クライスラー・クロスファイアロードスター(5AT)【試乗記】
おんぶされたカッコつけ 2005.01.24 試乗記 クライスラー・クロスファイアロードスター(5AT) ……540万7500円 クライスラーとメルセデスの合作オープン2シーター「クロスファイアロードスター」。「メルセデスベンツSLK」が新世代となる中、先代「SLK」のコンポーネンツを使ったこのクルマの走りはどうなのか? webCG本諏訪裕幸が乗った。話しかけられるクルマ
コンビニに停まってクルマの中から電話をしていると、前に紳士が立ち止まってこっちを見ている。電話が終わると話しかけてきた。
「これはどこのメーカーのクルマ?」
「クライスラーです」
「よく走るのかい?」
「ドイツ車ですからね」
彼は混乱したかもしれない。クライスラー=アメリカなのに、「ドイツ車ですから」の返答。おかしく感じるかもしれないが、即座に出てきたのはその言葉だった。リポーターは、このクルマをドイツ車として認識しているからだ。
そう、「クライスラー・クロスファイアロードスター」は、先代「メルセデス・ベンツSLK」のコンポーネンツを使い、ボディデザインをあらためたクルマ。そのボディの架装すら、ドイツのカルマン社が担当しているという「ドイツ車」なのだ。
クローズドボディの「クロスファイア」は2003年12月に日本上陸。ルーフから末広がりに流れ落ちるようなファストバックのスタイルが特徴的だ。2004年9月に発売された「ロードスター」は、オープンボディにしたことでその華麗なリアビューを失いながらも、オーソドクスな幌を採用したことで、大きな開放感を手に入れた。最近多くなっている、フロントウィンドウの傾斜が激しいメタルトップのオープンでは、味わえないものだ。
3.2リッターV6エンジン、5段AT、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクのサスペンションまで、メルセデスからのいただきもの。ESPその他の運転安全補助機能もメルセデスに準じている。
プライスは540万7500円で、参考までに先代「SLK320」は598.5万円(税抜き)と、お安いのは良心的。
しなやかなコーナリング
218psの最高出力と31.6kgmの最大トルクを絞り出すエンジンは、街なか、山道を問わず快調にふけ上がる。3000rpmを越えたあたりから聞こえる、2本出しマフラーからの太い排気音は、なかなか勇ましい。
メルセデスのサスペンションによるところも多いのだろうが、前225/40R18、後255/35R19という扁平タイヤは、数字から受ける印象とは全く別で、乗り心地は良好。突き上げも少なく、さしずめ上級セダンに乗っているような感覚だ。ナビシートの乗員もさぞかし満足であろう。となれば、大径ホイールはカッコ良さに大きく貢献しているだけだ。タイヤ代がかさむのはいたしかたない。
「SLK」に比べフロントで5mm、リアで15mm広くされたトレッドに加え、装着された幅広タイヤのおかげで、コーナリングの踏ん張りは秀逸。キビキビという感じではなく、ゆったり、しなやかにロールしてコーナーを抜けていく。
残念ながらSLKでは設定された「ウィンドディフレクター」が無く、オープン時の風の巻き込みが多い。さらに、幌を閉めたときでも遮音性が低く、常に窓を開けているような外界の音が聞こえていたのは残念だ。走り心地が快適なだけに、居心地がいいとなお良かった。
内装を見てもらう上でも、ゆるやかな速度の街なかで、オープンにするのが好ましい。
収納に不満
インテリアの質感はさておき、グレー×バニラの2トーンにコーディネイトされたシートや、シルバーのアクセントなど、外から見られたときの印象は良さそうだ。薄いシートカラーは、夏のオープン時でも熱くなることは避けられるだろう。むろん、ダッシュボード部はダークで、フロントウィンドウへの映り込みは心配ない。インパネ部分は多くが「SLK」を同じなのだが、気づいたところで抵抗はない。
車内で不満なのは物入れの少なさ。やはり2人乗りなのだから、2人のカバンぐらいは入れられるスペースが欲しい。車内からトランクルームにアクセスできると便利なのだが。背もたれに多少の空間はあるが、思うように荷物が取れず、スマートじゃない。さりとて、助手席に荷物を散乱させておくと、交差点で車内を覗かれたときに恥ずかしい。
オープンカーに乗る人は、見られることが快感な人も少なくないはず。「クロスファイアロードスター」は、なにせ知らない人から話しかけられる、とにかくカッコがテーマのクルマである。見られても恥ずかしくないような心配りがあるとうれしいものだ。
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「アメ車」はウソじゃない
しかしこれだけ「メルセデス」をうまく使ったクルマは無いだろう。プロダクトにせよ、マーケティングにせよ、どちらにも効果が高い。クライスラーの“おんぶ”作戦は大成功だと思う。
「先代SLKをベースとして……」というスペックを気にするのは、われわれ業界関係者か、よっぽどのクルマ好きだ。単体として見ると古い印象はどこにもなく、2005年の今でも不足と感じるところはない。
もちろんそんなことを知らずに、デザインだけで買うのもいい。自動的にメルセデスの信頼性がついてくる。
「デザインはいいが、壊れそう」とイタ車に乗れない人も、「いいクルマなのはわかってるけど、ドイツ車はみんな乗っているし、保守的っぽく見えるからなぁ」なんて人にもオススメ。
「Z4」や「SLK」ほどお堅くなく、「アルファスパイダー」ほどはじけてない。「クロスファイア」のごっついデザインは大人っぽいし、クライスラーだから(いちおう)「アメ車だよ」って言えるのが気持ちいい。なにより、同じクルマに滅多に出くわさなくて、目立つことうけあいだ。
そんな、人とは違うのが好きなカッコつけの方は、「クラシックイエロー」のロードスターで、人に見られる快感を楽しもう。
そうそう、白いステアリングは汚れやすいので、女性を乗せる前には手入れするのをお忘れなく。
(文=webCG本諏訪/写真=岡村昌宏(O)、洞澤佐智子(H)/2005年1月)

本諏訪 裕幸
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