のボルトの締め付け量が確認できるほか、車両に関するデータが蓄積される。
-
樹脂パネルが組み付けられる前の「コペン」。ボディー骨格の各所に、樹脂パネルなどの外板部品の組み付けポイントが打ち込まれている。
-
外装部品の樹脂製パネルや、ステアリングホイールをはじめとする多くの内装部品が組み付けられていく。「コペンファクトリー」では静粛性確保のために、制音タイプの電動レンチが使用されている。
-
塗装検査ライン。それぞれの工程は、見学者用に用意された大型モニター(写真上部)でも確認できる。
-
最終作動確認の検査ブース。この前の工程では、オープンカーである「コペン」のためにノズルの角度や位置が調整されたシャワーによる水漏れ検査が行われるほか、ドイツ製「オフロードテスター」を使い悪路やベルジャン路、一般路などを再現しての異音検査なども実施される。残念ながら、それらの撮影は許されていない。
-
車体をリフトアップし、アンダーフロアもチェック。この「コペンファクトリー」の見学は、2014年7月から「コペン」オーナー限定で実施されていたが、2015年秋には、オーナー以外を対象とした一般公開も始められる予定だという。