フォード・フォーカスC-MAX(FF/4AT)【ブリーフテスト】
フォード・フォーカスC-MAX(FF/4AT) 2006.06.10 試乗記 ……280.0万円 総合評価……★★★ 欧州&北米カー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞した初代「フォーカス」の血を受け継ぐ、5人乗りの“ニューコンセプトワゴン”が「フォーカスC-MAX」。全高を高めたことで得た居住性はいかに? そして定評のあったドライバビリティは損なわれていないのかをチェックする。 |
幸せになれる人は誰なのか?
「フォーカス」比95mmプラスの1580mmという全高を得て、取り回しの良さを犠牲にせずに室内空間の拡充を図った「フォーカスC-MAX」。感心させられたのは、それでいて走りや乗り心地に、まったくネガティブな影響が及んでいないことだ。ワンモーションのミニバン風フォルムのせいでそうは見えないが、実はライバルたる「フォルクスワーゲン・ゴルフプラス」の1605mmより低い全高も効いているのだろう。しかし、それでいて室内の開放感は、それを明らかに上回っているのだから文句はない。
先代は高効率パッケージングが自慢だったフォーカスも、現行型は極端なまでのワイドボディ化で、その魅力を損なってしまった。ヨーロッパ製コンパクトカーらしくファッションではなく実質で選ぶなら、C-MAXのほうが満足度は高いだろう。
そうは言いつつも、ここ日本では輸入車はコンパクトクラスだろうが、見栄やファッションを重視して選ばれる存在なのも事実だ。そうなった時、C-MAXのミニバン風ワンモーションフォルムは、マイナスに作用する可能性を否定できない。いっそ、この格好なら3列シート7人乗りであってくれれば、明確に違った層にアピールできる気もするが、C-MAXはそもそも本国でもその設定がないのだ。
ハードウェアはよくできているし、いろいろ工夫もされている。しかしクルマのデキ云々の前に、誰が買うと幸せになれるのかハッキリ見えてこないところがアピールを欠く要因となっているのが、フォーカスC-MAXというクルマである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年5月に発売された「フォーカスC-MAX」は、快適性(Comfort)、信頼性(Confidence)、操作性(Control)の「C」が最高レベル(Maximum)であるという自信が車名の由来。2005年8月に日本上陸を果たした2代目「フォーカス」とプラットフォームを共用し、ゆとりのあるパッケージングを目指したクルマである。全長や全幅はフォーカスとほぼ同じとしながらも、全高を上げることで居住性を高め、さらに収納スペース等も充実させるなどされた。ロングホイールベース/ワイドトレッドであるベース車と同様、高い走行安定性とロードホールディング性能も持つと謳われる。
(グレード概要)
日本市場でのラインナップは、2リッターエンジン+4段ATの1グレードのみ。145psと18.9kgmを発生するデュラテック直4DOHCユニットは、「フォーカス2.0」と全く同じスペックとなる。サスペンションは同形式であるが、車重の違い等を考慮してセッティングを変更したという。一つのウリである後列シートは乗車定員を3名か2名に切り換えることができ、さらに取り外すことも可能。シートベルトは3点式が人数分備わる。運転席6ウェイパワーシート、6連奏CDチェンジャー、16インチタイヤ&ホイールなどが標準装備され、オプションは用意されない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ダッシュボードのクオリティ感はまずまずで、高級だとは言わないが、しっかり作り込まれた感じは伝わる。伝わるのだが、2DINをフルに占有するわりにCDとラジオだけのオーディオや事務的なエアコンの操作パネルは、やはりもうちょっと何とかならないかと思う。もう少しおもてなし感がないと、今のユーザーの心は掴めないのでは? インストゥルメントパネルに置かれたATセレクターの操作性等々、運転に関わる部分に関してはよく練り込まれていて満足度は高い。アレルギーフリーのインテリア素材、花粉フィルターの装備といった、本当の意味での快適性への配慮も嬉しい。
(前席)……★★★★
高めの着座位置にセットされた前席は、スラントしたダッシュボードの圧迫感のないデザインと相まって、とても開放感が高い。ショルダーラインが低めなこともあって周囲の視界も良く、取り回し性もなかなかのものだ。運転席に電動調整機構がおごられたシート自体も十分なサイズと適度なコシのあるクッションのおかげで快適性は上々。助手席にも差別することなく手動式ではあるもののハイト調整を付けているのは評価したいポイントだ。一方で、センターアームレストが運転席にしか付かないのは疑問。ドライバーはステアリングホイールを握っているべきで、こんなものはいらない。助手席にこそ付けるべきだ。
(後席)……★★★★
シートは平板だが、座面の適度な高さと相まって、腰を横にずらすだけで室内に滑り込める良好な乗降性に貢献してはいる。周囲の見晴らしも良く、さらに足元に十分な余裕があるのもいい。中央席の座面を跳ね上げると、左右席をそれぞれ中央側に60mm寄せ、さらに後方に100mm下げることで、本来3人分の空間を2人でゆったり使うことができる。ただ確かにゆとりは生まれるが、跳ね上げた座面の裏側の樹脂部分が肘に当たって気になるし、シート裏側のフロア部分が丸見えになるのも、妙に落ち着かない気分にさせる。あとちょっとの気遣いが足りないばかりに、非常に居心地がいいとまでは言えないのである。
(荷室)……★★★
低い床面は容量を稼ぐのに貢献しているが、使い勝手を考えると、洗車道具等々を見えないところにしまっておける二重フロアのほうがいいのではないだろうか。2列目シートは3分割可倒式で、自在にアレンジすることが可能。背もたれを前倒しするだけでなく、座面ごと引き起こして、ほぼフラットな空間を生み出すこともできる。さらには後席を全部外すこともできるのだが、日本ではあまりニーズはないかもしれない。このシートアレンジ自体はさほど力を要しないのだが、引き起こしたシートを固定するため前席にひっかけるヒモの戻りバネがキツく、引っ張り出すのがかなりシブい。ツメの長い人は気をつけたほうがいいだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッターのエンジンや4段のATはフォーカスと共通。100kg近く増えている車重に対してギア比もまったく変更されていないが、走りに鈍重な印象はない。実用域でとても活発なエンジンのおかげである。登坂時などにはエンジンが唸りを上げることもあるが、それは4段しかないATのせい。性能的には必要十分と言えるのだが、走りのクオリティという意味では、あと1段、欲を言えば2段のギアが欲しい。せっかく引いてシフトアップ、押してダウンという理にかなった配置のシーケンシャルゲートがあるのに、この少ないギアでは、そもそも出番はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
もっとも印象的なのは乗り心地の良さ。重厚な中に適度なしなやかさがあって、あらゆる入力を懐深く受け止め、いなしてくれる。しかも、その快適性が前席だけでなく後席でも変わらないのが嬉しい。ここはライバルたちに対する大きなアドバンテージといえる。この乗り味は、当然ではあるがフォーカスと似ている。それはフットワークにしても同様。ステアリングの効きは、まさに正確無比。重心の高さをことさらに意識させられることはなく、コーナーの連続も心地よく駆け抜けることができる。ボディのガッチリとした剛性感には、頼り甲斐あるいは安心感といったものを覚えた。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2006年5月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2071km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(いずれも ミシュラン Pilot PRIMACY)
オプション装備:--
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:139.5km
使用燃料:22.0リッター
参考燃費:6.34km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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