「いすゞヒストリックカー撮影会」の会場から(前編)
2016.12.28 画像・写真2016年12月25日、神奈川県藤沢市にあるいすゞ自動車藤沢工場で、「いすゞヒストリックカー撮影会」が開かれた。これに先立つこと5日の12月20日、いすゞは創立80周年記念事業の一環として、藤沢工場の隣接地に建設を進めていた「いすゞプラザ」の完成を発表した。いすゞプラザは、いすゞの歴史を紹介するミュージアムエリアと、ものづくり教室などを開催するコミュニティーエリアからなり、地域貢献といすゞを身近に感じてもらうための施設として、2017年4月に開館予定となっている。今回の撮影会は、そのいすゞプラザのミュージアムエリアに展示するためにレストアした車両が主役。国内に現存する実走可能な最古の国産バスである1932年「スミダM型バス」から、最新の路線バス「エルガ」までの12台で、「エルガ」を除いては走行も披露した。前編では、残存車両が極めて少ない、いすゞ初のオリジナル乗用車である「ベレル」をはじめ、乗用車を中心に紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)
→「いすゞヒストリックカー撮影会」の会場から(後編)につづく
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1/211964年「ベレル2000ディーゼル スペシャルデラックス」。1962年にいすゞ初のオリジナル乗用車として誕生したベレルは、ガソリンエンジン車に加えて日本初の量産ディーゼル乗用車(日本初のディーゼル乗用車は1959年に登場した「トヨペット・クラウン ディーゼル」だが、生産台数はごくわずかといわれている)もラインナップ。しかも1963年以降は、オーナードライバー向けを想定した高級グレードの「スペシャルデラックス」にもディーゼル車を用意していた。
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2/21三角形のテールランプが特徴的な「ベレル2000ディーゼル スペシャルデラックス」のリアビュー。ベレルのスタイリングには、1950年代後半から1960年代初頭にかけてのピニンファリーナデザインの影響が強く感じられる。だがまとまりに欠ける感は否めず、また「クラウン」や「セドリック」「グロリア」といった先行していたライバルたちが、みなアメリカ指向のボディーをまとっていた市場にあっては、異質な存在だった。
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3/21「ベレル2000ディーゼル スペシャルデラックス」のディーゼルエンジン。小型トラック「エルフ」用と同じで、1991cc直4 OHVから最高出力55ps/3800rpm、最大トルク12.3kgm/2200rpmを発生する。基本設計がトラック用のため騒音や振動が大きく、乗用車には不向きだった。
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4/21「ベレル2000ディーゼル スペシャルデラックス」の前席まわり。シートはベンチ式で、ギアボックスは1速がノンシンクロの4段コラムシフト。パーキングブレーキは運転席とドアの間に位置するが、この形式から「サイドブレーキ」という和製英語が生まれた。
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5/21「ベレル2000ディーゼル スペシャルデラックス」の後席まわり。当時の5ナンバーフルサイズ車は営業車(タクシー)や法人需要が大半を占めており、居住空間は後席優先。スペシャルデラックスは高級グレードのため、シートや内張には凝った織物が使われている。
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6/211967年「ベレット エキスプレス」。小型サルーン、ベレットの派生車種となる4ナンバーの商用バン。とはいえ車体はベレットのモノコックボディーがベースではなく、エキスプレスと同様にベレットの顔つきを持つ小型ボンネットトラックである「ワスプ」と共通のラダーフレームを持つ。サスペンションもワスプと共通で、フロントの形式は「ベレット サルーン」と同じダブルウィッシュボーンだが、スプリングはコイルではなくトーションバーである。
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7/21「ベレット エキスプレス」のホイールベースは、「ベレット サルーン」より150mm長い2500mm。ボンネットやドアなどのパネルはサルーンと共通だが、ホイールがサルーンの13インチに対して14インチとなるため、フロントフェンダーはベースとなった「ワスプ」と共通。テールゲートは下方開き式で、電動式のリアウィンドウを下げないと開かない。
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8/21「ベレット エキスプレス」のインパネまわりは「サルーン」と共通。フロントシートはベンチ式で、ギアボックスは4段コラムシフト。
