「オートモデラー 模型展示会&交流会 2022年夏」の会場から
2022.08.05 画像・写真2022年7月18日、東京・江東区有明にある世界最大級の屋内型ミニチュアテーマパークであるスモールワールズTOKYOの特設会場において、「オートモデラー 模型展示会&交流会 2022年夏」が開かれた。2021年10月に初開催され、今回で3回目となるこの集いは、四輪、二輪などのスケールモデルから「ミニ四駆」まで、車両の模型であれば誰もが展示できるイベントだ。事前の参加予約は不要で当日作品を持ち込めばよく、手ぶらで来場して見学するだけでもいい。いずれの場合もスモールワールズTOKYOの入場料は必要だが、展示会&交流会の参加費は無料である。
というわけで門戸は広いのだが、初回開催時に模型雑誌などで活躍する著名なカーモデラー諸氏に声をかけて始まったという経緯もあって、優に100点を超えていたであろう展示作品にはハイレベルなものが多かった。それらの作品を眺め、手がけたモデラー氏に製作エピソードなどを伺っていると、しばし時のたつのを忘れてしまった。そんな会場から、特にリポーターの印象に残った作品を中心に紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
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1/30ズラリと並んだ、カルソニックカラーをまとった日産のコンペティションマシン。最も知名度が高いと思われる、全日本ツーリングカー選手権で星野一義が駆ったグループA仕様の「スカイラインGT-R」(BNR32)が見当たらないが、「以前につくったものが古くなったので、新たに製作するつもりだったが……」とのこと。
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2/30プロモデラーの北澤志朗さんによる、旧ヤマダなどの金型を流用した童友社の「ノスタルジックヒーローズ」改め「昭和の名車」シリーズの作例。オリジナルは半世紀前に生まれたキットだが、いずれもプロポーション、雰囲気は悪くない。ただし3種類ぐらいあるというシャシーのサイズにボディーを合わせているため、スケールが統一されておらず、こうして並べると初代「日産チェリー クーペ」が初代「フォード・カプリ」より大きいといった珍現象が生まれる。
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3/30「昭和の名車」シリーズの「日産チェリー クーペ」。キットは最強グレードの「X-1 R」だが、オーバーフェンダーを切り落とすなどしてラグジュアリーな「X-1 L」仕様にしている。北澤さんによれば「キットにはX-1 Rにはないリアガーニッシュやレザートップのパーティングラインがモールドされているので、本来はX-1 Lをキット化したものをオバフェンの街道レーサーに改変したあと、X-1 R名義にしたのだろう……」とのこと。つまり手を加えて本来の姿に戻したわけだ。
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4/30「昭和の名車」シリーズの「ホンダ1300 99S」。オリジナルは今から半世紀以上前に発売されたキットで、筆者も小学生時代につくったが、プロポーション、モールドともに(当時のレベルでは)すばらしかった覚えがある。それがひとりよがりではなかった証拠に、腕自慢が少し手を加えればご覧のような出来栄えとなる。
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5/30タミヤの1/24「ホンダ・バラードスポーツCR-X 1.5i」をベースに「1.3」にダウングレードし、カップルのフィギュアを乗せ、オプションカタログ(写真右上)に倣ってルーフキャリアにスキーを積んでいる。
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6/30ハセガワの1/24「トヨタ・スターレット1300Si」(EP71)をベースに、量販グレード「ソレイユ」のキャンバストップ仕様にモディファイ。シート地など芸が細かく、よく見ると後席にキットが山積みになっている!
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7/30同じハセガワの1/24「スターレット」(EP71)でも、こちらは「ターボSスーパーリミテッド」がベース。イメージは架空のショップのデモカーだそうで、ウインカーやサイドマーカーを点灯式にして、ドアの車名デカール部分には電飾を仕込んでいる。
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8/30ハセガワの1/24「いすゞ・ジェミニZZハンドリング・バイ・ロータス」(JT190)。パーセルシェルフに載せたBOSEのスピーカーなど、これまた芸が細かい……なんて次元の話ではない。あまりに自然なので見落としてしまいそうになるが、実はこれ、キット化されているのは4ドアセダンのみ。それをベースに3ドアハッチバックにつくり変えているのである。
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9/30フジミの1/24「いすゞ117クーペ」。キットのモデルは後期型の中間グレード「XC-J」だが、ホイールを自作するなどしてトップグレードの「XE」にコンバートしている。
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10/302台の1/24「日産スカイライン ハードトップ2000GT-R」(KPGC110)。右はハセガワの新作、左はアオシマの車幅を4mmほど詰めているそうだが、それでもハセガワに比べると広い。ワイド&ローでカッコイイが、本来のキットを24倍すると3ナンバー仕様になってしまうかも。
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11/301/24「日産スカイライン クーペ2000GTS-4」(R32)。こんなキットあったっけ? と思いきや、ボディーはアオシマの、シャシーはタミヤのそれぞれ「スカイラインGT-R」(BNR32)のキットをベースにモディファイしているとのこと。
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12/30ベースはアオシマの1/24「マツダ・サバンナRX-7」(FC3S)。漫画『バリバリ伝説』の巨摩 郡が乗る前期型FCをイメージして製作したという。
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13/30タミヤの1/24「トヨタGRスープラ」改スパイダー。「トヨタ2000GT」のボンドカーを意識して製作したそうだが、実在する車両をモデル化した市販キットのような雰囲気だ。
