第80回:日本に残る「氷河の足跡」、木曽駒ヶ岳(その2:ランエボワゴンに乗って)(矢貫隆)
2006.07.14 クルマで登山第80回:日本に残る「氷河の足跡」、木曽駒ヶ岳その2:ランエボワゴンに乗って(矢貫隆)
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■「速いですよ、これ……」
ロープウェイが利用できるから無理をすれば木曽駒ヶ岳の日帰り登山は可能なのだけれど、でも、その「無理する」のが嫌だった。
季節は晩秋。夕日は釣瓶落としだし、頂上付近には雪もある。慌てて怖い思いをするのはもう御免なのである。
木曽駒ヶ岳登山は今度で3度目だから、要領は先刻承知だ。
中央自動車道で長野県駒ヶ根市の駒ヶ根インターまでは東京から2時間以上。高速道路を降りたら5分も走らないうちに「菅の台バスセンター」に到着する。ロープウェイの乗り場である「しらび平」への自家用車の乗り入れは禁止されているから、ここでバスに乗り換えるのだが、駐車場はでかい。
駒ヶ根までの足となってくれたのは「三菱ランサーエボリューションワゴン」。初めて乗ったが、快適だった。
「速いですよ、これ……」
A君は、「このクルマは速いから、あんまりスピードをだすな」と言いたいらしい。大丈夫、何しろ取材の帰りにスピード違反で覆面パトカーに捕まったばかりなんだから。
でも、「速い」と言われりゃ、ちょっとだけアクセルを踏み込んでみたくなる。
「グワ〜ンッ」
すっげ〜速い。高級感もあるし、こりゃ若いユーザーの間で人気がありそうだ。
この手のクルマは、過去の経験からしてアクセルを踏む足に力が入りっぱなしになるのだけれど、ランエボワゴンは少しばかり様子が違っていた。いや、少しばかりではない。大いに違っていた。
「何が?」
自制が利くのである。アクセルを踏み込む自分と、踏み込まない自分を使い分けられるのである。
「どういうことですか?」
大人だってことさ。
「誰が!?」
クルマも俺も。
(つづく)
(文=矢貫隆/2006年7月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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