第34回:8月31日「トランスフィンランディア号」
2007.07.11 「ユーラシア電送日記」再録第34回:8月31日「トランスフィンランディア号」
『10年10万キロストーリー4』刊行記念!
やっと出発したフェリー「トランスフィンランディア号」は、サンクトペテルブルクを出てドイツ・リューベックに向かう。今回はこの船のご紹介。
ポーランドを避けるルートを選ぶ
当初のルートは、モスクワからベラルーシ、ポーランドを抜けてドイツに入るというもの。それを変更したのは、8月8日にスコボロディノで会ったヒゲのトラックドライバー、イーゴリに、サンクトペテルブルグ〜リューベック間のフェリーの存在を教わったからだった。
モスクワ経由の陸路よりも、走行距離は短いし、税関で支払う税金も少ない。悪名高いベラルーシとポーランドの税関を通らなくても済む。昨年このルートをバイクで通ったK氏から、ベラルーシの国境で理由もなく8時間も待たされたとも聞いた。
さらに、ヒゲのイーゴリは、「ポーランドはクルマ泥棒や強盗などが多いから、用がないのなら避けた方がいい」とも付け加えていた。その後に訪問したイルクーツク・トヨタのパンツェヴィッチ社長にも、「私はポーランドで4回クルマを盗まれそうになっている。ポーランドは通らない方がいい」とダメを押された。
そんなさまざまな理由から、ベラルーシ−ポーランド経由を敬遠していたので、フェリー乗船を前向きに考えていたのだ。クラスノヤルスクに滞在している間に、インターネットでフェリー会社を調べ、予約を行った。
フェリーが見つかった
バルティック・トランスポート・システムという会社のホームページを見ると、「フェリーは1995年に就航を開始。サンクトペテルブルグからフィンランドのヘルシンキを経由し、ロシア飛び地のカリニングラード、旧東ドイツのサスニッツと寄港し、最後にドイツのリューベックに着く」と出ている。
僕らの乗ったフェリーは、「トランスフィンランディア号」という。廊下やサロンに掲げてある船内見取り図には、船体側面に「Finncarries Poseidon」と記してあり、以前は別の名前であったことがわかる。
3食付きで、メニューと時間が決まっている。朝食7時30分から9時30分、昼食11時40分から12時30分、夕食17時40分から18時30分。でも、実際は(故)チャールズ・ブロンソン似のスチュワードが客室のドアを叩いて、それよりも早く迎えに来る。
毎日毎食バリエーションを付けて、飽きさせないようにしているのはさすがだ。味も悪くない。難点は、客が少ないのでバーが閉まっていること。ビールしか買えなくなってしまう。それも、食事後にすぐに自分の部屋に戻ってしまうブロンソンを捕まえなければ、買えないことだ。
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くつろげない
今日は朝から雨で、時々晴れても風が冷たく強いから、デッキでくつろぐことができない。いちおう、プールもデッキチェアもバーベキューテーブルも備わっているのだ。トラックドライバーだけが、午前と午後の1時間の間だけ自分の積荷の温度チェックに行くことが許されている。僕らは、カルディナに何かモノを取りに行くこともできない。
客室か食堂かサウナの3カ所にしか居場所がない。食堂にはテレビとビデオがあるのだが、置いてあるビデオソフトはすべてロシア語に吹き替えられたものばかり。そこではいつも、3人のロシア人ドライバーが、ロシアのVシネマのようなものを見ている。
ビデオもテレビもつまらず、食堂や部屋で本を読む。しかし船が揺れるからか、すぐに眠くなってしまう。今日も、午後10時には布団に潜り込んでしまった。(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

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