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14/30エンジンルーム内のつくり込みがすごかったタミヤの1/24「トヨタ・セリカGT-FOUR」。本来のパーツはインタークーラーのカバーくらいで、あとはほとんど3Dプリンターで自作したそうだが、配線のカプラーまで再現されている。出来栄えもさることながら、こうした場所に集まるモデラーの多くが40代以上であるのに対して、作者が28歳の青年だったことにも感動した。
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15/30韓国・アカデミー製の1/24「ヒュンダイ・ポニー」。実車は初代「三菱ランサー」をベースにしたシャシーにジウジアーロ・デザインのボディーを載せ、やはり三菱の「サターン」ユニット(直4 SOHC)を積み、1975年にデビューしたモデル。
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16/30メビウスモデルの1/25「ハドソン・ホーネット コンバーチブル」。ドアとトランクリッドを開閉式にして、エンジンはプラグコードを付加したくらいとのことだが、とても丁寧に仕上げられた作品。ツートーンのメタリック塗装の色合い、ツヤも見事だ。
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17/30イタレリの1/24「フェラーリ288GTO」。本来はプロポーションキットだが、フル開閉式として各部を入念にディテールアップ。ボディーカラーが赤じゃないところもいい感じだ。
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18/30アリイの1/32「ポルシェ911S」をベースに、レストアされ話題となった元神奈川県警の「ポルシェ912」パトカー仕様に仕立てている。赤色灯やサイレンなどは同じアリイの1/32「トヨペット・クラウンRSパトカー」から流用したとのこと。
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19/30ドイツレベルの1/24「フォルクスワーゲン・タイプ2 ウエストファリア キャンパー」。接着剤不要のスナップキットながら、プロポーション、精密さ、組み立て精度ともにハイレベルで評判のキットに、フィギュアや小道具を配してディテールアップ。
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20/30エレールの1/24「ルノー・エスタフェ」。これも出来のいいキットだが、手を加えてさらに魅力的にしている。本来の組み立て手順ではボディーとシャシーをガッチリ接着してしまうため、かなり精密に再現されたサスペンションやパワートレインなどが見られなくなってしまうとのことで……。
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21/30先の「ルノー・エスタフェ」。写真左上から時計回りに見ていくと……。【左上】完成後も内部が見られるように、パネルやシャシーに磁石を付けて組み立て/分解ができるようにしている。【右上】吸排気系やリブの入ったトランスミッションケースなど、かなり精密に表現されたパワートレイン。【右下】フロントグリルの出来がいいと思ったら……。【左下】フロントグリルは3Dプリンターによる自作だった。右側がキット本来のグリルで、左側が3Dプリンター製。分かりにくいが、ちゃんと網目が抜けている。
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22/30この3月に亡くなった高橋国光氏を追悼して、多くのモデラーが手がけたであろう2台。左がプラッツが扱うNUNUの1/24「三菱スタリオン グループA」、右がハセガワの1/24「STPタイサンGT-RグループA」。
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23/301971年のスパ・フランコルシャン24時間仕様の「メルセデス・ベンツ300SEL 6.8 AMG」は、モデリングマスターズというロシア製の1/24レジンキット。ウクライナ紛争の拡大前に滑り込みで入手したという。
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24/30タミヤの1/24「マクラーレン・セナ」をデカールでロスマンズ仕様に。後方に見えるのは同じ作者によるフジミ1/24「ポルシェ917K」とガレージヒロの1/24「フェラーリ512S」。映画『栄光のル・マン』でしのぎを削る2台である。
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25/30リアカウルの中身が見事につくり込まれたタミヤの1/24「日産R89C」。同じ作者がタミヤの「ポルシェ962C」、ハセガワの「マツダ767B」とグループCカーを3台並べていた。
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26/30オリジナルはアキュレイドだが、GTMモデルズから再販された1/24「シボレー・コルベット グランスポーツ」。実車は5台のみつくられたといわれるC2コルベットのレーシングカー。
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27/30モンモデルの1/24「フォードGT40 Mk2」をベースに、フジミの「フォードGT40」のパーツなども流用しているという。各部のつくり込み、特にエキパイの質感の表現などがすばらしい。
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28/30エブロ1/20「ブラバム・ホンダBT18」のホンダエンジンをトランスキット(別売)のコスワースSCAユニットに換装し、ヨッヘン・リント仕様としている。
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29/30会場風景。
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30/30スモールワールズTOKYOでは、3Dスキャナーにより自分のフィギュアをつくることができる。取材時に試しにつくってみたところ、これが実によくできている。筆者の風貌をご存じの方なら、爆笑するに違いないくらいそっくりな仕上がりである。スケールは1/80と1/35が選べるほか、写真の1/24も可能。価格は1/80で一体2000円から。なお、写真の「フォード・エスコートRSコスワース」のラリーカーは、たまたま手持ちの1/24モデルカーがこれしかなかったためで、特に意味はありません。