第97回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その9:圏央道は必要なのか?(矢貫隆)
2007.05.28
クルマで登山
第97回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機その9:圏央道は必要なのか?
頭上に巨大なジャンクション
「高尾山にトンネルを掘るなんてとんでもない暴挙だということは理解できます。で、これまで考えようともしなかったんですが、高尾山に登って、そして裏高尾の町を歩き、豆腐を買いました。寄せ豆腐、2丁です。峰尾さんにもお会いしました。高尾山の自然を守る市民の会の事務局長、橋本良仁さんから実態も教えてもらいました。そうしているうちに疑問が湧いてきたんです」
どんな?
「そもそも、圏央道って必要なんだろうかという素朴な疑問です」
さすがA君。鋭い疑問だ。
と、こうしてキミを誉めるのも、これが最後かと思うと淋しいぞ。
「立場によって圏央道建設に対する意見は対立すると思います。道路やインターチェンジができることによって町の活性化を期待する人たちは計画を推進したいでしょうしね。しかし、客観的な立場から考えてみると、圏央道ってどうなんだろうと思いますよね」
「あきる野市でも圏央道をめぐる裁判があって、2004年4月22日、東京地裁が判決をだしているんです。『首都高速中央環状線および外環道が建設されるのなら圏央道は必要ない』という判決でした。東京地裁は圏央道の公共性そのものに疑問符をつけたんです」
「高裁では判決は逆転され、今は最高裁に上告中ですが、僕は東京地裁のあの判決がきわめて客観性があると思っています」
最終回のせいかA君、妙に饒舌だな。
「妻が饒舌ですから」
「都心に入ってくる自動車を少なくしようとするのはわかるんです。しかし、圏央道はその役目を果たすでしょうか。いかにも中途半端な場所ですしね。そう考えると、高尾山にトンネルを掘ってでも建設しようとする根拠が理解できない」
摺差あたりの旧甲州街道を歩いてみると、頭上にいきなり巨大なジャンクションが姿を現す。不気味な光景だ。街道沿いには「高尾山死守」の看板が立ち、その横には、高尾山に向かって圏央道を建設するための仮の橋脚が建ち始めていた。
「奇跡の山」に本当にトンネルを掘る気だ。
(つづく)
(文=矢貫隆)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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