トヨタ・ラッシュG(4WD/5MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ラッシュG(4WD/5MT) 2006.03.30 試乗記 ……245万1750円 総合評価……★★★ 高めのアイポイントに哀川翔も叫ぶ街乗りヨンク「トヨタ・ラッシュ」。エンジン縦置き、機械式4WDと中身は正統派ライトクロカン。でも乗ってみると意外と……。
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ファニーな顔の本格派
文字どおりのニューモデル・ラッシュ、「トヨタ・ラッシュ」である。名前を覚える暇もあらばこそ、次々現れる「着せ替え人形」の1台かと思いきや、よくよく調べてみると相当な“変わりダネ”であることが判明した。
ファニーな顔つきに似合わず、中身は正統派クロカン4WDそのもの。今時の街乗り4WDなら、きっとセダン系のパワーパックを移植したお手軽4WDに違いないという読みは見事に外れ、新開発の1.5リッター「3SZ-VE」型エンジンはなんと縦置きだ。シリーズの中には廉価版の2WDも用意されるが、その場合はもちろん後輪駆動。4WDシステムもビスカスカップリングや多板クラッチに頼ることなく、前後アクスルとセンターに計3個のデフを持つ純機械式で、これにビルトインフレーム付きのモノコックボディが組み合わされる。4メートルを切る全長は、身内の「RAV4」(5ドア)をはじめライバルの「ホンダCR-V」や「スズキ・エスクード」などが大型化した今となっては貴重なコンパクトさといえ、そのため、メカが詰まっている割には車重も軽い。
ただし、乗り手がそれに気づくかどうかは別問題。もっぱらアイポイントの高さを売りものにするこの街乗り4WDは、むしろ軟派なセダン顔負けのソフトでライトな雰囲気に仕上がっているからである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年1月デビュー、トヨタとダイハツが共同開発した小型ライトクロカン。1997年に登場した「ダイハツ・テリオス」、1999年からはOEM「トヨタ・キャミ」としてリリースされたモデルの後継で、主たる開発と生産はダイハツが担当。「トヨタ・ラッシュ」「ダイハツ・ビーゴ」と中身同じ・バッジ違いで販売される。
「ビルトインラダーフレーム式モノコックボディ」なるモノコック構造のボディは、全長4メートル弱、ホイールベースは広めの2580mmで、全体的に先代テリオス/キャミからひとまわり拡大。高いアイポイントとワイドな視界がセリングポイントとなる。
エンジンは「トヨタbB」(やはりダイハツ生産車)にも載る「3SZ-VE型」の1.5リッター直4DOHC(109ps、14.4kgm)のみ。4WDシステムは生活ヨンク以上のレベルで、メカニカルセンターデフロックの付いたフルタイム4WDは、発進加速性能や高速安定性に加え悪路走破性も優れ、ぬかるみなどにはまった場合はインパネスイッチで前後輪を直結状態とし抜け出しやすくできるといった芸当も持つ。
(グレード概要)
ラッシュのラインナップはベーシックな「X」と上級「G」の2グレード構成。それぞれに4WDと2WD、4ATと5MTが用意されるが、テスト車のようにマニュアルを選ぶとなると4WDだけに限られる。機能については、両グレードとも4WDでのみVSC(車両安定制御)&TRC(トラクション・コントロール)やリアLSD(リミテッド・スリップ・デフ)がオプションで付けられる。
テスト車のGは、Xに対し、16インチアルミホイール、本革巻きステアリングホイール&シフトノブ、オートエアコン、前席アームレスト(AT車のみ)などの装備が追加された内容。前席SRSエアバッグはX、Gともに標準装備だが、前席SRSサイドエアバッグ&前後席SRSカーテンシールドエアバッグはいずれでもオプション設定(9万2400円)となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
現代の日本車を見慣れた目には全体に慎ましやかだが、そのこと自体は別にして、やや明快さに欠けるのが惜しい。その典型が、ステアリングのリムとスポークを通してその奥にゴチャゴチャと並んだアナログ式の3連メーターだ。径が小さくて一瞥性に乏しく、判読しづらいのである。スイッチ類の配列にも多少の疑問なしとしない。テストの場合はたまたま日本車で稀なシートヒーターとリアフォグランプが装着されており、それぞれに重宝はしたが(季節外れの寒さと霧の箱根山中で)、いかにも後からついでに付けたという印象が拭えず、かたやダッシュの庇で、かたやステアリングパッドに隠れて咄嗟に在処が分からず、特に後者は消し忘れによる後続車への迷惑を考えると改善を要する。せめてメーターナセル内にインジケーターを設けるべきだ。パーキングブレーキはATが足踏み式なのに対してMTはハンドブレーキだが、こちらの方が自然だし、左足の置き場が確保されるというメリットもある。
(前席)……★★★
「ベストコンパクトSUV」を目指したという言葉どおり、取り回しは楽で、街乗りにはピッタリだ。アイポイントが高いからボディの見切りが良く、狭い路地でも躊躇せずに入っていける。視界が良いということはそれだけで気分が晴れやかになるのはもちろんのこと、ドライバーの立場からは先が見通せて安全でもある。で、そんな小柄さと見晴らしの良さを両立した室内は結果として必要充分な、あるいはそれ以上のスペースを有している。特に、ヘッドクリアランスの余裕が大きい。フロアとヒップポイントは高さが適当で、サイドシルの張り出しが小さいこともあって、乗り降りは容易だ。ただし、ドライビングポジションとシートそのものの出来はあまり誉められたものではない。ステアリングコラムにチルトはあるものの、全体に下付きで調整幅も狭く、リクラインのノッチが粗いこともあって、ピタリと決まった実感が薄いのだ。コーナーではもう少し上体のサポートが欲しいところである。