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9/21「ベレット エキスプレス」のエンジンは「1300サルーン」と共通で、1325cc直4 OHVから最高出力58ps/5000rpm、最大トルク9.8kgm/1800rpmを発生する。1964年に登場したエキスプレスの初期型には、1.8リッターのディーゼルエンジンも用意されていたが、1966年のマイナーチェンジの際に消滅。エキスプレス自体も、1968年の「フローリアン バン」の登場により生産終了した。
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10/211969年「117クーペ」。カロッツェリア・ギア時代のジウジアーロの手になる美しいボディーを、「フローリアン」をベースにしたシャシーに載せた高級パーソナルカー。117クーペは1968年12月のデビューから1973年3月までの、いわゆるハンドメイド時代のモデルと、それ以降の量産型に大別されるが、この個体はハンドメイドのなかでも生産開始から84台目という初期型。サイドマーカーランプの形状や熱線プリントなしのリアウィンドウなど、後のモデルとは仕様が若干異なる。
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11/21「117クーペ」のリアビュー。微妙なカーブを描くトランクリッドなどに、ほぼ同時代のジウジアーロの作品である「フィアット・ディーノ クーペ」との近似性が感じられる。
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12/21天然木の計器盤にメーター類を完備し、高級グランツーリズモ然とした「117クーペ」のインテリア。発売当時の172万円というプライスは、1.6リッター級ながら国産車では「日産プレジデント」「トヨタ・センチュリー」「トヨタ2000GT」「マツダ・ルーチェ ロータリークーペ スーパーデラックス」に次ぐ高価格だった。
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13/21「117クーペ」の後席はプラス2ではなく、フル4シーターである。
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14/21ベースとなった「フローリアン」や「ベレット1600GT」に使われていた1.6リッター直4 OHVをDOHC化した「117クーペ」のエンジン。ツインチョークのソレックスキャブレターを2基備え、1584ccから最高出力120ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5000rpmを発生する。
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15/211975年「ジェミニ・セダンLT」。当時いすゞが提携していたGMのグローバルカー構想に基づく「Tカー計画」から生まれたモデル。Tカーでは基本となるシャシーおよびボディーはドイツの「オペル・カデット」と共通で、あとの部分は各国の事情に応じてローカライズしていた。いすゞのラインナップ上、ジェミニは「ベレット」の後継モデルということで、1974年のデビュー当初は「ベレット ジェミニ」と称していた。
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16/21当時の日本車とは一線を画するクリーンなスタイリングの「ジェミニ セダンLT」。ビビッドなカラーも珍しかった。ちなみにLTは、3つ用意されたグレードのうち、「LD」(通常の「デラックス」相当)、「LS」(「スポーティDX」相当)の中間に位置する「スーパーDX」相当のグレード。
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17/21「ジェミニ・セダンLT」のインテリア。4本スポークのステアリングホイールはドイツ車的だが、インパネはいすゞ独自のデザインである。前方から斜めに突き出た、ダイレクト式の4段フロアシフトのシフトレバーが、当時はアルファ・ロメオ風でかっこよく見えたものだった。
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18/21「ベレット」用の直4 SOHCターンフローをクロスフロー化した「ジェミニ セダンLT」のエンジン。1584ccから最高出力100ps/6000rpm、最大トルク14.0kgm/4000rpmを発生する。
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19/211973年「シボレーLUV(ラブ)」。1972年に登場した1t積みトラック「ファスター」を、提携していたGMにOEM供給し、北米でシボレーブランドで販売したモデル。車名のLUVとはLight Utility Vehicleの略。顔つきや一部のボディーパネルは、ファスター同様「フローリアン」と共通である。
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20/21荷台のアオリ部分に“CHEVROLET”ロゴがプレスされた「シボレーLUV」のリアビュー。
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21/21「シボレーLUV」のエンジンは、「ベレット」「フローリアン」「117クーペ」などにも使われていた直4 SOHCターンフロー1817cc。最高出力75ps/5000rpmとチューンは低く抑えられていた。