(後席)……★★★★
このクルマで一番の美点が外観からは想像もつかない後席の広さだろう。全長に比して長めのホイールベースが足もとのたっぷりした空間を生み出し、天井は圧倒的に高く(頭の上に拳がまるまるふたつ分収まる)、シートそのものもクラスの水準を超える堂々たるサイズだ。フロアは複雑なメカを抱える4WDとは思えないスッキリ感で、中央のプロペラシャフトを被うトンネルも小振り。それ以外は全くのフラットで気持ちが良い。
(荷室)……★★★
独立したトランクを持たない不利を考慮すれば、5名乗車の状態でVDA方式によるラゲッジスペース測定値380リッターはまずまずの値。いうまでもなく、リアシートは6:4分割可倒式(前方へのダブルフォールディング・タイプ/リクライニング付き)だから、用途に応じてさらに拡大の余地が残されている。最近のトヨタ車の例に洩れず、テールゲート付き(右ヒンジの横開き)にもかかわらず標準状態ではトノカバーの備えがなく(1万8900円のオプション)、通常積み荷の秘匿性については一抹の不安なしとしないものだが、幸いこの場合はウェストラインが高いうえにリアサイドウィンドウ以降がスモークガラス(これ自体、多少の論議はあるが)になっており、外からあからさまに見えないのが救いだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
マニュアルということで過大な期待を抱く向きもあろうが、実力は排気量相応である。パワーもさることながら、新しい「3SZ-VE」型はちょっとしたクセがあり、3000rpm台後半まではトルクが細めなため、発進直後はギアチェンジのタイミングやクラッチの繋ぎ方にやや気を遣わされるというのが正直なところだ。ギアボックスそのものは確実で、シンクロは強力、素早いチェンジも充分に受け付けるのだが、シフトアップして回転数が落ちた途端、コツンと軽いショックに見舞われたり、その後の上昇過程で若干の段付きが見られたりするからだ。ちなみに、センターデフをロックする、つまり直結にするとそれらはほぼ解消するが、あいにく舗装路では駆動系保護のために使わないこととされている。その一方で、5000rpm前後はなかなか元気だ。ワインディングロードの登りでも予想したよりは活発に走るし、街なかではうるさいと感じたエンジン音も粒の揃ったものに変化する。メーター読みの100km/hが5速で3200rpm、4速で3800rpmとローギアードなのはやむを得ないところだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
意外なことに乗り心地はかなりのソフトさだ。NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の遮断が良く、荒さやショックがほとんど伝わらない反面、ホイールベースが短いクルマのようにピッチングが時として顔を現す。リアサスペンションは5リンク/コイルのリジッドだが、そのせいか、ボディと足まわりの動きに多少のズレを感じる時がある。その割に、実は山道を攻めてもこれといった破綻を見せないのだが、その理由はやはりクルマ本来の軽さと前後オーバーハングの短さ、そして駆動力/車重の配分が優れているからだろう。箱根は霧と雨だったが、コーナー途中の水溜まりに一瞬足もとをすくわれたとしてもすぐにグリップを回復、接地性とトラクションは信頼に足りた。ブレーキも確実だ。ステアリングは常時軽い反面、絶対的にスローすぎる。ロック・トゥ・ロック3.6回転もするオーバーオールレシオは車庫入れや路地の切り返しで大忙しの体を余儀なくされ、少なくとも街乗り4WDを名乗る以上はもう少し汗をかかなくて済むようにすべきだ。フィールは中心付近がデッドだが、許容できる範囲である。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:別冊CG編集室道田宣和
テスト日:2006年3月15〜17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2351km
タイヤ:(前)215/65R16 98S(後)同じ(いずれも、ブリヂストン DUELER H/T 687)
オプション装備:前席SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ(9万2400円)/G-BOOK ALPHA対応HDDナビゲーションシステム(26万2500円/寒冷地仕様(1万7850円)/VSC&TRC(9万9750円)/ローダウンサスペンション+プロジェクター式ディスチャージヘッドランプ(4万7250円)/カラーサイドマッドガード(2万1000円)/ルーフレール(2万1000円)/リアフォグランプ+シートヒーター(2万1000円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(1):高速道路(8):山岳路(1)
テスト距離:615.7km
使用燃料:66.1リッター
参考燃費:9.3km/リッター

道田 宣和
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